日本ヒューレット・パッカードは9月15日,サーバーの仮想化技術「HP Virtual Server Environment(VSE)」を異種OSに対応させると発表した。従来はHP-UXのみに対応していたが,一部の機能をLinuxでも使えるようにする。ライセンス上の問題がクリアされれば,Windowsにも対応する方針だ。

 VSEは,1台のサーバー機を論理的に複数台のサーバー機として,あるいは逆に複数台のサーバー機を論理的に1台として,扱えるようにする技術の集合体。米Hewlett-Packardが2003年5月から提供してきた。米国で利用した企業の実績では,「サーバー機の資源の使用率を平均2倍程度に引き上げることができた」(仮想化とユーティリティ・コンピューティング担当ディレクタであるNick van der Zweep氏)という。

 HP VSEの要素技術は多岐にわたる。代表的なものには,(1)物理/論理サーバーに対する処理の割り当てを制御する「Workload Manager」,(2)物理/論理サーバーに対するソフトウエアのインストールなどを自動化する「System Insight Manager」,(3)複数サーバーでクラスタを構成する「Serviceguard」,(4)サーバー上を複数の境界で分割する「nPars(物理パーティション)」や「vPars(論理パーティション)」,(5)サーバー資源の柔軟な増減と課金を可能にする「iCOD(CPUなどの追加)」「TiCOD(CPUなどの一時的な追加)」などがある。

 同社は,これらの技術を異種OSに対応させる。

 まず,HP-UX 11iとLinuxに対応したWorkload Managerを「HP Global Workload Manager」として2005年上半期に出荷する。あらかじめ設定したポリシーに基づいて,複数のOSを搭載したサーバー機に処理を動的に割り振り,サービス・レベルを維持できるようになる。例えば,Webアプリケーション・サーバーをLinux,データベース・サーバーをHP-UX 11iで構成したシステムがあったとする。ユーザーからのリクエストが増加し,ポリシーで規定しておいたCPU使用率を超えたり,応答性能が目標値を下回ったりした場合には,HP Global Workload Managerが自動的にWebサーバーとデータベース・サーバーをシステムに追加し,処理を割り振る。予備のサーバー機に必要なソフトウエアを導入し,Webサーバーやデータベース・サーバーを構成する処理は,System Insight Managerで実施する。

 また,同社のサーバー機「HP Integrity」上でマルチOSを同時稼働させるためのソフトウエア仮想マシン「HP Integrity Virtual Machines(IVM)」を2005年下半期に出荷する。サーバー機に実装されたCPUを5%単位でHP IVMに割り当てることが可能になる。当初はHP-UX 11iの最新版(v2)のみ同時稼働をサポートし,その後,Linuxの並行稼働にも対応する予定。Windowsの稼働は,マイクロソフトからライセンス上の合意が得られれば,対応する方針だ。

(実森 仁志=日経システム構築)