2004年1月29日、グリッド対応データベースOracle Database 10g日本語版の出荷が始まる。日本オラクルは動的負荷分散などの 次世代環境を声高に叫ぶが、本命は運用の自動化による 中堅・中小企業市場でのSQL Server崩しにある。

 Oracle 10gが持つ“グリッド”の機能は、これまでも提供されてきたクラスター技術Oracle RAC(リアル・アプリケーション・クラスター)を強化したものだ。静的だったRACの負荷分散を動的に割り当てられるようにしたほか、ストレージの領域配置を自動化するASM(自動ストレージマネジメント)といった機能を追加した。

 こうした動的負荷分散の出来映えに、有力パートナー企業は期待を寄せている。9月にOracle 10gの検証施設NSSOL Oracle 10gソリューションセンターを開設した新日鉄ソリューションズ(NSSOL)の松島晴彦基盤ソリューション事業部部長は「RACの新機能によりスケールアウトの自由度が増すメリットは大きい。これまで、例えば24プロセッサのサーバーを使ったRACシステムを拡張するには、同じく24プロセッサ機が必要だった。Oracle 10gは、この制限をなくすので低コストなシステム拡張を提案できる」と話す。

自動化の機能を中小に切り売り

 だが、日本オラクルが強調する企業内グリッドコンピューティングの市場が本格的に立ち上がるには「サーバー間を高速に結ぶ技術が不可欠で、しばらく時間が掛かる」(NSSOLの松島部長)との見方が強い。むしろOracle 10gの中核市場として早期に立ち上がるのは“グリッド”とは無縁の中堅・中小企業の市場だ。

 事実、日本オラクルも「これまでOracleは、中小規模システムでは使いづらいとの声が強かった。Oracle 10gは、運用管理コストを従来の2分の1にできるよう使い勝手を追求した。ここを中小規模システムユーザーに訴求する」(杉崎正之マーケティング本部システム製品マーケティンググループシニアマネジャー)計画だ。

 中小規模システムへの具体的な訴求点は、インストールや各種設定から、修正モジュールの適用や性能向上のためのチューニング、バックアップやリカバリーまでの各種運用機能を自動化したことだ。

 加えて、これまでUNIX版を移植してきたWindows版をWindows専用に開発し直し、性能面でもSQL Server(米マイクロソフト製)対抗の位置付けを鮮明にした。「WindowsだからSQL Serverで十分」というユーザー層を切り崩す。杉崎シニアマネジャーは「Windows環境でのシェアを、UNIXやLinuxと同等の60%以上に高めたい」と意気込む。

(森重 和春)