インタビューは一触即発の雰囲気へ突入!
[Paul]正直にいえばWindows XPの時でさえ,外の世界では「Microsoftはフィードバックを見ておらず,彼らはこれをユーザーの正面に突きつけているだけだ」と認識されていました。実際にはもっと否定的でしたかね。世間の人々は,あなたがたがそんなことを考えているとは全く思わず,むしろあなたがたのことを……。

[Hillel]おっと,人々はそう考えていると。私たちがだましていると思っていると。そういうわけだね。

[Paul]全く。ねえ,Windows XPの話の観点を変えましょう。現実にこれらの製品に込められたいくつかの考え方と,想像以上に実現できたことに,興味があります。

[Hillel]その話は続けようよ。

 われわれは挑戦してはいるが,もっとうまくやれるはずだと。それについては合意できるよね。そして,今度Longhornではうまく表に出せるし,今やっていることを以前よりもオープンにできると私は思っている。

[Joseph]あなたは話をする時に,だんだん胎児みたいに丸くなるように思えます。(笑)

[Paul]フリークっぽい元Mac屋がLonghornをやっているんだもの……(大笑い)

[Hillel]私たちは人々が言っていることを理解することに関心がある。Microsoftは人々の声に耳を傾けているし,努力している。人々は,開発プロセスの初期段階で,自分たちの考えを知らせることもできる。私たちは意見を拒絶するつもりはないよ。

[Paul]人々はその見解にすぐ抵抗するんですよね……。私はこういうときそれを「一般的な知識」と呼んでいます。本当じゃないけど,皆が本当だと信じている。人々はWindows UIが競合製品よりどんな場面でも,よりうまく働くと思いたがっている。

 私はWindows XPのUIについて,いろいろ記事を書いたことがあります。それは面白かったですよ。この広範に染み付いたこの理解を克服することはとても難しいし,いつも失望させられます。私がよく非難されるようなMicrosoftびいきの人間だからではなくて,私は何が本当に起こっているかをよく知っているからだと思っています。

[Hillel]できるだけ多くの人に,僕らの仕事と名前と顔を一緒に覚えてもらおうと思っているけど,その理由は,私たちが直面している誤解と戦う唯一の方法だと気づいたからなんだ。こういう方法しかないと思うんだ。

[Paul]確かにそうです。

[Hillel]私は飛行機で,隣の座席の人と話をすると,彼らはこんな風なんだ。

 「やあ,あなたはとてもいい人だ。Microsoftで働くなんてなかなかできるものじゃないでしょう。あなたは私が想っていたような悪人じゃない。分からず屋でも,尊大でもない」ってね。それがね,私ができる限りチームにいるたくさんの人の名前と顔を覚えてもらうことに躍起になっている理由なんだ。みなさんは私たちのうちの2人のことは分かってもらえたと思う。しかし,他のビルの中には,今このときにも忙しく働いている連中がいるんだ。

(次のキャンパスの訪問の計画が立てられているが,それはユーザー・エクスペリエンス・チームとのグループ・セッション,視察などを含む予定だ)

再び深く潜行する開発チーム
[Paul]OK,それでPDC以来何が起きたんですか?

[Hillel]私たちはこの妙なインタビューを受けているけど,早く出すぎたね。正直にいって手持ち無沙汰に感じている。もっと新しいものを共有できたらよかったと思うのだけど,そうじゃないんだ。しかし告白するが,Microsoftを私が愛している理由の1つは,今まで私が見た中では一番自分を厳しくむち打つ会社だということだ。ここにいる人間はまさしく……実のところちょっとやりすぎだと私は思うが。私たちはいつも自分自身に対して大きな反感を持っている。おお,なんてひどいやつだ。うーん。

 私たちは自分たちのチームと2週間前にミーティングをして,こんなことを言った。われわれがやり遂げたことを熟慮するよい方法はないか。自分自身を責めるんじゃなくってね。そして時々自分たちに問題がないことを思い出すのに時間をかけようとする。私たちはより効率的にやれたか?きっとそうだ。

 私たちはもう少し早くことを進められたか?そうしたいと切に思うよ,もっと早くやる方法があるはずだから。一方で,たまには自分たちがやっていることは難しいことなんだと思い起こす必要もある。そして,自分の背中を叩くとか,自分たちの努力をほめるようなことは言えないけどね。

 しかし,なぜかといえば,率直に言ってそれは挑戦することだからだ。それが深く考えるということだからだ。私たちは,表面的なUIを高速化できたはずだ。そしてそれをやったと考えている。

