リモートアクセスの新手法として、今年は「SSL-VPN」が飛躍しそうだ。
端末側ではブラウザーを使って通信するため、特別なソフトや設定が不要。
管理コストの削減が売り物だ。機能アップが進む一方で、
大手メーカーも企業買収で参入し、今後は製品形態の多様化が進む。


 外出先や自宅から、一般のWebブラウザーを使って社内ネットワークに安全に接続できるSSL-VPN(セキュア・ソケット・レイヤーによる仮想私設網)装置が売れ始めている。ベンダー各社は「2003年にユーザーの認知がかなり進んだ。今年は実導入が相次ぐ」と拡販に向けて鼻息が荒い。


 SSL-VPNはインターネットVPNの一種。現在、主流のインターネットVPNは、IPパケットをそのままカプセル化するIPsec(IPセキュリティ)型だ。しかしリモートアクセスに使う場合は端末に専用ソフトを導入し、アドレス情報などを詳細に設定する必要がある。その端末管理の手間がシステム担当者の負担になっていた。


 Webブラウザーを使うSSL-VPNならばこうした手間は一切要らない。「全体の運用コストはIPsec型の2分の1から3分の1。この利点が浸透すれば、リモートアクセスの大半はSSL-VPNに置き換わる」(ネットスクリーン・テクノロジーズ・ジャパンの吉田次男Secure Access Product本部長)と、多くのベンダーが市場拡大に自信を見せる。

IPsec型にない市場を開拓


 SSL-VPN装置の国内発売は2003年に相次ぎ、その市場規模は10億円程度だった。製品がそろった2004年は、ベンダーの計画から推計すると国内市場が50億~100億円近くに膨らむ見通しだ。一方、IPsec型VPN装置の国内市場は2003年に230億円規模だった。


 IPsec型VPNは、拠点間接続に使うならユーザー1社で数十台など、拠点の数だけ製品が売れる。これに対してSSL-VPNは、アクセスを受け付ける側にしか装置が要らないため「1社1セット」が原則。しかし、新たな需要を開拓できる点でその潜在市場は意外に大きいかもしれない。


 というのも、SSL-VPNは拠点間接続でも普及し始めているからだ。特に、システム担当者が直接管理するのが難しい取引先や関連会社などとのエクストラネットが有望だ。実際に三洋電機や国内携帯電話会社が、取引先や販売代理店との通信に採用しており、ほかにも事例が続々と出ている。

(玄 忠雄)