アイルランドのIONA Technologiesは2005年下期をめどに,システム間をピア・ツー・ピアで連携させるミドルウエアをオープンソース・ソフト(OSS)として無償公開する。COO(最高執行責任者)のPeter Zotto氏(写真)が3月18日に明らかにした。同社はすでにSOA(Service Oriented Architecture)の考え方に基づき異種システム間を連携させるソフト「Artix」を開発・販売しているが,このOSSはArtixとは別のラインナップと位置付ける見込みだ。「現段階では機能を詳しく紹介することはできないが,Artixのサブセット版というわけではない」(Zotto氏)。

 SOAは,既存システムを再利用可能なサービスとしてネットワーク上に公開し,それらを連携させることにより,ビジネス・プロセスを低コストで構築/変更できるようにする考え方。この考えに基づいてシステムを構築する場合,既存システムをサービスとして公開し,あらかじめ定義したビジネス・プロセスに基づいてサービスを組み合わせるミドルウエアが重要な役割を果たす。こうした用途で使えるミドルウエアをOSS化することで,「SOAの敷居を下げるとともに,ユーザー企業のすそ野を中小企業にまで広げる」(Zotto氏)という狙いがある。

 Artixは,全世界で38社への導入実績があり,3月21日にはQoS(Quality of Service)機能を強化した新バージョン「3.0」が発表されたばかり。だが,今のところ採用しているのは,米通信大手BellSouthや独DEUTSCHE POSTなど,異種システムを多数抱えた大企業や政府/自治体などが中心。中小企業への訴求力は今一つだった。そこで,機能や連携対象を限定したOSSを提供することで,中小企業の取り込みを図るものと見られる。

 Artixは,最近のシステム間連携ソフトで主流である「ハブ&スポーク型」ではなく,異種システム(サービス)間のメッセージをピア・ツー・ピアでやり取りする「バス型」のアーキテクチャを採用している。具体的には,連携対象となり得るシステムにあらかじめ導入したArtixのモジュールが,連携先システムで公開されているインタフェース形式に合わせてメッセージを自動変換し,連携先システムに直接送信する仕組み。ハブの役割を果たす特定のサーバーに中継してもらうわけではないので,「ボトルネックが生じにくく,性能を保ちやすい」(Zotto氏)という特徴がある。

(実森 仁志=日経システム構築)