■Windows NT Server 4.0のサポートが完全に終了する2004年12月末をめどに,ドメイン移行を計画しているユーザーは多いことだろう。
■マイクロソフトはNTドメインからActive Directory(AD)ドメインへの移行を支援するツールADMTを無償提供している。新たにユーザー・アカウントのパスワードを引き継ぐ機能を備えたADMT 2.0の使い方の勘所を詳細に解説する。
■この記事は,『日経Windowsプロ』2004年2月号の特集2「ドメイン移行成功の必携ツール ADMT 2.0を使いこなす」のサブテキストとして,記事中で解説している操作をより詳しく知るため,49点の画像を中心に構成したものである。

 NTドメインからADドメインへ移行するには,(1)インプレース・アップグレード,(2)移行ツール,(3)新規構築――といった3種類の方法がある。2番目の方法は,元のドメインのアカウントを引き継げる。Windows Server 2003には標準で移行ツール「Active Directory Migration Tool(ADMT)2.0」が標準で付属している。新版になって,ユーザーのパスワードも引き継げるようになった。


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図1●ADMT 2.0のインストール

 最初はADMT 2.0をインストールしよう。Windows Server 2003のCD-ROMにある「I386」フォルダの中の「ADMT」フォルダに「admigration.msi」というプログラムがありこれをダブル・クリックして実行する。左の図1をクリックするとインストール画面が確認できる。画面は次のような8点からなる。
(1)CDドライブからadmigration.msiを実行する
(2)ADMTセットアップウィザードの開始画面
(3)許諾内容を確認する
(4)ツールのインストール先を指定する
(5)[次へ]をクリックしてインストール開始
(6)インストールが開始された
(7)インストール完了


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図2●ドメインの機能レベルは[Windows 2000ネイティブ]または[Windows Server 2003]に上げる

 ADMTのインストールが終わったら,次はADMTを実行する前の準備作業を行う。それは次のような4つのステップを踏んで行う。(1)ドメインの機能レベルを「Windows 2000ネイティブ」または「Windows Server 2003」に引き上げる,(2)移行元/先のドメイン間で双方向の信頼関係を結ぶ,(3)双方のドメイン管理者グループに相手の管理者権限も持たせる,(4)移行元ドメインのレジストリを編集する――というものだ。第1のドメインの機能レベルを上げる方法は,スタート・メニューの[管理ツール]-[Active Directoryユーザーとコンピュータ]で,ドメイン・オブジェクトを右クリックして,現れたメニューから[ドメインの機能レベルを上げる]を選択して実行する。すると図2のような画面が現れる。ここで[Windows 2000ネイティブ]を選択すると,機能レベルが[Windows 2000ネイティブ]となる。


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図3●移行先(Windows 2003)から移行元(Windows NT)への信頼関係を設定する

 第2に「移行先と移行元のドメイン間で双方向の信頼関係を結ぶ」作業を行う。最初に移行先ドメインから移行元ドメインへの信頼関係を結ぶ。そのためにはWindows Server 2003で操作する。スタートメニューから[管理ツール]-[Active Directoryドメインと信頼関係]を開く。図3に従って作業を行う。図3の画面遷移は以下の通り。
(1)移行元を選択し[プロパティ]を実行。
(2)[新しい信頼ウィザード]の起動。
(3)[信頼の名前]を入力。
(4)[信頼の方向]では[一方向 入力方向]を選択。
(5)[信頼パスワード]を入力。
(6)信頼の設定を確認して[次へ]をクリック。
(7)信頼関係が作成された。
(8)[確認しない]を選択する。
(9)[新しい信頼ウィザード]の完了。
(10)作成された信頼関係が表示されている。


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図4●移行元(Windows NT)から移行先(Windows 2003)への信頼関係を設定する

 図3では「移行先→移行元」であったが,図4では「移行元→移行先」の信頼関係を結ぶ作業だ。そのためにはWindows NT Server 4.0で操作を行う。スタート・メニューから[プログラム]-[管理ツール]-[ドメインユーザーマネージャ]と選択して実行する。そして図4に従って作業を行う。図4の画面遷移は以下の通り。
(1)ドメインユーザーマネージャで[原則]-[信頼関係]を選択。
(2)ドメインを追加する。
(3)信頼関係を確立したという確認画面。
以上で双方向の信頼関係「移行先←→移行元」が結べたことになる。


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図5●移行元のドメイン管理者グループに移行先のドメイン管理者を追加する