 悪い意味で「表面的な」といったのではない。MSN Explorerを見てほしい。僕らは9カ月から12カ月で,それらを出荷したのだ,ビュンビュンビューンと。急にあなたがたはMSNの真新しいシェルを手にしたわけだ。僕らは誇りに思うし,とてもクールだと思う。美しいUIだし,シンプルだし,発見的で,すべてが適切なものだ。しかし,それはこの自己完結したMSNのものだった。

 私たちは今Windowsのことをやっている。ねぇ君,僕らは現実的でいたいが,高い抱負も持っている。あなたが現実にPDCで見たものすべてを作るのに,今私たちは努力しているんだよ。

[Tjeerd]僕らがPDCで見せたものはもちろん本物だった。僕らはそれこそまだ製品には入っていないものの設計作業,コーディングなどをたくさんやった。僕らがPDCで見せたものは本物だったが,社内の多くの人にとっては新しいものだった。僕らが取り組んでいるものの多くはまだより広範なビルドには入っていない。それらはまだ僕らのチームの外には出さないでいます。

[Paul]ええ,あなたたちはそういうものを扱うのがとても上手になりましたよね。でも私にとっては困ったことですが。(笑い)

[Greg]今回僕らは情報の開示に関しては,本当に突出したんだ。正しかったにせよ,誤りだったにせよ,あのレベルの情報開示を続けることになるだろうね。多分僕らはよりよい予想ができたはずだ。

[Paul]まあ,あなたがたはよい理由のために,これまでのところ進んでこれをしたわけです。しかし,現状は止まっていて困っています。僕らはもっと多くの情報があることを望んでいます。

[Greg]それはもろ刃の剣のもう片方だ。あなたはそれをもっとよくしたいと思い,業界に対してビルドしたプラットフォームを与えたいと思う。

 MSNシェルとの違いは,Windowsではビルドするために必要な部品は,それに依存するほかの部品もすべてを持っていることだ。MSNは単にアプリケーションだったからね。

(Hillel氏は,MicrosoftがPDCで見せた,Longhornのユーザー・エクスペリエンスにつながるデザイン作業を要約したビデオを流した)

徹底的に美的感覚を調査して
デザイン方針を決める

[Tjeerd]大抵の人々は単に最終結果を見るだけで,決してそれに注がれた努力を見ないよね。僕たちも社内でその問題を抱えているよ。

[Hillel]まだやるべきことがあって,終着点には近付いていない。

[Tjeerd]デザインに関して自分たちがやろうとしていることは,何かを最初に定義するプロセスを持っているということなんだ。

[Hillel]ほぼ1年前に,設計担当チームは徹底的な美的感覚に関する調査をした。私たちが採用するべき方向は,何かを試して見つけるために作られた何千というイメージがあった。究極的には,自分たちが感じた何かが,2年間は十分持つようにと思った。すぐには出荷されないからね。それで私たちは最先端の水準を定義しなければならなかった。

[Tjeerd]僕らは見つけようとしているんですよ,プロ向けに設計された,美しい外観を……。そして僕らは信じられないような品質を備えた,非常に高解像度で広画角の縦横比を持つモニター向けに特別に設計をしています。

[Hillel]最初のころ,私たちのユーザー・エクスペリエンスの調査は非常に広範囲だったが,進む方向が決まった途端に,非常に深いところに私たちは進み始めたよ。

[Tjeerd]製品設計の大部分は,どのようにことが運ぶのかと,どんなフローかを考えることです。

 それから特にルック・アンド・フィールについて考える人をたくさん抱えている。初期に作られるものはすべて静止画だった。つまりスクリーン・ショットだ。しかし,今ではどう動くかに関して個々の作業があって,それは,どんな種類のアニメーションが実際に適当かとか,僕らはユーザーに対してその動きが何を言うようにしたいのか,とかいうことを考えているんだ。

 僕らの流儀でいう,共有された関係に対する「機能的な側面」や「情緒的な側面」,「ユーザー・エクスペリエンス」がある。僕らは実際にアニメーションになるプロトタイプを持っていて,そしてそこでフィールの部分の多くは試せるようになる。こうしたものをオンスクリーンで操作している感覚を実際に得られるんだ。

98からいきなりLonghornへ行くより
まずはXPを使ったほうがいい

[Paul]今私は自分がPDCで経験したのと同じ不安な感じを抱いています。

[Hillel]何を不安に感じているの?

