(Paul Thurrott)

 Microsoftは2005年初頭,Officeの次期メジャー・バージョンアップである「Office 12」(開発コード名)開発への道を歩み始めた(既報)。Office 12では,ビジネス向けのコラボレーション機能を再強化する。また,新しい一連のOfficeベースのサーバーが導入され,XML(拡張マークアップ言語)化をさらに後押しするものになる。

 MicrosoftにとってOffice 12のゴールは,従来に比べより基本的でより差し迫ったものだ。これまでのパッとしないアップグレードと激化する競争はもう終わりにして,長年のユーザーをOffice 97から離れさせ,「性能的に十分」という意見を覆し,より広い市場からの要求を満たす統合ソフトを提供する。それがMicrosoftが目指すOffice 12のゴールだ。このプレビューでは,Office 12の詳細なリリース・スケジュールを採り上げ,Office 12の初期プロトタイプや計画を吟味してみたい。

他社製品や自社製品に足を取られるOffice
 米Microsoftはプレッシャーを感じている。一時,OfficeはMicrosoftの収入の50%を生み出していた。ところが,2004年は通年で同社の収入の3分の1にしか達しなかった。金の成る木であったOffice統合ソフトが落ち目になった。また,低価格の「Corel WordPerfect Office 12」や米Sun Microsystemsの「StarOffice(日本名StarSuite)/OpenOffice.org」との競争も,Microsoftにダメージを与え始めている。

 しかし,皮肉なことに最大の敵は,内部的なものなのだ。Office統合ソフトの過去バージョンである「Office 2000」「Office XP」「Office 2003」は,消費者から性能的に十分という評価を受けている。そのため企業は,Officeの新バージョンへのアップグレードを以前ほど頻繁に行わず,ほとんどの場合アップグレードするときにバージョンの1つか2つを省くようになっている。

 Officeのこれまでのバージョンを振り返ってみよう。すると消費者がアップグレードに積極的ではないというのも理解できる。

 「Office 2000」では,広範囲なWebとの統合,複数アイテムを保存するOfficeクリップボード,Wordなどの主要ソフトにおける「シングル・ドキュメント・インターフェース(SDI)」,物議をかもしたパーソナライズ・メニューやツールバー――などが搭載されている。

 2001年にリリースされた「Office XP」では,タスク・ペインやスマート・タグ,連携機能,それにドキュメント・リカバリや信頼性の向上といったものが導入された。

 また「Office 2003」では,Office統合ソフトを多くの製品エディションに分割,XMLベースの文書タイプを追加して,これまでのOfficeの機能をどのように引き出すかについて,基本的な効率化を実施した。これは,Officeに既に搭載されてはいるが,ユーザーがその存在を知らなかった機能へ,より簡単にアクセスする方法を提供することを狙っていた。加えてOffice 2003には,「OneNote」と「InfoPath」という新しい2つのOfficeアプリケーションが追加されたのである。

 ご存知のように,Office統合ソフト自体はOffice 97から大した変化はないと言えるだろう。確かに私のようなハードコアなライターにとっては,それぞれのバージョンでのちょっとした改善は役に立つものであり,アップグレードにも価値を見出せる。バージョンアップされるごとにOutlookは著しく向上した。またOffice 2003の直後にリリースされた「Exchange Server 2003」の「Outlook Web Access(OWA)」機能も良くなった。

 しかし,普通のユーザーにとってはOfficeはあまりにも高価で,アップグレードに必要な莫大な費用を正当化できる理由が少ないのだ。Microsoftがここ数年にわたって,アップグレードのジレンマが悩みの種になっていることにも納得できる。

Office 12はLonghornと一緒に出る
 Microsoftは長きにわたって,Office 12の出荷を次期Windowsの主要アップデートとなる「Longhorn」(開発コード名)のリリースに合わせるか,ほぼ同時期にするように計画してきた。しかし,Longhornは2006年5月に製造工程向けにリリース(RTM)され,下記のように,Office 12は2006年の終わりまで完成しない(編集部注:5月上旬のWinHEC 2005で,Longhornの出荷時期は2006年のホリデー・シーズンになっていた)。私が目を通したいくつかの内部文書によると,Microsoftが実際にLonghornの一般向けリリースを,Office 12の出荷まで遅らせることもあり得るようだ。というのも,Office 12はLonghorn向け製品の重要な構成要素となっているからである。これがどのように展開して行くかは,見守っていかなければならないだろう。ひとまずは,以下がOffice 12のリリース・スケジュールとなっている。

Office 12の一般公開開始:2005年5月
 Microsoftは,2005年5月にOffice の「Wave 12 Pillars」を重要顧客に向けて公開。今までのOfficeバージョンで,最も早い公開となる。
・2005年10月:ベータ1
・2006年の前半:ベータ2(パブリック・ベータとして入手可能)
・2006年中ころ:ベータ3(パブリック・ベータとして入手可能)
・2006年夏終わり:RTM(製造工程向けリリース)
・2006年10月:提供開始

 これまでのOfficeバージョンと同じように,MicrosoftはOffice 12でも高レベルの「ビジョン」を設定し,今回はエンタープライズに焦点を合わせている。具体的には,Office 12は以下で紹介する機能を提供することになる。
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