東京証券取引所が7月30日に発表した,「相場報道システム」「株式売買システム」の増強計画の詳細が日経システム構築の取材で明らかになった。今後,マシンのリプレースなどを含め,50億円あまりを投じる。

 相場報道システムは日立製作所のメインフレームを利用している。今年の10月,新たなマシンに移行することで,処理能力を引き上げる。相場報道システムは,株式売買システムなどから情報を受け取り,証券会社などに配信する。他のシステムから情報を受け取る際,1分間に何件の情報を送信してよいか,「流量制限」と呼ぶ上限値を設けている。株式売買システムの流量制限は現行5310件。相場報道システムを増強し,これを5660件に引き上げる。

 さらに12月には9160件まで上積みするが,そのために新規プログラムを追加する。「情報の配信先には4800bpsといった低速回線を利用しているユーザーもある。そのユーザー向けにデータ量を絞るプログラムを開発する」(情報システム部 プロジェクトマネージャ 小黒隆行氏)。このプログラム開発,新マシンの購入を合わせて約9億円を投じる。さらに,新マシンに移行することで,保守費用などのランニング・コストが約3000万円/年,現行システムよりアップする。

 流量制限の引き上げを急ぐのは,今月3日に注文が殺到し,最大で15分間,情報配信が遅延したことが背景にある。午前9時11分から,流量制限によってあふれた約定情報が株式売買システムに滞留したことが原因だ。このときの流量制限は4660件だった。滞留した情報をクリアしながら最新情報のみを送信することでリカバリを実施,午前10時には復旧に漕ぎ着けた。

 東証は暫定対策として,7月7日に流量制限を200件積み増した。しかし,翌8日に再び一時的な滞留が発生。遅延時間は最大3分間で,注文数の自然減により滞留は解消された。22日には,流量制限をさらに450件増やした。

 「(情報配信が遅延した)7月3日は,現行システムを稼働させて以来,最高の263万件の注文が押し寄せた」(売買システム部 リーダー 野口貴士氏)。東証では,インターネット・トレーディングが拡大してきたことが,注文数が急増した一因とみる。今後の注文増を見込み,富士通製のメインフレームを利用する株式売買システムの増強にも着手する。
 
 まず今年10月にCPUを追加し,現行の約1.3倍に処理能力を引き上げる。さらに12月にもCPUを追加し,現行の約1.5倍の処理能力とする。同時に,半導体ディスクの容量を拡張し,注文受付件数を現行の450万件/日から540万件/日に拡大する。この拡張により現行マシンの性能は頭打ちとなる。そのため,2005年1月には上位機種にリプレースする計画である。今後5年間,株式売買システムの増強に約39億円を投資する。

(森山 徹=日経システム構築)