 第3のステップでは「双方のドメイン管理者グループに相手の管理者権限も持たせる」というものだ。まずは,Windows NT Server 4.0側の設定を行う。図4で使って,開いたままになっている[ドメインユーザマネージャ]でドメインを追加する(これが図5)。さらに,Windows Server 2003側の設定を行う。[Active Directoryユーザーとコンピュータ]を開いてドメイン名の下の[Builtin]ノードを広げ,その中のAdministratorsグループに移行元ドメインの管理者グループを追加する[domain\Domain Admins]。


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図6●ドメインのPDC上のレジストリを編集し,新しくDWORDエントリとして「TcpipClientSupport」を追加する

 移行前の準備作業は,最後の第4ステップに入った。ここではプライマリ・ドメイン・コントローラであるWindows NT Server 4.0(移行元ドメイン)のレジストリを編集する作業だ。ここでTCP/IPネットワークを使ったクライアントをサポートするように設定する必要がある。Windows NTでレジストリ・エディタを起動して編集している画面が図6である(画面1点)。画面の中で,「HKEY_LOCAL_MACHINE\ SYSTEM\ CurrentControlSet\ Contol\ Lsa」というサブキーで,DWORDエントリとして「TcpipClientSupport」を追加する。エントリの値を「1」に設定し,ドメイン・コントローラに再起動をかける。以上で,移行前に必要な準備作業の4つのステップが終わった。


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図7●「ユーザーアカウントの移行ウィザード」の操作

 次は実際にADMTを実行して移行の中心になる作業を行う。先ほど,ADMTをインストールした移行先のWindows Server 2003で,スタート・メニューから[Active Directory移行ツール]を実行して,ADMTを起動する。ここには,「グループ・マッピングおよび結合」や「Exchangeディレクトリの移行」など,11種類ものウィザードが収録されている。この中からADMT 2.0のメイン機能である「ユーザー・アカウントの移行ウィザード」を実行してみよう。画面遷移は図7の通りになる(画面18点)。
(1)ユーザーアカウントの移行ウィザードを起動。
(2)「ユーザーアカウントの移行ウィザード」起動画面。
(3)テスト・モードを選択。
(4)[移行元ドメイン]と[移行先ドメイン]を入力。
(5)移行するユーザー・アカウントを選択。[追加]をクリックする。
(6)追加するユーザーを入力する。
(7)ユーザーが追加された。
(8)移行先のOUを入力。
(9)移行先のコンテナを選択。
(10)移行先OUの識別名が入力された。
(11)パスワードの種類を選択。ここでは[複雑なパスワード]を選択している。
(12)移行した後の状態を設定する。[移行先を移行元と同じ状態にする]オプションをおすすめする。
(13)移行元の管理者のアクセス許可を入力する。
(14)他のユーザー・オプションが設定できる。
(15)移行先ドメインの既存アカウントと重複するユーザー名だった場合に用いられるリネーム用のオプションを設定する。
(16)移行ウィザードを完了し,実行する。
(17)移行作業が進行中。
(18)移行作業が完了した。


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図8●「ADMTパスワード移行DLL」のインストール

 新版のADMT 2.0になって追加された機能を試そう。ユーザーのパスワードの移行である。第1に,移行先ドメイン(Windows Server 2003)でEveryoneグループに匿名ユーザーを含める(操作方法は本誌2004年2月号p.60を参照のこと)。第2に,移行先ドメインのドメイン・コントローラ上でコマンド操作によって「パスワード・キー・ファイル」を生成する(操作法は本誌参照)。第3に,移行元ドメイン(Windows NT Server 4.0)と移行先ドメインの両方に「Internet Explorer高度暗号化パック」を導入する。第4に,ようやくADMTのパスワード移行ツールを使う。Windows Server 2003のCD-ROMのADMTが入っていたフォルダの「pwdmig」フォルダにある「pwdmig.exe」を実行する(移行元がWindows 2000/2003のときは,pwdmig.msiを使う)。図8に画面遷移を掲載する。以下のような6点の画像がある。
(1)インストールウィザードの開始。
(2)暗号化キーを選択する。
(3)暗号化キーのパスワードを指定。
(4)インストールの開始。
(5)インストールの完了。
(6)インストールの完了後,レジストリエディタでAllowPasswordのDWORD値を「1」にする。
以上で,パスワードも含めてアカウントの移行が完了する。