■最終回は,いよいよLonghorn Serverの新機能の話だ。ダイナミック・パーティショニングとVirtual Serverの組み合わせによって,ハードもOSも動的に付け替える環境ができる。
(第4回はこちら)
Longhorn Serverへの長い道のり [Muglia]さて,Longhornサーバーにはたくさんの変更はありません。Longhornクライアントとサーバーを一緒に作っているところです。Longhornで狙っているのは,アプリケーション開発用プラットフォームを完全に新しい世代にすることです。 それはIIS(Internet Information Services)の新版を備え,もちろん「Indigo」(Webサービスのプラットフォーム)はこのタイムフレームで動きます。われわれは,WebサービスとWS(Webサービス)プロトコルに集中するつもりです。 Longhornでは管理しやすさを向上させるために,たくさんの作業をしていますが,実際にはDynamic Systems Initiative(DSI)でやったことの延長になります。コマンド・ライン・シェルとスクリプティングでは,かなりの進歩を狙っていますし,Microsoft Script Host環境の「Monad」(現在はベータ版)への取り組みに沿って,どうコマンドをスクリプト化するか考え続けています。新しいイベント通知サブシステムも作り,この環境の中でエンドノードの管理性を向上させるものをたくさん作りました。 DSIについては,MOM(Microsoft Operations Manager)とSMS(Systems Management Server) 2003,そしてまもなく登場するMOM 2005の中のDSIに,今あるいくつかのコンポーネントを入れます。 2005年に「Whidbey」(Visual Studio 2005と.NET Framework 2.0)を出荷しますが,これはSystem Definition Model(SDM)を作るツール・セットです。 2006年にはSDMを活用するバージョンの「System Center」を作って,クロス・システムの管理の観点から,適切な状態管理を許す方向に移行させます。 その後に出るLonghorn Serverでは,エンドノード管理にもっと注力して,DSIモデル全般にかかわるエンドノードの管理を容易にします。そういったものは,すべて互いをベースにビルドされます。長い時間がかかる仕事ですが,すべてのステップの途中で進歩の様子を見られるでしょう。 ほかにも基本的な部分では,IPv6のサポートや,Windows Server 2003とのアプリケーション互換性に注意しています。ただし,これはメジャー・リリースなので,アプリケーションの互換性に関して私が把握していることは,R2での互換性よりも,いくぶん不明確です。ハードウエア・サポートも全く新しい世代に変わります。
ダイナミック・パーティショニングが組み込まれる [Muglia]ほかには,ダイナミック・パーティショニングをサポートするつもりです。これはメインフレーム・クラスのシステムによくあるもので,最近ではItaniumのシステムでも同様なものがあります。プロセッサが障害を起こした場合,アプリケーションを停止させることなくプロセッサを交換できます。 例えば,稼働しているサーバー・アプリケーションがあるとしましょう。今日では,Windows Serverを動かして,そこにSQL Serverを導入すれば,サーバーが実装しているどのプロセッサも専有できます。ダイナミック・パーティショニングがあると,例えばこのSQL Serverは,4つのプロセッサを使えるだけですが,後からあなたが2つのプロセッサを追加したいと思ったら,SQL Serverはそれを利用できます。 また,それ以後に,1つのプロセッサが故障したら,自動的に切り替えられます。ボードを実際に引き抜いて交換し,それからもう一度そのプロセッサが使えるようにできます。 ————私はそういうことは全くやりませんね。ホットスワップには慣れていません。 [Muglia]しかし,一般にはやります。みんなリブートするときに,これをやってますよ。きっと,やりたいとは思ってないでしょうけどね。 ————ダイナミック・パーティショニングは,Virtual Server環境でも実際には動作可能なはずです。 [Muglia]ええ,Virtual Serverと一緒に使うと面白いです。Virtual Serverは,物理的なマシンを異なるバーチャル・マシンに分割できるようにしてくれるからですが,多分そうした場合は,その上でダイナミック・パーティショニングを動かすのです。
