沖電気工業は,企業の内線電話網向けに,携帯型の無線IP電話機「WSP-500」を発売した。IEEE802.11b方式の無線LAN上で,VoIP(voice over IP)による通話が可能。10月に出荷を始め,1年間で1万台の販売を見込む。価格はオープンで,実売3万円台半ばの見通しである。

 WSP-500は,同時に発売した同社のIPテレフォニ・サーバーの新版「IP CONVERGENCE Server SS9100 リリース2.0」(以下,SS9100 R2.0)と組み合わせて使う。呼制御プロトコルは,インターネット標準として採用ベンダーが拡大しているSIP(session initiation protocol)に対応している。1台のSS9100 R2.0で,数千台のWSP-500を収容できる。

 WSP-500の形状は折りたたみ型で,重量は98g。外観は通常の携帯電話とほぼ同じである。音声圧縮方式は,64kビット/秒のG.711と8kビット/秒のG.729に対応している。連続通話時間は4時間以上と,他社製品並み。一方,待ち受け時間は100時間以上で,無線IP電話機としてはトップクラスである。NTTドコモがまもなく発売するFOMAとのデュアル端末「N900iL」(NEC製)の230時間には及ばないが,持ち歩くのに実用的なレベルを達成している。

 セキュリティ面では,ユーザー認証規格のIEEE802.1xや,無線LANの認証・暗号規格IEEE802.11iに対応。また,データ通信トラフィックが通話音声に与える影響を抑えられるように,音声パケットに優先度を設定する「ToS」(type of service)技術を採用した。当初の製品は通話専用で,データ通信機能は装備しない。ブラウザ機能などの搭載を計画しているが,対応時期は未定である。

 なお,沖電気工業は今秋をめどにSS9100を機能拡張して,NTTドコモのN900iLを WSP-500と同様に内線電話機としても使えるようにする計画である。