2001年度から成長が鈍化し始めたPCサーバー市場。今年前半もマイナス成長だが,メーカー各社は通期で10%成長を目指す考え。売上金額の少ないエントリ・サーバーよりも,上位機の強力な拡販策を打ち出し,売り上げを伸ばす作戦だ。

図1●2001年の国内PCサーバー市場におけるベンダー別シェアと市場成長率
 高成長を続けてきたPCサーバー市場が,今年に入って一気に低迷期を迎えた。ガートナー データクエストによると,今年前半に,マイナス成長にまで落ち込んだ(図1[拡大表示])。2002年4~6月期は前年同期比で台数ベースで17.2%減,金額では25.0%減。通年の出荷台数も,前年比11.4%減を予想している。PCサーバー市場は2000年10~12月期をピークに,その成長率は鈍化を続けてきたが,遂にその成長神話は終えんを迎えたわけだ。

 マイナス成長の理由についてメーカー各社は「長引く不景気によって,ユーザーのIT(情報技術)投資の引き締めが一段と強くなっている」と口をそろえる。それでも各社は,今年後半の巻き返しを図り,何とか横ばいから10 %程度の成長を確保しようと戦略を練っている([拡大表示])。

デルが3位に踊り出る

 NECは2001年度に前年度比16.4%増の8万5000台を販売してシェアトップを堅持したが,今年に入ってからはやはり販売は伸び悩んでいる。「2001年まで好調だった官公庁向け需要が収束して,伸びなくなった。もちろんIT投資の必要性がなくなったわけではなく,e-Japan関連やブロードバンドの活用など回復要因はある。今年の下半期から本格的な回復を目指す」と,NECの鳥井聡クライアント・サーバ販売推進本部グループマネージャーは話す。2002年度通期で前年度比10%増を狙う。

表●主なPCサーバーの国内における出荷状況

 2001年度に前年度比30%超の成長で6万5000台と市場の伸びを上回る販売を達成した富士通も,その成長率をけん引した文教分野や,3000台強を販売した住民基本台帳ネットワーク向けの特需が一段落したことで,2002年4~6月期は,前年同期比で1割強の販売減となった。2002年度通期では前年度並みの販売を見込んでいる。

 各社が軒並み不調な中で,比較的好調なのがデルコンピュータだ。2001年度の出荷台数は5万5000台と前年度比60%超の成長率を達成し,台数ベースでシェア3位に踊り出た。企業向けシステム構築サービスのデル・テクノロジー・コンサルティング(DTC)が1年間で約200件を受注して好調だったほか,2001年2月から始めた官公庁や病院などの公共分野向けが堅調に伸びており,販売を下支えした。今年は他社と同様,成長率を下げているものの,1~3月期,4~6月期とも前年同期比10%増を死守している。

 市場低迷という逆風下で,日本ヒューレット・パッカード(HP)とコンパックコンピュータの合併の成否は,PCサーバー市場の勢力地図にも大きく影響する。今年11月に誕生する新生HPの製品ラインアップは,最下位機種を除いてコンパックProLiantが引き継ぐ。両社はすでに8月から営業活動を統合しており,既存の販売パートナはHPとコンパックの両方の製品を扱い始めている。

 2002年度の2社の販売台数を足せば,販売台数のシェアは2位になる計算だが,合併後にそれぞれが持っていたシェアをそのまま維持できるかは不透明だ。「両社の強みを生かした新しいチャネル戦略を構築している」(コンパックの橘一徳エンタープライズビジネス統轄本部IAサーバ製品本部ビジネス企画部マネージャ)としているが,短期的な混乱は避けられないだろう。

(森重 和春)