ディスクレスのブレード型サーバーに対応 [Muglia]さらにLonghorn Serverは,ディスクレスの起動をサポートしています。今日ブレード・サーバーは,ハードディスクのバックアップを備えていますが,ハードディスクは故障する可能性があり,悩みの種になります。 SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)からの起動と仮想メモリーの割り当ての両方ができるようにしたいなら,このサポートがそれを提供します。ブート可能なイメージを作れますし,SAN環境から完全に切り離せますから,ブレード自体にハードディスクは必要ありません。これは停止率を劇的に下げるでしょう。私はこの機能が大好きです。一番のお気に入りですね。 それとストレージですが,私はストレージが好きです。 ————本当ですか? ほーっ。私は何と言えばいいのかな。(大笑い)ごめんなさい。私の見たところ,ダイナミックな感じはしないのですが… [Muglia]いいですか。面白いことはストレージ産業が「ムーアの法則」以上に,大きくなり続けているということです。携帯機器にテラバイト級の記憶装置をどう搭載するか考えてみてください。その意味は,驚くべきものだと思います。それにそれはそんなに先のことじゃありませんよ。 ————なるほど,私のポケットPCは,私が手に入れた最初のPCの32倍のストレージを搭載していますしね。 [Muglia]きっとそうでしょう,最低でもね。きっと64Kバイトのメモリーを搭載した初期のPCのどれかを買えたはずです。私の最初のPCは256Kバイトのメモリーを搭載していました。そしてフロッピ・ディスクは384Kバイトでした。そんなもんです。 ————これであなたがやったことは終わりですか?(大笑い) [Muglia]お望みならもっとストレージについて話しましょうか。 ————そうすると,ややこしい話が始まっちゃいますよ。でもまじめな話,最後にこの話をしてくれてありがたく思います。 [Muglia]私も同じです。マーケティング担当者もみんなそうでしょう。彼らはこう言っていますもん。「Bobは過去4カ月間おれの口にガムテープを張っていたんだ」って。
2001年にBlackcomb Server [Muglia]この世界で,この仕事で素晴らしいことの1つは,私のお客さんのみんなが「新しい機能なんて何もいらない」とは言わないことです。彼らは「なんでこれはおしまいなの」とか「なんであれはおしまいなの」とか「なんでこれをやってないの」とか「なんであれをやらないの」とか言っています。 それだからこそ,この新しいロードマップを見つめるわけです。一定のリリース・サイクルで,一定の革新をする計画を守ろうと,われわれは努力しています。こういったことを,一定の整合性のある方法で,お客さんに提供できます。 ここでは並べませんでしたが,「Blackcomb」というLonghornに続く次のWindowsのメジャー・リリースは,で,今のところ2011年出荷の予定です。Blackcombが備える特徴についても考えられています。私は,R2にどんな機能が入るか知っており,さらにLonghorn Serverにどんな機能が入るか知っていて,Longhorn Server Updateにどんな機能が入るかもかなり正確に分かっていますし,Blackcombに入るかもしれないものも分かっています。 ————Blackcombは次のメジャー・リリースでしたね。 [Muglia]その通り。次のメジャー・リリースで,Longhorn Serverの4年後です。Longhornがはるか未来のもののように思うかもしれませんが,長い時間がどんなに早く過ぎ去るかを知れば,ショックを受けるでしょう。Indigoなどのことを考えると,その開発にはほぼ4年が必要です。それにこうした大きな革新のいくつかが市場に出るまでは,長い時間がかかることもご存知でしょう。特に,企業の環境では,製品が成熟することと有効性の立証が期待されます。 ————私は何が起こっているか知りたがる読者からたくさん質問を受けます。あなた方がクライアント製品について,様々な理由でかなり秘密にしていることを知っています。しかし,ビジネスをしている側から見れば,特にロードマップがどうなるかを知るのは役に立つのです。今回,こういう風に明快に説明していただくのは素晴らしいことです。 [Muglia]良かった,そう聞くと私もうれしいです。 われわれの顧客が本当に必要としているものだと私は思っています。現実にはわれわれの平均的な顧客は今,Windows Server 2003の配備を始めているところです。顧客たちは,いくつか導入を進めていますが,決して完全に切り替えたわけではありません。彼らは移行の最中です。まだ少数のWindows NT 4.0マシンを持っているかもしれません。Windows 2000は既に顧客のかなりの数が導入しています。Windows Server 2003へのものすごい切り替えも見かけますけどね。
ある製品が出荷されてからアップグレード率が最高に達するまでには,ほぼ2年かかります。ですから,顧客を技術的に進んだものに移行させるのに,時間が非常にかかるのです。そして,彼らは将来に期待し,さらに長い時間の単位で新しいものがいつ登場するかを知りたいと思っています。 |