売り上げの減少に歯止めがかからず、百貨店の経営環境は年々、厳しく なっている。最大の関心事はコスト削減で、IT投資でもメインフレームで 構築した基幹システムのオープン化や情報システムの共同利用が 人気の的になっている。その一方で、IC対応のPOS導入など 「企業力」の強化につながる情報システムに対する需要も根強い。

 25カ月連続マイナス成長―。日本百貨店協会によると、東京地区の百貨店の2003年12月の売上高は2262億円。前年同月に比べて4.7 %減り、下落傾向に歯止めがかからない。全国の売上高を見ても、2003年11月は7076億円と前年同月に比べて4.2%減少した。2002年1月以降、前年同月比がプラスになったのは、2002年3月と2003年10月の2回にすぎなかった。

 こうした逆風下で、百貨店にとって情報システムはリストラの対象になっている。「現在、IT導入は凍結状態。今後のIT投資についても不明だ」と苦しい内情を明かす百貨店もあり、新たに情報システムに多額の資金を注ぎ込むよりも、情報システムのコスト削減が最大の関心事だ。浮いた費用を営業強化など前向きな投資に回すことによって、他社との違いを出していくことが百貨店にとって大きな課題になりつつある。

メインフレーム離れが進行

 これまで百貨店業界では各社が独自にメインフレームで構築した基幹システムを長年にわたって利用してきたが、ここにきてメインフレーム上の基幹システムを刷新する動きがあわただしくなっている。メンテナンス費用の負担に加え、情報システム部門に所属するメインフレームの技術者の多くが定年退職するという「2007年問題」が影を落とす。

 昨年、メインフレーム上の会計システムなどをオープンシステムに移行した東急百貨店は、その好例だ。東急百貨店情報システム部の吉田彰宏システム企画統括マネジャーは「1社でシステムを構築・運用するのは大変な労力と費用がかかる。メインフレーム上で動いているシステムのうち、外部の企業に任せられるものは、極力、外部に出す方針」と話す。

 東急百貨店は、現在、情報システム部の人員削減とフロア縮小などIT部門のスリム化を急ピッチで進めている。メインフレームからオープンシステムに移行して、サーバーなどハードのメンテナンスは外部のデータセンターにアウトソーシングしたことで、情報システム部はソフトの開発と運用に専念できるようになった。「上流のIT戦略の策定などに力を注ぐことができ、情報システム部門の役割も変わってきた。独自のシステムを構築して運用する従来のモデルは続かない」と吉田統括マネジャーは話す。

 百貨店の基幹システムが独自開発した仕様を採用してきたのは「日本独自の商習慣があるため、海外製のパッケージを採用するのは困難だった」(吉田統括マネジャー)からだ。しかし、今や独自システムにこだわる余裕はない。東急百貨店の吉田統括マネジャーは「今後3~4年のうちに、できれば百貨店向けのパッケージ製品のようなものが欲しい」とソリューションプロバイダに期待を寄せる。

(中井 奨)