■マイクロソフトは2005年5月24日,AMD64やIntel Extended Memory 64 Technology(EM64T)などの64ビット・アーキテクチャのプロセッサ向けとして,64ビットWindowsである「Windows XP Professional x64 Edition」と「Windows Server 2003 x64 Edition」を発表した。
■日経Windowsプロでは,米Advanced Micro Devices(AMD)でEnterprise Software Strategy部門に所属するマーガレット・ルイス氏にインタビューを行った。この中で「Windows x64 Editionは,AMD64にスペシャル・チューニングされている。x64 Editionを使うのであれば,AMD64のプロセッサだ」と主張した。

(聞き手 中田 敦=日経Windowsプロ)


Margaret Lewis氏

――――AMDは以前から「Windows x64 EditionがAMD64にチューニングされている」と主張していますが,その根拠は?

[Margaret Lewis氏] x64 Editionがデフォルトで「NUMA(Non-Uniform Memory Access)」をサポートしていることでしょうね。

 AMD64は従来のx86プロセッサとは異なってフロント・サイド・バスを持たず,メモリー・コントローラをプロセッサに内蔵しています。またプロセッサ同士は,「HyperTransport」という高速バスで直結されているのです。AMD64のこのようなアーキテクチャは「NUMA」というもので,マルチプロセッサ構成において,それぞれのプロセッサがローカル・メモリーを保有する方式です。

 一方,現在のマルチプロセッサの主流である「対称型マルチプロセッサ(SMP)」は,各プロセッサがメイン・メモリーを共有し,共通のバスを経由してメモリーにアクセスする方式です。各プロセッサはローカル・メモリーを持たない。

 AMD64をマルチプロセッサ構成にした場合,メイン・メモリーは各プロセッサにじかにつながっています。他のプロセッサが抱えるメモリーにアクセスする場合は,HyperTransportを経由するので,どんな方式かといえば,確かにNUMAです。

――――NUMAにはどんな利点があるのでしょうか。

[Lewis氏] NUMAは,プロセッサ数が増えたとしても,ローカル・メモリーにアクセスする限り,メモリー・アクセスに遅延が起きないことです。もっとも,他のプロセッサが抱えるメモリーにアクセスする場合は,遅延が発生しやすくなる。NUMAの利点を生かすためには,各プロセッサ上で走っているスレッドのメモリー領域が,各プロセッサのローカル・メモリーに確保されるよう,ソフトウエアでの対応が必要なことです。

――――32ビット版のWindows Server 2003では,上位バージョンの「Enterprise Edition」と「Datacenter Edition」しか,NUMAに対応していませんでしたが…

[Lewis氏] x64 Editionの場合は違いますよ。Windows Server 2003の全Editionだけでなく,Windows XP ProfessionalでもNUMAに対応しています。

 Windows x64 Editionは,AMD64にスペシャル・チューニングされています。その最大のものが,デフォルトでNUMAをサポートしていることなのです。これを推進したのは(Windows NTの初代アーキテクトであり,AMD64やWindows x64 Editionの開発に深くかかわったとされる)David Cutler氏のチームなのですよ。

――――AMDは2005年4月に,デュアル・コアのAMD64を発表していますね。

[Lewis氏] NUMAはプロセッサ同士のアーキテクチャです。一方,デュアル・コアは1つのプロセッサの中のアーキテクチャです。AMD64は元々デュアル・コアを想定して設計されています。デュアル・コアになっても消費電力量がシングル・コア時と同じです。データ・センターのような,電力消費量を抑えなければならないユーザーにとって,AMD64デュアル・コアは非常に魅力的な製品です。



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