(Paul Thurrott)

 中規模市場は不思議な市場だ。規模や売り上げで見れば最大のビジネス市場ではないが,一定の大きさの市場ではある。私が思うに,「Windows IT Pro Magazine」(日経Windowsプロの翻訳提携誌)の読者のうち,かなりのパーセンテージを占めるのではないだろうか。Microsoftは,その企業ユーザーの意を汲むために様々な手を使っている。

 中規模ビジネス(あるいは中規模の企業と言われる会社)は何であるかを定義するために,Microsoftは接続されているPCを数えている。接続されたPCが25台以下なら小規模なビジネスということになる。500台以上のPCがあれば大規模の企業ユーザーになる。中規模の区分は,それらの間にあるビジネスのことを指す。

規模で異なるIT担当者の役割
 Microsoftは各区分にどのくらいの数のユーザーを抱えているのだろうか。同社によると,小規模ビジネスは最低でも4000万,中規模ビジネスは120万,世界的な大規模企業は1万8000――であるという。

 こうした市場区分を区別するもう1つ重要な方法がある。小規模ビジネスは当然ながらあまり多くのIT担当者を抱えておらず,サーバーのメンテナンスをアウトソースしていることもよくある。中規模の会社は,小規模なIT担当グループを持つが,その人たちは問題の原因を探るのに手一杯で,技術的なアップグレードを計画したり配備したりする暇があまりない。ハイエンドなシステムを持つ大規模企業は,単に有能な専門のIT担当者を抱えているだけでなく,彼らはそれぞれデータベースや電子メールのような特定の技術に通じた特殊な技能を持っているのが普通である。

 大半の方は,Microsoftが小規模企業用に「Windows Small Business Server 2003(SBS 2003)」を提供していることをご存知のはずだ。この製品は,「Windows Server 2003」に「Exchange Server 2003」と「ISA Server 2004」,さらにハイエンド版では「SQL Server 2000」を緊密に結合した,インストールや管理のしやすいパッケージである。SBSをリモートからも管理しやすくすることで,Microsoftはそれをパートナにとっても新たな売り上げが見込めるものにした。

 大規模企業には,Microsoftは各製品の完全なスイートを提供している。その中には,特定のハイエンドの顧客のニーズを満たす,様々なニッチな製品を含んでいる。こうした製品はSBSバンドル版とは異なり,手間のかかからない技術を提供するのではなく,よく訓練されたIT担当者の手で統合されなければならない。

中規模ユーザー向けにWSSを割引販売
 Microsoftは7月7日,小規模企業向けにSBSを提供したのと同様な目的で,中規模企業向けのパッケージ「Windows Server System promotion」を発表した。しかし,Microsoftの中規模市場への対応には,SBSが備えるような強化された管理ツール群が付属するわけではない。その代わりにMicrosoftは,様々なWindows Server System(WSS)製品に関する取引条件を用意しており,バンドルされた製品に20%の割引をしている。さらに,こうした製品への移行,配備,維持のためのガイダンスも提供している。

 このバンドルはいい提案であり,きっと多くのユーザーがこれらの製品すべてを手に入れたいと思っているだろう。この製品のバンドル版「Windows Server System for Medium Businesses」で得られるものは次の通りだ。

・「Windows Server 2003,Standard Edition」のライセンス3本,
・「Exchange 2003 Standard Edition」のライセンス1本,
・「Microsoft Operations Management(MOM)2005 Workgroup Edition」のライセンス1本,
・WindowsとExchange用のCALが50ユーザー分

 価格は,米国内で約6400ドルと個別の製品の通常のオープン・ライセンス価格に比べて20%ほど安い。さらに,この新しい組み合わせのCALを,250本までなら1本76ドルで購入できるし,またはWindowsとExchangeのCALを個別に通常の20%安で購入できる。これもやはりいい提案だ。

IT担当者向けガイダンスも提供
 先に触れたように,中規模の企業が直面している最大の問題は,恐らくほとんどが少数のIT担当者しかおらず,トラブルの原因究明で一杯いっぱいになっていること。そして,将来のアップグレードの計画を先取りして立てられないことだ。彼らは,クラッシュしたサーバーをリブートしたり,ユーザーのデスクトップの問題解決などに追われている。彼らはOS/アプリにパッチを適用し,Windows NT 4.0とExchange 5.5の組み合わせのような古いシステムをメンテナンスしている。つまり彼らの日常は,非常に不愉快な作業の連続だ。価格を下げただけでは,そうした人々にアップグレードする気にさせるには不十分なのである。

 幸いなことに,Microsoftは役に立つ模範的なガイダンスをたくさんもっている。それはあなたのインフラを詳しく調べ,どこから手をつけ始めて,まずどの製品をインストールして広めるかを決定するのに役に立つ。この情報は不幸なことに今はMidsize Business IT Centerという新しいTechNet Webサイトと,これから出版される「Windows Server System Deployment Guide for Midsized Businesses」というMicrosoft Pressの本でしか見つからないはずだ。私はこのソフトウエアの将来の世代は,導入からIT担当者をインテリジェントに手伝えるように,その製品群に模範的なガイダンスを直接組み込んでおいてほしいと思う。

 だが,こういうタイプのヘルプが提供されるのは,恐らく数年先のことだ。だから中規模の企業は,MicrosoftがSBSで提供しているような素晴らしい管理ツールの恩恵は受けられないのだが,少なくともお金をいくらか節約できるし,ちょっとの努力で賢い移行戦略を立案できるはずだ。小規模な企業が,この数年享受してきたサービスの活用も始められるはずだ。中規模の企業は,特定のIT管理作業を,顧客の代わりにそのインフラをリモートで監視できる,Microsoftのサービス指向のパートナにアウトソースできる。私は今から1年でどのくらいの数の中規模の企業がこの道を選ぶことにするかに興味がある。

 いずれにしても,これは中規模企業が直面する問題への何段階かにわたる最初の対策になる。あまり速くは進まないようだ。