(Paul Thurrott)

 米MicrosoftはWindows Server 2003の中継ぎリリースとなる「R2」(開発コード名)のパブリック・ベータ版をリリースした。同社のWebサイトからダウンロードできる(該当サイト)。私はR2の開発を追ってきたし,これまで数カ月R2のベータ版を試用してきた。今回は,R2に期待できることと,できないことに関して,いくつかの情報を提供する。

 R2のそもそものコンセプトは,Windows Serverの開発が長期化したことに端を発している。企業ユーザーの需要を背景に,Microsoftは新しいWindows Serverの提供間隔を固定するというものだった。ただし,同社がそのスケジュールにどれだけこだわり続けられるかは,時間がたてば明らかになることだ。同社は4年ごとに,Windows Server 2003のようなメジャー・リリースを出荷する。Microsoftはそのメジャー・リリースの間に,R2のようなマイナー版をリリースする出荷計画を立てた。Windows Server 2003 R2は,そのマイナー・アップデートの最初の製品になる。Longhorn Server R2も同様に予定されている。

当初の計画から後退したR2の機能
 これらのR2リリースは,その前のメジャー・リリースと同じカーネルをそのまま使い,アプリケーションの互換性を確保する。R2リリースは,単純に現行のWindows Serverの最新版だと考えられる。Windows Server 2003 R2が2005年後半に出荷されると,それは市場にあるWindows Server 2003を単純に置き換える。しかし,それはマイナー・リリースなので,ほとんどのユーザーはアップグレードしたくないと思うだろうし,その必要もない。しかも,R2の当初の考えから変わっているからだ。

 最初の計画では,Windows Server 2003 R2はユーザーの多くにとって,オリジナルをはるかに超える大きな2つの機能を備えるはずだった。1つ目は,Windows 「Bear Paw」(Windows Terminal Servicesの次バージョン)である。これは管理者がユーザーに対して,リモート・アプリケーション(例えばWordやExcel)を配布できるようにするものだった。ユーザーに対してRemote Desktopの使い方を教育する必要がなく,その人たちのマシンへ簡単にアプリケーションを配布することができたのだ。ユーザーはそれらのアプリケーションを[スタート]メニューから起動して,それらとローカルのアプリケーションの間でカット&ペーストしたり,ドキュメントを自分たちの[マイドキュメント]フォルダに保存したりできるはずだった。それらのアプリケーションをリモート・サーバーから起動していることに気がつかずにである。Bear Pawは素晴らしいアイデアだった。しかし,この機能は次期Windows Serverの「Longhorn Server」(開発コード名)まで実装されないことになった。

 MicrosoftがR2への搭載をあきらめた2つ目の機能は,「Network Access Protection(NAP)」の完全実装版である。これはリモート・アクセス・ユーザーがセキュリティの要件を満たすまではLANに接続できないように制限するネットワーク隔離機能である。隔離中に,そのユーザーが適切なアップデートを受け取っていれば,その後LANへアクセスすることが許される。現時点のR2では,まだ追加の実装作業がたくさん必要な,ほんの基本的な隔離機能しか提供しない。

3つの新機能がニーズに合えば移行すべき
 2つの新機能が見送られたため,Windows Server 2003ユーザーにとってR2は,魅力が薄れている。その代わりに,R2は3つの機能を備えた。(1)ブランチ・オフィスを抱えた現場向けのシンプルな管理ツール,(2)別々の現場にまたがる認証の統合,(3)向上したストレージ管理機能――である。もし,あなたのニーズがこの中のいずれかに合致するなら,R2を評価するべきだ。もしそうでないなら,Longhorn Serverまで待つことだ。

 この3つの新機能はどのようなものだろうか。(1)の機能は,R2がブランチ・オフィス向けのよりシンプルな管理ツールを提供するというものだ。このツールは,ITスタッフがほとんど,あるいは全くいないリモート・オフィスにあなたがシステムを導入し管理するのを支援する。新しいバージョンのDFS(分散ファイル・システム)もある。Microsoftが「DFS Namespaces」と命名しなおしたものだ。現在DFS Namespacesは,DFS Replication(以前はFile Replication Servicesだったもの)という機能を内蔵し,マルチレベルのフェイル・オーバーとフェイルバックをサポートし,WAN越しでも効果的に動作可能になる。

 (2)の機能は,R2が「Active Directory Federation Services」(ADFS,開発コード名はTrustbridge)を介して,別々の現場にまたがる認証統合をサポートする。この機能は,互いに他を信頼する複数の企業の間の協業を単純化する。Microsoftによると,既に複数の政府機関や大規模な国際的企業がこの機能をテストしている。

 (3)の機能は,R2がWindows Serverのコアのストレージ管理機能のいくつかを改良したものを備える。特にフォルダ・ベースのクォータ管理機能が追加された。さらに「Storage Resource Manager」という新しい「Virtual Disk Service(VDS)1.1」互換のSAN管理コンソールも提供する。

 そのほかにもR2では,たくさん改良が施されている。例えば,「.NET Framework 2.0」と「マイクロソフト管理コンソール(MMC)2.1」,新しい「Common Log File System」,新しい「Printer Managementコンソール」――など。「Active Directory Application Mode(ADAM)」と「Windows SharePoint Services 2.0」「Subsystem for UNIX Applications」(以前は「Services for UNIX」という名前で知られていたもの)――の3つのフィーチャー・パックもバンドルされる予定だ。

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 Windows Server 2003 R2を評価するか否かを決めるために必要な情報を提供できたとしたなら幸いだ。今後数週間,私はR2の様々な機能を深く調べて,既存のユーザー環境にR2を導入して統合する方法を調べるつもりだ。R2の機能は当初の計画よりかなり縮小されたが,結果的にMicrosoftが意図した中継ぎリリースという形にぴったりはまるものとなった。だから,全く悪いものになったとは言わない。だが,もう1つか2つ魅力的な機能が追加されたら,R2への移行が説得力のあるものになるはずだ。