日本オラクルはOracle Database 10gで,Windows市場でのシェアの拡大を狙っている。そのための価格設定を行い,“高価”というイメージの払しょくに躍起だ。対SQL Serverのほか,グループウエアの市場にも目を向けている。日本オラクル マーケティング本部 システム製品マーケティンググループ 担当シニアマネジャーの坂本英樹(さかもと ひでき)氏に,Windows市場での戦略を聞いた。

(日経システム構築)

――Oracle Databaseには高価というイメージがあります。

坂本英樹氏
坂本英樹(さかもと ひでき)氏
日本オラクル マーケティング本部 システム製品マーケティンググループ 担当シニアマネジャー
 価格に対する誤解を解く必要があると考えています。Oracle Databaseに対して「高価」というイメージがありますが,それは誤解です。実はOracle Databaseは,米MicrosoftのSQL Serverより安く買えます。

 Windowsのデータベース・サーバーで最もボリュームの大きいゾーンにおいて,Oracle DatabaseはSQL Serverの3分の1の価格,と見ています。ボリュームの大きいゾーンとは,1サーバーに2個のCPU(Xeon)を搭載するマシンのことです。IAサーバー全体に占めるこのゾーンのマシンの比率は,80%から90%にもなります。2CPUまでのサーバーで利用できる「Oracle Standard Edition One」という製品は,5指名ユーザーで9万3000円です。

――エントリ・クラスより上のクラスではどうですか。

 データベース・サーバーに高い処理性能が求められる場合,スケールアップとスケールアウトという2つの方法がありますが,特にWindows環境ではスケールアウトが重要です。

 高性能チップを搭載したサーバーにスケールアップすることは可能ですが,Xeonを搭載したサーバーと比べて高価であり,Windowsユーザーの予算感と合わなくなっています。Windows環境では,コモディディ化したXeonのサーバーを複数台並べて使えるかどうかがポイントになります。

 そこで重要になるのが,クラスタリング・ソフト「Real Application Clusters(RAC)」です。Oracle DatabaseはRACを使ってスケールアウトできますが,他社の製品はRACのようなスケールアウトの構成は採れません。

 「Oracle Database 10g Standard Edition」にはRACが含まれています。旧版でRACを利用するにはEnterprise Editionでなければならず,しかもRACはオプション・ソフトなので別途購入する必要がありました。

 2CPUのサーバー2台でRACを利用する場合を考えると,約3000万円の費用を支払わなければ手に入れることができなかった機能が,約750万円で使えるようになりました。RACの導入は低コストでも可能になりました。

――Windows市場でのシェアの目標はありますか。

 社長の新宅が明言している通り,国内市場の60%が目標です。現在はSQL Serverと市場を二分し,当社製品のシェアは50%を切っていると見ています。60%はかつて取っていたシェアであり,Windows市場のシェアを取り戻すといった方がいいかもしれません。

RDBMSの新市場を開拓する

 SQL ServerからOracle Databaseへの乗り換えをアピールするだけでなく,これまでRDBMSを使っていなかったユーザーに使ってもらうことを考えています。具体的には,情報システム部門がかかわらない小さなシステムです。

 部門やグループ内だけで利用するシステムは,米IBMのグループウエア「Lotus Notes」上に構築しているケースがあります。また,Excelなどを工夫して利用しているケースもあります。そこにRDBMSの新市場があると考えています。

 新市場を開拓する切り札は,「HTML DB」です。これは単なるデータベースではなく,アプリケーションの開発と実行環境を備えた製品です。アプリケーションの開発と運用が簡単に行えるため,部門内で自由にアプリケーションを作成したいというニーズにこたえることができます。

――Windows OSとの相性はSQL Serverの方が良いのでは。

 米Microsoftの.NET環境では,むしろOracle Databaseの方が相性が良いと考えています。例えば,.NETで重要な役割を担っているXMLの対応では,Oracle Database 10gはSQL Server 2000に先行しています。米Microsoftは,次バージョンの“Yukon”でXML対応を強化するそうです。

 また,Oracle Database 10gはWindows OS用に最適化を施しています。具体的には,従来から対応していたスレッドに加え,スレッドよりも軽いファイバに対応しました。ラージ・ページや64ビットのファイルI/Oにも対応しました。そのほか,新しく米IntelのElectronコンパイラを利用したことで,15%から25%の性能向上が見込まれています。