Open Source Way 2003 |
パネル・ディスカッション「地方自治体とオープンソース」ではオープンソース・ソフトウエアを活用することで,地元の地元のIT企業が育成できた例などが紹介された。
長崎県のCIOである総務部参事監 情報政策担 島村秀世氏が,全てオープンソースで開発中の電子決済システムで,システムを小規模に分割して発注することで,地元の中堅インテグレータが落札したという。岐阜県の財団法人ソフトピアジャパン CIO兼企画室長 丹羽義典氏,沖縄県 特別非営利活動法人 OSPI(Open Source Promotion Institute)のRobert Hawkins氏がそれぞれの自治体での地元企業によるオープンソース・ソフトウエアを利用した公的システム開発の実例を報告した。
経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長補佐 久米孝 氏が同省の政策を説明。弁護士の小倉秀夫氏がオープンソース・ライセンスGPLに関する法律問題,三菱総合研究所 情報技術研究部 主任研究員の比屋根一雄氏が世界各国のオープンソース政策と採用同行について講演。オープンソースのオブジェクト指向言語Rubyの開発者として知られるネットワーク応用通信研究所のまつもとゆきひろ氏は,オープンソース・ソフトウエア開発者の立場からその実際を,GNUプロジェクトの八田 真行氏はコミュニティの立場からオープンソースという考え方について講演した。
自治体が「汗をかき」分割発注,仕様書を作成
左から長崎県 島村秀世氏 岐阜県 ソフトピアジャパン 丹羽義典氏 沖縄県 NPO法人 OSPI Robert Hawkins氏 |
また島村氏は,数十年前にシステムを納入した企業がその後も延々と随意契約でシステムを受託する構造が見られると述べ,オープンソース化することで,別の企業でもシステムをメンテナンスできる「敗者復活が可能になる」と述べた。
沖縄県のオープンソース利用を促進するNPO法人であるOSPIのHawkins氏は,電子政府向けシステムのプロトタイプをOSPIが受託し,会員企業が開発している例などを報告した。エージェント・センターのオペレータが,コンピュータに不慣れな人に代わって電子申請などを行うためのシステムで,オープンソースの分散システム構築ミドルウエアSOBAを使用しているという。
岐阜県でベンチャー企業の育成を行っているソフトピアジャパンの丹羽氏は,オープンソース・ソフトウエア開発環境の提供などを行っているオープンソース推進協議会を2003年7月に設立している。県内の行政機関の情報を提供するサイトを作る岐阜ポータル・プロジェクトと呼ぶプロジェクトでは,ミドルウエアによりユーザー・インタフェースを統一し,インタフェースは公開することでOSに依存しないアプリケーションとする「オープンリソース」と呼ぶコンセプトについて説明した。
経済産業省の支援,世界の政府による採用
経済産業省 久米孝氏 |
三菱総合研究所の比屋根氏は,ドイツのミュンヘン市議会が2003年5月,1万4000台のコンピュータをWindowsからLinuxに移行させることを決議した例や,ブラジル政府が3カ年計画で政府の全コンピュータのうち80%をLinuxに移行しようとしている例,そのほかタイ,フランス,イギリス,中国などの各国政府のオープンソース・ソフトウエア採用状況を紹介した。
米国でカンファレンスが開催されるなど,世界的に普及したソフトウエアとなったRubyの開発者まつもと氏は,実体験から,どのようにオープンソース・ソフトウエアを開発しているのかなどについて講演した(講演スライド)。「オープンソースとビジネスの関わりについても触れ,聴講しているビジネス・マンに「オープンソース・ソフトウエアで利益を上げていただきたいと心から願っている」と話し,オープンソース・ソフトウエアをビジネスにする方法としてライセンスによる収入,書籍の発行,パッケージ化,有償サポート・サービス,システム・インテグレーションなどを挙げた。