Oracle 10gは,Windows用データベース市場でのシェア拡大を強く意識している。Windowsユーザー獲得に向けたツールが「HTML DB」だ。これを使えば,MS AccessなどからOracleに容易に移行できるという。コストや使いやすさに敏感なWindowsユーザーに対して,Oracle 10gをどのようにアピールしていくかを日本オラクル マーケティング本部 システム製品マーケティンググループ シニアマネジャーの杉崎 正之(すぎさき まさゆき)氏に聞いた。

(日経システム構築)

――乗り換えキャンペーンの実施など,SQL Serverユーザーの獲得策が目立ちます。

 Windowsでターゲットになるシステムの規模は,ほとんどがローエンドでしょう。そこでは,Oracleユーザーのすそ野を広げることに力を入れます。SQL Serverを意識するのではなく,どうしたらMS AccessからOracleに移行してもらえるかがポイントです。

 このようにデータベースの“手前”にいるユーザーは,簡単にOracleを使いたいと考えています。その実現に向けて「Oracle Database 10g(以下,Oracle 10g)」で加えたのが「HTML DB」という開発ツールです。これは完全にAccess対抗で,Oracle Database 10gをご購入いただくと標準で付いてくる開発ツールです。Accessのユーザーには,シングル・ユーザーで使っていたが,データ量が増えてきた,あるいはユーザー数が増えてきたという理由からOracleへの移行を考えるケースが意外と多い。また、最近ではセキュリティなどを意識してExcelデータをデータベースで管理したいというユーザーも増えています。このようなユーザーに使ってほしいのです。

――Windowsユーザーに対してOracle 10gをどのようにアピールしますか。

杉崎 正之氏
杉崎 正之(すぎさき まさゆき)氏
日本オラクル マーケティング本部 システム製品マーケティンググループ シニアマネジャー
 これまでOracleは,「利用実績があってスケーラビリティもある,セキュリティも大丈夫だし可用性もOK――。でも“超ツカイヅライ”」と言われてきました。具体的には,「開発がしづらい」「Windowsとの親和性が低い」といった声をよく耳にします。

 これらの課題を徹底的に克服したのがOracle 10gだと思っています。「OracleDirect」に寄せられたユーザーの声はマーケティングに伝えられ,米Oracleの開発チームに回ります。このように,ユーザーの声を製品に反映する仕組みをしっかりと固めた。この仕組みを通じ,使いづらいという問題をOracle 10gで十分に見直しました。

 例えば,Oracle 10gではインストール時間が格段に短くなった。これまでのバージョンでは,3時間とか,プラットフォームによっては8時間もインストールに費やしていました。Oracle 10gは,どのプラットフォームでも20分以内にインストールが完了することを目標に置き,徹底的に効率化しました。

「使いやすさ」や「コスト」を前面に出す

 Windowsユーザーへの訴求ポイントも見直しました。Oracle 10gの機能強化を伝える際は,「速くなった」「使いやすくなった」というレベルで説明します。Oracle 10gは,例えばキャッシュのヒット率といった,難しいことを意識しないで使えるデータベースに仕上がっています。インストール直後からGUIツールを使って,直感的にデータベースが構築できる。これまでは,“CREATE TABLE”や“CREATE USER”といったコマンドを打つ必要がありました。

 Windowsの世界は,「使いやすいか,使いづらいか」「高いか,安いか」が基準だと思います。これまで,Oracleは超ローエンドのユーザーが取れませんでした。いくらSQL Serverと比べて,Oracleはパーティション機能があります,RACがありますと言ったところで,「そんなの必要ない」というケースが多かったからです。そのようなユーザーに対しては,「価格」「使いやすさ」「開発のしやすさ」――この3つをもっとアピールすべきだと感じています。そして、これら3つを完全に克服したのがOracle 10gということになります。

――Windowsユーザーにとって,Oracleで求められる高度なチューニングは敷居が高いのでは。

 Oracle 10gでは,これまで300個以上あったパラメータを27個に絞り込みました。もちろん,27個以外のパラメータを廃止したわけではありません。Oracle 10gをインストールした際,27個のパラメータがマシンの状況に応じて自動設定されるのです。CPUの能力やメモリー容量を自動認識した上で設定するので,メモリーを潤沢に積んでいるのにOracleが使いにいけずにパフォーマンスが上がらない,といった問題は発生しません。

 自動設定の精度ですが,ほとんどの場合で問題が発生することはありません。もちろんデータベースの状況は刻々と変化しますが,それに応じてOracleがパラメータを自動調整することも可能です。

Oracle 10gは40万種類のSQL文を最適化できる

 Oracle 10gはパラメータの自動設定/調整の機能を備えました。これを実現するには,オンライン状態でパラメータを変更できるようにする必要があった。この機能は,前バージョンのOracle9i Databaseで徹底的に基礎を固めました。まずオンライン化を実現し,次のOracle 10gで自動化にこぎ着けたというわけです。

 自動設定/調整のほか,SQL文を解析して実行する「オプティマイザ」も機能強化しています。Oracle 10gでは,40万種類のSQL文を最適化できます。このような数のSQLを最適化可能なデータベースは他にはありません。Oracle9i Databaseは28万種類でしたので,カバー率は格段に高まりました。この機能強化により,Oracle9iから10gに移行することで,28%ぐらい処理が高速になると言われています。