米SybaseのPowerBuilderエバンジェリスト,David E. Fish氏

 アシストは,開発ツールの新版「PowerBuilder 9.0」を12月19日から出荷する。新版ではJSPやEJBなどJavaの標準化にも追随する。クライアント/サーバー(C/S)システムで広く使われていたPowerBuilderが,Webコンピューティングの時代に向けてどう変わっていくのか。開発会社である米SybaseのPowerBuilderエバンジェリスト,David E. Fish氏に新版の狙いや今後の方向性を聞いた。(聞き手は日経システム構築の森側真一)

---新版での主な強化点は何か

 ビジュアル開発環境で作成したアプリケーションをJSPアプリケーションとして配布できる機能を備えた。これまでは,Webアプリケーションでのサーバーの実行環境はASP(Active Server Pages)と独自サーバーのPowerDynamoだけだった。新版ではTomcatなどJSP対応のWebアプリケーション・サーバーが利用できるようになる。

 EJBコンポーネントやWebサービスを,PowerBuilderアプリケーションから呼び出して利用する機能も備える。BEA WebLogic ServerやIBM WebSphere Application Serverで作成したコンポーネントと組み合わせた開発が可能になる。ほかに,XML(Extensible Markup Language)データをPowerBuilderアプリケーションに取り込んだり,PowerBuilderアプリケーションからXMLデータを生成したりする機能も用意する。

---WebSphereやWebLogicが備える開発環境と比べて何が良いのか

 従来からある「データ・ウインドウ」機能を使って,データベースを扱うWebアプリケーションの開発が容易であることだ。

 さらに,今年11月に正式発表する新たな機能「Appeon for PowerBuiler」を使えば,C/Sシステムとして開発したアプリケーションを自動的にWebアプリケーションに変換できる。Windows上で作成したツール・バーやドロップダウン・メニューなど“リッチ”なユーザー・インタフェースを,そのままWeb上で実現する。

Appeon for PowerBuilerの画面例
Appeon for PowerBuilerの画面例

 こうしたことは従来のPowerBuilderでも,JavaScriptなどに詳しい開発者が細かく記述すればできなくはなかった。それがAppeon for PowerBuilderによって非常に簡単に開発できる。HTMLとJavaScriptだけを使っているが,Internet Explorer(IE)のフレーム機能を使っているので動作環境はIEだけになる。

---すべてのアプリケーションはWebに向かうと見ているのか

 現状では,PowerBuilderのユーザーのうち,7割がC/Sシステム,3割がWebシステムと見ている。C/Sシステムは運用管理の手間が問題で,明らかにWebシステムへの移行が増えている状況だ。しかし一方で,Webシステムのユーザー・インタフェースに不満を持つユーザーも数多くいる。

 AppeonやFlashなどの技術によって,C/Sの特徴をWebブラウザでも実現する傾向ではあるが,ユーザー・インタフェースの良さでC/Sシステムが優位にある状況はしばらく続く。いくつかの実装方法があるなかで,システムごとにベストな選択をしていくのであれば,C/Sシステムの必要性は無くならないだろう。