(Mark Joseph Edwards)

 米Netscape Communicationsは5月19日,Webブラウザの新版「Netscape Browser 8.0」をリリースした。ダウンロードして試用してみたところ,いくつの印象的な機能を備えていることが分かった。そのうちの2つは,非常に価値のある素晴らしい革新的な機能である。

IEとFirefoxのエンジンを使用可能
 第1にNetscape 8.0では,「Mozilla Firefox」と「Internet Explorer(IE)」の両方のレンダリング・エンジンを利用できる。つまり,ネットサーフィンをしているときに,閲覧するサイトによって2つのブラウザを使い分けなくてもよいということだ。例えば,[信頼済みサイト]用にはIEのエンジンを使うが,それ以外のサイトではFirefoxのエンジンを使うように設定できる。[Tools]メニューの[Options]から手動で,各エンジンへ切り替えることもできる。

 第2にNetscape 8.0の設定は,とても簡単だ。特にFirefoxに慣れた人なら。[Option]ダイアログ画面の中は,ほぼ同じである。しかし,FirefoxにはないNetscape 8.0の機能として[Site Control]がある。これは,IEのセキュリティ・ゾーンの考え方によく似ている。Site Controlsを使うと,あなたが訪れるサイトごとにブラウザがどのように動作するかを決める[Master Settings(マスター設定)]を定義できる。

 マスター設定には,[このサイトを信頼する(I Trust This Site)][よく分からない(I'm Not Sure)][このサイトを信頼しない(I Don't Trust This Site)][ローカル・ファイル(Local Files)]の4種類がある。それぞれは,IEのセキュリティ・ゾーンである[信頼済みサイト][インターネット][制限付きサイト][イントラネット]に相当する。Netscape 8.0にある各ゾーンでは様々なWeb機能を,例えばJava,JavaScript,Cookie,ポップアップ・ウインドウ,ActiveXコントロールなどを有効/無効にできる。最後の部分に注目してほしい。なんとNetscape 8.0ではActiveXをサポートしているのだ!

 あなたはゾーンのどれかに自分が追加したサイト用に,サイト単位でマスター設定をカスタマイズできる。ゾーンにサイトを追加するのは簡単だ。ブラウザ内でサイトを開いた後,タブを右クリックして現れたメニューから[Site Controls]を選択すればよい。そうすると,ダイアログ画面を表示するので,その中で閲覧中のサイトを所属させるゾーンを指定して個別に設定を変更できる。デフォルトのレンダリング・エンジンをゾーンごと,またはサイトごとに定義しておくこともできる。

サイトの信頼性評価を委託可能
 3番目の新しいセキュリティ機能([Site Controls]の一部)は[Trust Ratings]だ。この機能を有効にすると,あるWebサイトのコンテンツを信頼すべきかどうかと,そのWebサイトで微妙な情報を入力するのを許可するかどうかの判定を,サード・パーティに委ねることになる。そのサード・パーティは,信頼するサイトと信頼しないサイトのカタログをメンテナンスする。このカタログは,あなたが決めたスケジュールに沿ってブラウザへ自動的にダウンロードされる。例えばそのカタログを毎時,毎日,毎週ごとにリフレッシュできるのだ。[Trust Ratings]に欠けているのは,そのカタログをだれが作ったか,どんな分類基準が使われているか,といった情報と,そのカタログを見る方法だ。この機能は,それがあなたに代わって判定するのを無条件で信頼することを必要条件としている。そのため,私はこの機能が本来の力ほどには役立たないと思っている。

 Netscape 8.0は,ほかにも多くのセキュリティ関連機能も備えており,そのいくつかはFirefoxにあるものと似ている。例えば,[Datacard Manager]はWebフォーム内に入力した情報を記憶しておくのに役立つ。[Password Manager]はよく使うパスワードを記憶するのに役立つ。Netscape 8.0も[テーマ]と[エクステンション]をサポートする。こうした機能は,すべてFirefoxにもあるものだ。Netscape 8.0もブラウザのヒストリを消す便利なツールバー上のボタンと,「MSN Hotmail」や「Yahoo!」,米Googleによる「Gmail」,米America Online(AOL)などユーザーが頻繁に使用するサービス向けのアカウント情報を設定する機能を備えている。これは,Firefoxの標準コンポーネントにはないが, 同等のものをエクステンションとして提供することは可能なはずである。

次期版の開発に貢献する統計収集機能
 Firefoxにはない,もう1つの特徴的な機能がユーザーがNetscape 8.0の各機能を使った回数を集計するものである。これをユーザーの匿名性を確保した上で,開発者に送り返すことができる。この情報は,ブラウザの将来のバージョンをよりよくするために使う。あなたが期待する通り Netscape 8.0をインストールするときは,Firefox,IE,Operaを含む既にインストール済みのほかのWebブラウザからプリファレンスやCookie,ブラウズ履歴などの設定をインポートできる。ただし,インストール・プログラムは私の設定をすべてインポートしてくれたが,検索エンジンのプラグインは読み込まなかった。この点は改良を要する部分だ。

 Netscape 8.0がIEのレンダリング・エンジンとActiveXコントロールを実際にどのように使うかは,まだはっきりと分かっていない部分だ。「Netscape 8.0は,IEで定義されたセキュリティ・ゾーン設定を引き継ぐのか?」「IEのレンダリング・エンジンを使うようNetscape 8.0を設定した場合,Netscape 8.0はレジストリ内にあるIEのゾーン設定を使うためにどうにかしてIEのゾーンに自分のゾーンをマップするのか?」「未署名のコントロールをダウンロードしない,といったActiveXコントロールの扱いに関する私が設定したIEのゾーン設定を引き継ぐのか?」…。

 これらの疑問を検証しようと簡単なテストをしたが,Netscape 8.0がIEのゾーン設定を使っているようには見えなかった。でも,私が間違っているのかもしれない。水面下で何が起きているのかを説明するのに役立つ情報をお持ちなら,どうかその詳細を電子メールで私に送っていただきたい。

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 全体的にNetscape 8.0は,優れたWebブラウザのようだ。特に,Site Controlsの実装と,IEとFirefox両方のレンダリング・エンジンが使えるという点は,特筆に値する。このソフトは,Netscape CommunicationsのWebサイトから無償でダウンロードできる(該当サイト)。ただし,Netscape 8.0はFirefox 1.0.3をベースにしている点に注意すること。つまり,そのバージョンのFirefoxにあったのと同じセキュリティ上のぜい弱性も引き継いでいるということだ。その問題を修正したNetscape 8.0.1は,即日リリースされた。