アドビシステムズは5月15日,Adobe Acrobat 6.0を発表した。併せて,無償の閲覧ソフトAcrobat Reader 5.1をAdobe Reader 6.0と改称して機能を強化。取り扱うファイル形式PDFのバージョンも1.4から1.5に上げる。Acrobatの価格は,Professional版が5万4800円,Standard版が3万4800円。他に,ライセンス販売のみのElement版がある。出荷時期は,Professional版とStandard版は7月4日,Element版は5月16日。

 新版では,使い勝手を大幅に向上している。Acrobat 6.0では,WordやExcel,HTML,XMLなど形式の異なる複数のファイルを,簡単な操作で一つのファイルに格納したり,取り出したりすることができる。Adobe Readerでは,ユーザー・インタフェースの改良や検索機能を強化した。PDF 1.5では,Webサイト上にあるFlashやQuickTimeなどマルチメディア・コンテンツを取り込んで閲覧できるようにした。これらにより,PDFは単なる文書保存のためだけでなく,コラボレーション用のデータのやり取りや業務システムへのデータの受け渡しといった業務システムにも使いやすくなった。

 さらに,アドビは業務システムでの導入を促進するため,Acrobat 6.0とAdobe Reader 6.0に隠し機能を用意している。PDFに加えてXFA形式のファイルを扱えるようになっている。XFAは,アドビが2002年に買収した旧アクセリオ製品(Adobe Form Serverなど)が内部に使っているファイル形式で,XMLをベースに策定した仕様である。XMLベースでクライアント/サーバー間のデータ交換が可能になるため,業務システムとの連携がより容易になる。ただし,現バージョンのXFAファイルは扱えず,Form Serverなど旧アクセリオ製品がバージョン・アップするタイミングで機能が使えるようになる。

 システムの作り方としては,PDFでXFAをラッピングすることもできるし,その逆も可能だ。ドキュメント関連製品の開発責任者であるIvan Koon氏(ePaperソリューションズ シニアバイスプレジデント)は「ワークフロー・システムなど人間が介在してデータをやり取りする場合はPDFを使い,システム間でデータのやり取りが完結する場合はXFAを使えばいい」と言う。

 XFAの仕様は今のところ公開されていない。しかし「9月をメドに『Adobe XMLアーキテクチャ』という名前で仕様を公開する」(Koon氏)と言う。PDFは仕様が公開されており,新薬申請などの分野で文書管理の標準仕様として採用され,官公庁を含め広く普及している。XMLでも,同様の効果を狙っていると見られる。

(尾崎 憲和=日経システム構築)