米Hewlett-Packard(HP)は昨年秋,「HP StorageWorks Grid」という新しいアーキテクチャを提唱。このアーキテクチャの目指すものや具体的な製品について,米Hewlett-Packard Senior TechnologistのAbbott Schindler氏(写真)に聞いた。(聞き手は岡本 藍=日経システム構築)

---HP StorageWorks Gridとは何か
 米HPが考案したストレージの新しいアーキテクチャである。ストレージに自己管理能力を持たせ,アプリケーションの視点で用途に応じてパフォーマンス,容量,可用性をダイナミックに変化させていく。これまでは,サーバーごとに個別にパスの設定をしたり,性能や可用性を考えたりしなければならなかった。しかも,ストレージ装置ごとにも設定が別途必要になっていた。これでは,アプリケーションごとに異なる最適な設定を管理者が考えるのも困難となる。こうした課題を解決するために,HP StorageWorks Gridが生まれた。

---具体的にはどのようにして実現するのか
 「スマートセル」というコンポーネント単位でストレージのグリッドを作り出す。スマートセルは,CPU,キャッシュ,ディスク・ドライブ(またはテープ・ドライブ),制御ソフトウエアを組み合わせたもの。CPUやキャッシュ,ディスク・ドライブはストレージ装置の種類にかかわらず共通のものを用いる。
 制御ソフトは,スマートセルを管理するOSのような機能と,アプリケーションの属性によって必要な機能とに分かれる。後者の例としては,データ・アクセス・パスの管理や,パーティショニング,インデックスの管理などの機能がある。複数のスマートセル同士は,ピア・ツー・ピア(P2P)の技術で互いに接続,管理しあう。

---例えば,どのような製品になるのか
 昨年秋にリリースした「HP StorageWorks RISS」がある。RISSは,電子メールやオフィス文書を対象にした製品で,コンプライアンス用のソフトウエアやアクセス管理などの機能を持つ。RISS以外にも,今後提供していくブロック・アクセスを対象にしたもの,ファイル・サーバーの用途のもの,アーカイブ専用のものなど,様々な用途がスマートセルによってグリッド・ベースのもので実現できるようになる。

---StorageWorks Gridを利用するユーザーにとってのメリットは何か
 容量の増加に合わせて,スマートセルが自己拡張したり,自己管理したりする。しかも,拡張しても同じパフォーマンスや可用性を保証する。複数のスマートセルが組み合わされていても,管理者を煩わせることなく,アプリケーションからは単一に見ることができるのは,大きなメリットとなる。

---時期的にはいつごろ実現できそうか
 今後,2~3年のうちに様々な機能を持つ製品を徐々に提供していく予定である。