TCPセグメント化で
TCPセグメント化の例として,イーサネット上で送信すべきTCPユーザー・データが3000バイトの場合を示す(図8)。分割後のパケットのユーザー・データはMSSの値以下でなければならない。 イーサネットのMTUは1500バイトなので,IPヘッダーとTCPヘッダーの分を除くと,TCPユーザー・データが格納できるのは1パケット当たり最大1460バイトとなる。TCPセグメント化では,TCPユーザー・データの分割と併せて,IPヘッダー,TCPヘッダーの生成処理が発生する。
Windowsはオフロード機能の有無を
オフロード機能が有効になっていると,該当する機能を使用する場面でTCP/IPトランスポートでは実際の計算をせずに,疑似値(例えば,チェックサム計算の結果)が生成されるようになり,CPU負荷の軽減が図られる。その後ミニポート・ドライバからNIC上の専用プロセッサに対して,実際の計算を依頼し,疑似値から正しい計算結果に置き換えるように指示される。
検証対象サーバー上のFTPサーバーのコンテンツとしては,128Mバイトのファイルを8個用意した。負荷クライアント上で,仮想FTPクライアントを32個起動して,その8つのファイルにアクセス(GET命令によるファイルのダウンロード)する。各仮想FTPクライアントは,5分間連続でアクセスを繰り返す。 検証対象サーバーのOSには,Windows Server 2003, Enterprise Editionを使用,2004年11月15日時点の修正プログラムをすべて適用し,最新のドライバ・ソフトを利用している。 NICは,バス規格がPCI-XとPCIExpressの異なる2種類の製品を用意した。負荷をかけている状態で,それぞれ,オフロード機能を有効もしくは無効に設定したときのネットワーク・パフォーマンスおよびCPU使用率を計測している。 検証対象サーバーのNICのプロパティのうち,以下をすべて[有効],もしくは[無効]にすることで,機能の有効/ 無効を設定した。これにより,TCP/IPドライバからミニポート・ドライバへの,タスク・オフロード機能をサポートしているか否かの問い合わせに対する応答を変えられる。
・受信TCPチェックサム・オフロード 測定では,負荷クライアントから検証対象サーバーに負荷をかけている状態で,1秒おきに60回,「送信データ量(ビット/秒)」と「CPU使用率(%)」を検証対象サーバー上でサンプリングした。サンプリングで得られた値の平均を,検証結果として利用している。
CPU使用率が半分になる場合もある
(1)TCP/IPチェックサムとTCPセグメント化のオフロード機能を有効
負荷がかかっている状況で,モジュールごと(上位5つとその他で区分)のCPU命令実行数のサンプリング結果から実行割合を計算したグラフを図12に示す。サンプリングは,1ミリ秒単位で60秒間採取した。分析の対象としてNIC2「NC320T」の測定データを使用している。 この結果から,オフロード機能を有効にするとTCP/IPネットワーク処理に大きく関与している(1)tcpip.sys(TCP/IPドライバ),(2)NDIS.sys(NDISインターフェース・ラッパー),(3)q57xp32.sys(NC320T用のミニポート・ドライバ)のCPU命令実行数,およびその割合が激減していた。これらのことからオフロード機能がCPU負荷の軽減に十分役立っていることがうかがえる。tcpip.sysはTCP/IPの階層モデルのうちトランスポート層とインターネット層,NDIS.sysとq57xp32.sysは同じくネットワーク・インターフェース層に位置付けられる。
次期Windowsでは
米Microsoftは次期ネットワーク・アーキテクチャである「Chimney」でオフロードの対象を大幅に広げようとしている(図13)。Chimneyは,次期Windows(開発コードLonghorn)のNDIS 6.0に実装される見込みだ。 Chimneyでは,論理スイッチとミニポート・ドライバの間で直接コネクションを持ち,これによりTCP/IPプロトコル・スタックのデータ転送にかかわる部分をまるごとオフロードすることでCPU負荷のさらなる大幅な軽減が可能だ。 また,論理スイッチによって,NICが持つオフロード機能に合わせて自動的にオフロード機能使用の有無が選択され,アプリケーションからは透過的になる。OSによるオフロード機能対応への流れは,Linuxでも始まっている。ぜひ利用してほしい。 |
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