(Paul Thurrott)

 米Microsoftは7月22日(米国時間),開発コード名で「Longhorn」と呼ばれていた次期クライアントOSの製品名を「Windows Vista」にすると正式に発表した(該当サイト)。意表をつかれたのはあなただけではないからご安心を。Microsoft社員の大半も,一般向けのこの発表まで,その名称を知らなかったのである。

社員も当日まで知らなかった
 恐らくみなさんは,Microsoftの販促キャンペーンには慣れているだろう。しかし,同社がWindows Vistaの製品名を従業員とパートナに知らせるときにそれと似たようなことを行ったと聞いたら,面白いと思うに違いない。

 Microsoftの社内文書によると,Windows Vistaという製品名を22日に発表すると決めたのは偶然ではなかった。同社はこれまで何度もLonghornに関する失望の声を突きつけられていた。プロジェクトが完全な破滅に陥りかけたことも何回かあった。

 社内文書には次のように書かれている。「この戦略の目的は,Windows Vistaの本質を伝えて,影響力のある人々やパートナおよび顧客,それにMicrosoftの従業員にそれを実感させることだ。そのため,Beta 1の提供に先駆けて,相手を驚かす仕掛けで期待を盛り上げる。また,(Microsoftは)信頼され続けるために,Beta 1の提供時期を発表する。それにより,当社が開発を進展させていることや約束を果たすことを証明する。さらに,Windows Vista Beta 1は,IT関係者のためのビルドであり,現時点では主に「信頼性」の柱(基礎)の部分にフォーカスしているが,今後多くの要素が追加されることを再確認する」。

 Microsoft社内向けのニューズレターでは,Windows Communicationsのゼネラル・マネージャであるJohn B. Williams氏が社員に対し,Windows Vistaという名前を選んだ経緯を説明している。「この名前にした目的は,この製品が実際に何をするかという点と,市場での位置付けをしっかりと表す点にあった。最初はブレーン・ストーミングから始め,千種類もの名前を考案した。それから調査やレビューを何回か実施して,多数のチームと横断的に行動してリストを絞り込んだ。こうした努力の結果,堅実な最終候補を選び出した」という。

検討された「Seven」「07」「View」
 同社は「Windows Seven」や「Windows 07」という製品名を付けることも検討していた。出荷が2007年に近いからだ。Williams氏によると「最終候補に残ったのは(Sevenや07といった)番号を使う名前と,vistaとかviewなどのようにそれとは異なる方向性の名前だった」。しかし,実際にはLonghornはWindowsバージョン6.0になる予定だった。また,7という番号は「Windows Vista」と同じような情緒的な感覚を出しにくかったので,この選択肢を落とした。

 Williams氏によれば,グループ・バイス・プレジデントのJim Allchin氏が製品名について最終的な発言権を持っていたという。名称変更を担当するマーケティング・チームは,製品名に加えて,背後にある考え方を携え,Allchin氏のところへ向かった。

 「どうすればその製品自体と,それが提供したり付随したりする価値の高さを示せるか。そしてどうすれば競合他社に対して確立したいポジショニングを得られるか。さらに,どうすればWindowsの資産を受け継いでいることやわれわれの強みを発揮し,顧客の反響を得られるのか?そして紆余曲折の末,この名前にたどりついた」(Williams氏)。

「Longhornは忘れ去られるだろう」
 さらに同社は,社員やパートナや顧客が,4年にわたって使われてきた「Longhorn」という名前を忘れるのに苦労すると考えた。「私はこの製品の提供が始まり,一般的に使われるときのことを考えた(Beta 1はまもなく出ることが分かっていた)。そのときVista(未来への予想,展望)という名前なら製品の価値の高さを理解して,自然に移行するだろう」とWilliams氏は語っている。「XPの開発コード名は何だったろうか?」とも述べた。それは「Whistler」だったが,ほとんどのMicrosoftの顧客は(社員も)恐らくそのことを忘れている。

 シニア・バイス・プレジデントのWill Poole氏は,今回の製品名を,最初はパートナのごく一部に告知し,その翌日にWindowsクライアント・ビジネス部門の社員へメールで次のように伝えた。「昨日,ジョージア・ドームでのMicrosoft Global Briefingという会合で,われわれは重要なマイルストーンに達した。われわれは次期クライアントOSの名称Windows Vistaを発表した。弊社のフィールド・セールスとマーケティング・チームは,開発者と顧客とパートナがわれわれとともに進めるように支援してくれた。Beta 1は君たちのおかげで成功するだろう。われわれは皆,Windows Vistaで達成しつつあることを大いに誇りに思うべきである」。

 「この製品名は核心部分とそれが提供する価値の高さを表している。それらすべてがWindows Vistaという2つの単語に込められている。今日,われわれが扱う情報は,通信手段や物事の多様化でますます大量になっている。毎日世界中にいる何百万という人々が,増大するデジタル・ライフの管理をWindowsパソコンに頼っている。デジタル情報を管理するための既存のツールはパワフルだが,今日の世界はよりパワフルなものを求めている。ユーザーは乱雑な状態を整理して重要なことに集中できるよう,PCが進化してくれることを望んでいる。Windows Vistaはあなたの世界に明快さをもたらし,あなたが自信に満ち,明確で,一貫性を保つ助けをする」。彼はそれから社員にWindows Vistaについてより詳しく学ぶための社内のリソースを指示した。

 「われわれは,顧客とパートナに対して,新しい価値を生み出し提供するという自分たちのミッションに忠実だった。Beta 1でこの製品は最初の光を世界に示し始めるが,ほとんどのエンドユーザー向けの特徴は,Beta 2で登場する。われわれは2006年にWindows Vistaを出す予定で動いている」とPoole氏は言っている。