米Azul Systemsは4月21日,NAP(Network Attached Processor)と呼ぶ新発想に基づく製品「Azulコンピュートアプライアンス」(写真)の受注を開始する。複数の異種アプリケーション・サーバーが実行する処理を肩代わりする製品だ。サーバーの負荷を減らし,サーバーへのアプリケーション集積率を向上させられる(サーバー集約に役立つ)。このため,運用費や保守費の削減が見込める。米国で4月18日に発表した製品である。現段階ではJavaプログラムの処理にしか対応していないが,「将来は.NETプログラムやSAP ABAPプログラムの処理も同じ製品で肩代わりできるようにする構想」(社長兼CEO Stephen W. DeWitt氏)という。

 Azulコンピュートアプライアンスは,多数のプロセッサとメモリーを備えた装置。それをネットワーク越しに複数の異種アプリケーション・サーバーから利用する。いわば,NAS(Network Attached Storage)のプロセッサ/メモリー版だ。複数サーバーから共有するため,同アプライアンスのリソースに空きがある限り,ピークを迎えたサーバーが必要なときに必要なだけリソースを使用できる。システムごとにピークを予想し,それを上回るリソースを用意しなければならなかった従来に比べて,「キャパシティ設計の手間が簡略化され,リソースに対する投資が最適化される」(DeWitt氏)。

 同アプライアンスを利用するに当たり,アプリケーションに手を加える必要はない。アプリケーション・サーバーに「Azul Proxy」と呼ぶ専用ソフトをインストールするだけで済む。Azul Proxyは,本来はアプリケーション・サーバー上で動作するプログラムを同アプライアンスのメモリー上に展開して処理し,結果を返す。例えばJavaで言えば,OSやハードウエアに依存しない(Java Native Interfaceを利用しない)Pure Javaの処理を同アプライアンスで実行する仕組みだ。JNIを利用する処理は,Azul Proxyがアプリケーション・サーバー上で処理する。ネットワークの遅延は発生するが,「1Gビット/秒以上の帯域があれば,十分に実用的だ」(DeWitt氏)。

 Azulコンピュートアプライアンスに搭載されたプロセッサは,オブジェクト指向プログラムの実行に最適化した独自の「Vega」チップ。1基当たり24コアを集積した64ビットのプロセッサで,複数のコアでSMPを構成できる。アプリケーション・サーバーが32ビット機であっても,同アプライアンス上では64ビットのメモリー空間(ヒープ領域)を使える利点がある。

 価格は,きょう体サイズが5U,プロセッサが4基(96コア)でメモリーが32Gバイトのモデル「960」で13万ドル。ほかに,プロセッサが8基(192コア)のモデルと,16基(384コア)のモデルがある。販売は,伊藤忠テクノサイエンス,住友商事/住商エレクトロニクス,日商エレクトロニクス。対応するアプリケーション・サーバーは当初,BEA WebLogic Server,IBM WebSphere Application Server,JBossで,OSはSPARC上のSolaris 8/9またはIA-32上のRed Hat Enterprise Linux 3.xを想定する。

(実森 仁志=日経システム構築)