文書管理ソフト市場が再び動き出した。複写機やFAXを統合したディジタル複合機の普及を契機に,中堅・中小企業が文書管理に取り組みやすくなってきたからだ。e-Japan計画による文書の電子化ニーズも浮上した。

図1●拡大し始めた文書管理システム市場

 文書管理ソフト市場を中堅・中小企業市場と電子自治体関連需要がけん引し始めた。両マーケットを中心に主要ベンダー各社は2002年度,前年度の10~20%増の売り上げ拡大を見込んでいる。

 これまで,文書管理ソフトを積極的に導入していたのは主に,数十万枚もの社内文書や契約書などを管理しなければならない銀行や保険会社と,大量の設計図面や技術文書を持つ製造業といった大企業だった(図1[拡大表示])。品質管理のISO9000や環境管理の14000といった国際標準を取得するための文書管理ニーズも根強いが,それでも中堅・中小企業市場の突破口には至らなかった。「文書管理しなければ,明日から仕事がなくなる,といった差し迫った問題ではない」との見方が強かったからだ。

 それがここに来て,文書管理ソフトを導入する中堅・中小企業が増え始めている。コピー機がディジタル複合機に世代交代したためだ。ディジタル複合機は,コピーとFAX,プリンタ,スキャナーの4機能を1台にまとめた製品。コピーをとる要領で文書を電子化したり,電子文書を検索・出力したりが簡単なってきた。中堅・中小企業向け文書管理ソフトを持つベンダーほど,強気な販売目標を立てている。

複写機メーカーが需要を創出

 ディジタル複合機で中堅・中小企業市場を創出したのが,リコーや富士ゼロックス,キヤノンといった事務機メーカー。ディジタル複合機を売ることが文書管理ソフトの見込み客を得る,という構図で2001年度に,リコーは2000サーバー,富士ゼロックスは583サーバー,キヤノン販売は70サーバー(本誌推定)をそれぞれ販売した。矢野経済研究所の調査によれば,リコーと富士ゼロックスの両社は既に,販売台数の50%以上をディジタル複合機が占める。キヤノンのそれは36%とやや出遅れる。

 ディジタル複合機と,文書管理ソフトRidoc Document Serverシリーズのユーザーがほぼ重なるリコーは2002年度,営業方針を切り替えた。ディジタル複合機を選ぶ段階で,文書管理ソフトも一緒に選んでもらう。具体的には,ディジタル複合機の製品パンフレットを,単体機能としての説明中心から文書管理ソフトと連動させた業務改善提案中心に改めた。

 並行して,全国の営業担当者を後方支援するサポート専門部隊を設置。建設業や製造業,流通・サービス業などの業界別業務フローや問題点などを営業担当者に提供することで「ユーザーが興味を引くような提案書を作成するのが狙い」(画像システムセンター画像I/O推進室の宮本好雄室長)だ。こうした取り組みにより2002年度は,前年度比10%増の2200サーバーの販売を目標にする。

 一方,キヤノン販売は文書管理の枠にとどまらず,ERP(統合基幹業務システム)やCRM(カスタマ・リレーションシップ管理)との連携機能を強調する戦略に出る。最新のLiveLinkバージョン9(加オープンテキスト製)がXML(拡張マークアップ言語)によるデータ交換機能や,ロータス ノーツ文書を管理できる機能を持ったためだ。

 これにより,2001年度に22%増だった売り上げを2002年度は15%増を維持する。オープンシステム商品企画第二課の大北忠課長代理は「そのため,約8割を占める直販だけに頼らず,継続的に販売してくれるパートナを開発し間接販売比率を伸ばす」とする。

(渡辺 一正)