アイエニウェア・ソリューションズの早川典之氏


 アイエニウェア・ソリューションズは9月26日,東芝ITソリューションとの提携を発表した。この提携により,アイエニウェアのモバイル端末向けデータベース製品「SQL Anywhere Studio」が東芝ITソリューションのモバイル・アプリケーションに組み込まれる。日本でのモバイル・システムの現状と今後の展開を,アイエニウェア・ソリューションズ 代表取締役社長 早川典之氏に聞いた。(聞き手は日経システム構築の岡本藍)

---今回の提携の目的は

 製造業や医療など新たな市場への販売チャネルを確立するためだ。特に,モバイルの利用が難しかった病院や倉庫の中など現場におけるシステムのモバイル化を促進していく。SQL Anywhere Studioはモバイル端末と社内ネットワークが常に接続された状態でなくても使えるデータベースなので,こうした場所でのモバイル化に有効な選択肢の一つとなる。

---日本でのモバイル・システムの現状は

 これまでのモバイル・システムは実験段階の域を出ていないが,本格的なシステムの実用化も始まっている。様々なプロトタイプからモバイル・システムの問題点も見えてきた。その中で最も大きな問題がデータベースの同期だった。ネットワークがつながっていないとモバイル端末とサーバー側のデータを同期できなかったり,同期をとるだけで最大25分もかかっていたりした。

 SQL Anywhere Studioは同期するためのスクリプトを自動生成するなどの機能があり,時間を20秒に縮めることが可能だ。アプリケーションについても,提携した東芝ITソリューションのモバイル端末向けの業務アプリケーション・パッケージ製品「モバイルコンテナ」を使えば,ウィザードで入力項目などを指定するだけで,モバイルに適したアプリケーションを作ることができる。

 また,今回からモバイル端末の管理ソフト「Manage Anywhere Studio」を東芝ITソリューションからも販売することになった。このソフトは,集中管理が難しいモバイル端末に対して,ネットワークに接続したタイミングで,サーバー側からアプリケーションを自動配布したり,パッチを適用させたりするためのもの。これによりモバイル・システムの構築から運用までの課題を解決できるようになった。

---今後の課題は

 日本ではモバイル端末に対するセキュリティ意識が低い。端末内のデータベースのデータの暗号化も進んでいないし,端末とサーバー間での通信も暗号化されていないことが多い。導入が進まない主な理由は,暗号化をすると処理速度が低下すること以上に,暗号化・複号化するための操作が新たに必要で利用者の使い勝手が煩雑になるというもの。個人情報や機密情報の漏洩が問題となる中,セキュリティの問題を解決しなければ企業でまともなモバイル・システムが浸透することにならない。

 それならば,24時間以上社内ネットワークに接続しなかったら,端末に保存されているデータを自動削除し,社内ネットワークにもアクセスできないようにしておくなど,アプリケーション側に工夫を施すようにしなければならない。