株式を公開しているシステム・プロバイダの2003年3月期中間決算が出そろった。前年同期に比べて売上高0.2%減,営業利益9.0%減,経常利益7.7%減となり,売上高,利益ともにマイナス成長を記録した。2001年度から成長が鈍化し始めたが,状況は一層厳しさを増しているようだ。上場企業の倒産件数が過去最多を記録するなど,深刻な不況の中で,ユーザー企業のIT投資意欲は冷え込むばかり。システム・プロバイダの競争は激化し,勝ち組と負け組みの構図もよりはっきりと表れてきた。2003年3月期は,売上高が前年度比2.1%増,経常利益が同12.3%増の見通しと強気だ。

図1●情報サービス業の売上高と前年同月比の推移
*2002年1月分より一部調査対象の追加などで以前の数値と不連続が生じている。前年度月比は比較可能なように調整した
 「中期経営計画を立てて,自信を持ってそれを目標に進めてきた。だが,中間期の実績が出て通期を見た時に,かなり厳しい状況に置かれていることは否めない」。電通国際情報サービス(ISID)の瀧浪壽太郎社長は,決算発表の席上で,こう語った。ISIDだけではない。IT(情報技術)サービス業界全体にも,不況という寒波が押し寄せている。

 株式を上場または店頭公開しているシステム・プロバイダ96社の2003年3月期中間決算報告(9月末締めのみ,11月22日発表分まで)をまとめた(表1[拡大表示])。このうち,前年度の実績と通期の見通しを公表していない企業を除いた88社の上半期の業績は,売上高が前年同期比0.2%減,営業利益が同9%減,経常利益が同7.7%減と,売上高,営業利益,経常利益のいずれもマイナス成長となった。

 売上高,営業利益で増収増益を達成できたシステム・プロバイダは20社と,全体の約2割にすぎないからだ。その一方で,減収減益のシステム・プロバイダは32社,営業利益の段階で赤字は23社もある。

 経済産業省の特定サービス産業動態統計によると,情報サービス産業の売上高は今年7月に初めてマイナス成長に転じ,9月にもマイナス成長を記録した(図1[拡大表示])。また,中間決算発表を前に,業績を下方修正するシステム・プロバイダも相次いだ。

 業績低迷のシステム・プロバイダは,企業の投資意欲の減退をまず理由に挙げる。案件の先送りや開発規模の縮小,値下げの要求が発生する。投資意欲が低いために,案件数自体も減少すれば,競争は激しくなる。

表1●システム・プロバイダ96社の2002年3月期中間決算。
11月22日までの発表分。前年度実績や通期見通しのない会社は平均値の計算から除外した
青文字社名:連結決算の企業,黒文字社名:単独決算のみの企業(単位:億円,売上高順)
 
表1(続き)●システム・プロバイダ96社の2002年3月期中間決算。
11月22日までの発表分。前年度実績や通期見通しのない会社は平均値の計算から除外した
青文字社名:連結決算の企業,黒文字社名:単独決算のみの企業(単位:億円,売上高順)
(中井 奨)