[Paul]将来登場するものはとても面白そうですが,おかげで今使っているものがつまらなくなるんです。

[Hillel]うむ,それは私たちが実際にそれを表に出すのを嫌っている理由の一部だな。大抵の人にとっては,今でもWindows 9xを動かしている人はまだたくさんいるからね。

 Windows XPは昔のWindows 9xに比べて,大幅に改良されるから,彼らにはLonghornをぶつける前に,前もってWindows XPへ移行してもらいたい。

 自分たちがやっている一つひとつのものすべてに関して,詳細をみんなに話し,みんなの意見を聞いて,フィードバックをもらう。そういったことに夢中になるより,ほかにするべきことはない。まさにそれは……

[Paul]Gregさんが今やっているような……。(大笑い)

[Hillel]Gregがカメラやマイクロホンを持たないで部屋を離れると思う?

[Greg]Windows XPがどんなによくなったかを考えもせず,Windows 98をまだ動かしているとんでもない数の人々がいるので,Windows XPで既に修正したことなのに,それに毎日悩まされています。僕らはそういったストーリをまだ語ろうとしている。

[Hillel]私たちは彼らには楽しめるステップを逃さないでほしいと思っている。

[Tjeerd]しかし私はあなたの欲求不満も分かっている。僕らみんなにやる気を起こさせるのに大事なのは,どれほどXPがよいものかには関係なく,まだたくさんの(セキュリティ)ホールや,もっとよくなるはずだとすぐに分かるものが残っている,ということだ。

[Paul]われわれはこれまでの10年間,素晴らしい進化の過程に落ち着いていました。私はAmigaユーザーだったし,Windows 95が出て,Windowsに興奮を覚えた。Windows 95は考えてみる価値があると思った最初のバージョンのWindowsだった。

[Tjeerd]僕はCommodore 64ユーザーだったよ。

[Hillel]私はAtari 800を持っていた。

[Paul]後で討論会が開けますね。でも私はC64も持っていたっけ……。(大笑い)

(会話は予想通りテーマを外れて80年代のコンピュータ・システムに移った)

[Tjeerd]僕が言おうとしていたことはそれだ。Windows XPはその地盤と基礎構造が大変素晴らしく,その中にはよい相互作用があり,僕らは大変上手に全部のことをやり遂げた。

 しかしその製品が本当に美的な感覚にどんな印象を残すか,そしてどのくらいうまく統合され,慎重に作られたように見えるかといった点では,それはきっとその水準の品質に到達していない。こうしたビデオの中にあるLonghornのUIのプロトタイプの画像を見ると,あなたがたは「やったあ」と声を上げるだろう。それが世界でも最良のオペレーティング・システムに私が期待している品質なんだ。それは私が物事はこう見えるべきだと思っている,まさにそのものだ。

[Hillel]ただし,繰り返すが,Windows 9xと比較してWindows XPは美しいよ。

[Tjeerd]ええ,その通りです。

[Hillel]XPが最初だった……。XPは私に自分のMacを使うのをやめさせたんだ。正しい?

 私はここでしばらくの間Windowsに取り組んだが,自宅ではまだMacとWindowsの両方を持っていた。両方とも使っていたんだ。私は自分の写真やなんかをすべて自分のMac上で処理させていて,PCでは他のものを処理させていた。でも,私のPCのほうがちょっと高速だった。それでその後にXPが出たので,わーっと思ったんだ。そして,私はMacを使うのを止めた。そういうことさ。

[Tjeerd]あなただけじゃないでしょうね。

[Joseph]私はXPが出たときにMacを使うのを止めたMacユーザーをたくさん知っていますよ。

[Tjeerd]ご覧なさい。AppleはOS Xではすごい仕事をしたよ。彼らはいくつかよいものをそこで実現したね。僕らは気に入っているよ,この……競合が。(大笑い)

(話題はうるさい「ぺこぺこするOS Xのドック・アイコン」の効果に戻る)

[Tjeerd]Mac OS Xのドックにあるものすべてが,僕にとってはちゃち過ぎるね……

[Paul]まあ,XPだって似たような効果を持つところでしたからね。タスク・バーのボタンは,あなたが触るまで,オレンジ色をずーっとフラッシュさせるつもりだった。テストの最中にあまりにもうるさ過ぎるとみんなが文句を言ったから,3回フラッシュするだけで止まるようにしたでしょう。

[Joseph]それはうまく溶け込ませることと目立たせることをバランスさせたよい例ですね。

[Hillel]おかしいね,私たちはちょっと近視眼的な見方をしているようだ。なぜならユーザーがそれを確実に見られるようにしたいし,私たちは彼らが機会を逃すことは望まないし,良くない所に入りたいとは思わないし……。あなたがたはそんな父親みたいな態度を取るのを止めることだ。過保護にすることはできない。ここではみんな大人なんだから。ツールを与えて自分のことをやらせなさい。難しいバランスだ。