(Paul Thurrott)

 米MicrosoftでInternet Explorer(IE)開発部門のリード・プログラム・マネージャを務めるChris Wilson氏が,IE 7.0の製品版にはどのような技術的な改善が追加されるのか,彼のブログで明らかにし始めた(該当サイト)。

 改善点のほとんどは,IEのCSS(カスケーディング・スタイル・シーツ)の実装に関連するバグの修正である。CSSは,Web開発者がWebサイトを制作するときのデザイン技術である。なおWilson氏によれば,CSSの実装に関するバグの多くは,IE 7.0のベータ1ではまだ修正されていないという。

 Wilson氏のブログの内容は,IE 7.0に関する深刻な疑問を呼び起こしている。IE 7.0ベータ1に,多くのWeb開発者が求める修正が含まれないのであれば,Microsoftはなぜ,IE 7.0のベータ1を,元々公約していた一般公開ではなく,少数のWeb開発者やテスターにだけリリースしたのであろうか。

 またWilson氏のブログの内容は,人々を落胆させている。なぜならMicrosoftは,IE 7.0において最新のCSS標準を完全にサポートするつもりがないからだ。IE 7.0は今後も,既に確立されたWebの標準を使うのではなく,Web開発者にとって厄介な存在でしかないメーカー独自の技術を使い続けることになる。Web開発者はこれからも,Microsoft基準に準拠するか,Web標準に準拠するか悩み続けることになるだろう。

 Wilson氏はブログでこう述べている。「IE 7.0では,Web開発者を悩ませている最悪のバグを可能な限り修正し,Web標準の観点から強く求められている重要な機能を追加します。われわれの意図は,特に「CSS 2」のような適切なWeb標準に完全に準拠したプラットフォームを開発することです。私は,ユーザーやWeb開発者を苦しめているバグを取り除くというゴールにたどり着くことで,IEを大きく改善できると思っています」。

 Wilson氏のブログ記事で最も重要なことは,Microsoftが「Acid2」という非常に厳格なブラウザ適合性テストを無視すると公式に認めたことだ。Acid2とは,ブラウザ・ベンダーがWeb標準を正しくサポートできるように,Web Standards Project(WaSP)という団体によってデザインされた規格である。

 しかし,MicrosoftはWaSPと意見が異なるようだ。「Acid2は,適合性テストとしては不適当です」とWilson氏は,Acid2のWebサイトに書いてある内容と逆のことを述べている。「Acid2は『ウィッシュ・リスト』のようなものであり,われわれのチームにとって真に重要かつ有用ではあるのですが,私の理解では,IE 7.0の優先リストとするには,ふさわしくないと思われます」とWilson氏は述べている。しかし,他のブラウザ開発者は,Acid2に適合するように非常に努力している。

 Microsoftは,Web標準において下位互換性の問題が解決されていないことを批判している。簡潔に言うと,Microsoftは今後も独自の道を歩み続けるだろうし,Microsoftはこれからも非標準のWeb技術を使用するたくさんの開発者をサポートし続けなくてはならない。その理由とは,IEをWeb標準に完全に準拠させたら,既存のIEに特化したWebサイトの半数以上で問題が発生する――ということが起きかねないためだ。Microsoftはかなり長期にわたってIEの開発を中止していたので,Web開発はすっかり停滞してしまっている。

 筆者はIEに否定的な考えだ。IEはセキュアではないし,標準に適合してもいない。ユーザーにとってもWebコンテンツ・クリエイタにとっても生産的ではない。IEはユーザー・ベースがあまりに大きいので,Web開発者はIE向けにWebサイトを開発しなければならない。そういったWebサイトを他のブラウザにも対応させるために,余計な労働を強いられている。ユーザーが別のWebブラウザを使うようになれば,Microsoftの姿勢も変わるだろう。筆者のお薦めはMozillaのFirefoxである。米Apple ComputerのSafariやOpera 8でもいいだろう。