大手ストレージ・ベンダーの米EMCは,「情報ライフサイクル管理(ILM)」という戦略を打ち出している。同社による米Lagato Systemsや米Documentumの買収は,ILMを推進する戦略の一環。来日した米EMC オープン・ソフトウエア担当主席副社長 兼 最高技術責任者のMark Lewis氏(写真)に,ILMのメリットなどを聞いた。(聞き手は,松山 貴之=日経システム構築)

---ILM(Information Lifecycle Management)は,企業の抱えるどんな課題を解決するのか
 企業内の情報量は,日々増えている。膨大な情報を適切に管理したいというニーズは大きい。ILMは,情報の価値に応じてデータを管理する。時間が流れると情報の価値は変わっていくが,その価値の変化に合わせて,(最適な保管場所に)動的にデータを移動させたりする。ハイエンドのディスクには価値の高いデータだけを置いておくことができるようになり,ディスク装置にかかるコストを抑えることができる。さらに,そのための運用管理作業が自動化できる。これらのことから,ストレージに関するトータル・コストが50%削減できる。

---具体的には
 Exchange ServerやLotus Notesなどの電子メールを例に説明しよう。メール・データは増える一方だが,一般に簡単に管理できる手法が無い。適切に管理するには,まず運用ポリシーが必要になる。例えば90日分はいつでも参照可能(アクティブ)で,3年間分はアーカイブしておく,という具合にだ。このような環境を当社のディスク製品で構築すると,アクティブ用には「CLARiX」が,アーカイブ用には「Centera」が適している。ポリシーに沿ってメール・データを管理するには,データをCLARiXからCenteraに移動したり,期限が過ぎると消去したりする作業が必要になる。ILMを実現する弊社の製品の一つである「EmailXtender」を用いれば,ポリシーを設定しておくだけで,それらの作業を自動的に行うことができる。

---メリットは運用管理コストの削減か
 先ほどの電子メールの例では,そうなる。ただ,運用コストの削減だけではない。運用ポリシーに沿って適切にデータを管理すること自体が大変で,ILMによって確実に実現できるようになる。例えば金融機関などは,法令でデータの保管が義務付けられている。そのようなコンプライアンスのための環境を構築するのに,ILMは有効である。

---LegatoとDocumentumの買収で,ILMに必要なソフトはすべてそろったのか
 必要なソフトはそろったと考えている。今のところ(他社の技術やソフトは)必要性が無い。ILMを提唱するベンダーはほかにもある。例えば米Hewlett-Packardや米Storage Technologyなどだ。だが,当社ほど包括的なビジョンを提示している企業はない。