大手金融機関などからIP電話の受注に成功している川内谷は「顧客のニーズを的確に把握でき、プレゼンテーションもうまい」と幹部からも一目置かれている。意外なことに本人は「営業の仕事が面白いと思ったのは最近のこと」と話す。

 転機となったのは、2年ほど前のこと。ある金融機関がネットワークインフラの統合や、専用線からIP-VPN(仮想私設網)への移行を検討していた。川内谷は、コンペの約半年前から情報収集に奔走して念入りに準備を進めた。

 コンペに参加したのは10数社。万全の準備で臨んだ川内谷は「必ず受注できる」と信じて疑わなかった。ところが、第1次選抜に通過した3社の中にネットマークスの社名はなかった。

 「第1次選抜から漏れたのは、提案内容の中にお客様に伝えきれていない部分があったからだ。何が何でもこの商談をまとめたい」と考えた川内谷は、提案内容を再度説明するため、毎朝、金融機関の最寄り駅で出勤してくる担当者を待ち構えた。しかし、担当者とは会えず、仕方なく自分の名刺を金融機関の受付に置く日が続いた。そんなある日、川内谷のところにその担当者から電話がかかってきた。「もう一度、説明してくれないか」。

 選考作業は、第1次選抜に通過した3社のうち1社にほぼ決まり、佳境を迎えていた。にもかかわらず、川内谷の熱意にほだされた担当者がラストチャンスを与えてくれた。川内谷は、将来のIP電話化も視野に入れた提案であることを担当者に強く訴えた。その甲斐があって、見事な敗者復活を果たした。

 川内谷は、最後まであきらめないことと、顧客との信頼関係の構築の重要性を改めて学んだ。以来、一度でも接点を持った見込み客に対し、次のビジネスにつなげるように心掛ける。現在、先の金融機関とはIP電話を使ったアプリケーションの連携について話を進めている。

川内谷 大輔(かわちや だいすけ)氏

1973年3月、東京都生まれ。1997年3月、神奈川大学経営学部国際経営学科卒業後、同年4月に兼松エレクトロニクスに入社。流通・サービス業界向けネットワークシステムの営業を経て、1999年4月にネットマークスに入社。金融業界向けIP電話ソリューションの営業を担当し、ネットワーク構築やIP電話ソリューションの受注に成功している。趣味は海釣りで、難易度の高いカワハギ釣りに挑戦。釣った魚を自分で料理して食べるのが楽しみという。



文中敬称略=中井