(Paul Thurrott)

 私はここ数年にわたり,Windows Serverが,最も使われている企業OSの座からLinuxに引きずり下ろされる可能性について,何度もレポートしてきた。しかし,最近の傾向を見ていると,もうLinuxの脅威は後退したのではないかと思う。

毎年恒例「今年こそLinuxの年になる」
 毎年恒例のこととして,特に1月はLinuxの誇大な宣伝にびっくりしたアナリストたちが「今年こそLinuxの年になる」という話の総まくりが出ているように思われる。私も公平に見て,LinuxとWindowsがいつかサーバーの世界で五分五分に稼働するようになるだろうと思っていた。Linuxの広く認知されたセキュリティ,コスト,そして信頼性での優位がその主な理由だ。さらに過去数年はMicrosoftにとっては厳しい年だった。というのは,同社はセキュリティ面での混乱に肝がつぶれるような苦しみを味わったからだ。

 Linuxの誇大な宣伝にはほんの1つ,小さな問題がある。過去数年にわたる着実な改良と,IBMやNovellや,さらにSun Microsystemsのような大手IT企業の支援を受けながら,Linuxは永久に待機状態のまま止まっているようだ。Microsoftのサーバー市場のシェアを食うことなど不可能なように思える。そして,PC業界が景気後退から抜け出し,企業がIT技術に投資を戻すようになるにつれて,Linuxのようなオープン・ソースのソリューションではなく,Microsoftのソリューションが最大限の利益を得ている現状を指摘するのは楽しいことだ。

好業績のMicrosoftを支えるサーバー製品群
 良い例として,2004年第4四半期の収益報告で,Microsoftは再度予想を超えて収益の新記録を達成した。記録的な収益を出すのはMicrosoftではいつものことなので,わざわざ触れる価値はほとんどなくなった。しかし,同社の成功の鍵は,興味深いことにServer and Tools部門なのだ。この部門は「Windows Server 2003」「Exchange Server 2003」「SQL Server 2000」などを担当している。Server and Tools部門は2004年第4四半期に28億ドルの収入を稼いだ。これは"金のなる木"であるOfficeを販売するInformation Worker部門が稼いだのと同額である。実のところ,Server and Tools部門は,Microsoftが持つ別の金のなる木であるWindows Client部門(32億ドル)にじりじりと近づいている。

 その結果は驚くべきものだ。横ばいか,ひとけた成長のWindows Client部門とInformation Worker部門に比べて,Server and Toolsは毎年18%以上成長している。SQL Serverの成長は25%を超えた。さらにExchange Server 2003は,Microsoftのどのサーバー製品よりも立ち上がりが早い。

 こうした数字は2つのことを示している。第1に,IT業界は再び金を使っている。第2に,Microsoftのサーバー製品は勢いづいており,すべてのコア・プロダクトつまりWindows ServerもExchangeも,SQL Serverがかなり成熟したところで,同時にそうなっている。そして,Windows ServerもSQL Serverも2005年にWindows Server 2003 Release 2(R2)とSQL Server 2005というようにメジャー・アップデートを迎えるということだ。つまり,そのアップグレードのプッシュが,かなり長期間,好調な収益をもたらし続けると考えてよいだろう。

 「われわれのサーバー・ビジネスはNFLのプレーオフの(ニューイングランド)ペイトリオッツのような成績を上げている」。Seattle Post Intelligencer紙のTodd Bishop記者のレポートによるとMicrosoftの最高財務担当役員(CFO)であるJohn Connors氏はこう言ったそうだ。

 この例えは慎重に考えて選んだものだと私は思う。過去4年間に3度スーパーボウルに進出したことがあるペイトリオッツは,近代スポーツの名門と見られており,そのリーダーシップとチーム本位の姿勢は広く尊敬を集めている(訳注:日本時間2月7日にペイトリオッツのスーパーボウル連覇が決まった)。Microsoftはペイトリオッツが受けている同じ高い評価を自社のサーバー製品群に受けたいと思っている。そして,個別のサーバーが強さを持つ一方で,全体が個々の部品以上に顧客にとって高い価値をもつような方法で一緒に動くと考えたいのだ。

Linux脅威論を後退させる4つのポイント
 Linuxの脅威に抵抗しようとすると,いくつかの重要な挑戦がMicrosoftを引き続き苦しめるだろう。とはいっても最近の傾向は同社がようやく勝つ戦略を理解したことを示唆しているようなのだが。

 第1にMicrosoftは,LinuxがWindowsよりも安全だという世間の認識に対処しなくてはならない。その成果として「Linuxのようにほとんどテストされていないソリューションは安全でない」または「不適切な構成ではWindowsよりも安全でない」と考えを変えた人たちにわれわれは遭遇し始めている。

 第2にMicrosoftは,世界中の行政機関でLinuxと他のオープン・ソース・ソリューションをサポートする動きが増えているのを止めなければならない。いくつかの場合,Microsoftは金銭面で取引を魅力的にすることで,行政機関との契約を勝ち取ってきた。しかしほとんどの場合,オープン・ソース・ソリューションがよく知られておらず,実績がないことへの心配があるため,Windows陣営に話が流れた。例えば,ドイツのミュンヘン市のような有名になったLinuxへの移行事例は,予想通りの問題に遭遇している。より大事なことは,Linuxやオープン・ソースが,まだ世界中の行政機関向けIT市場の,ほんの小さな部分を占めているに過ぎないということだ。

 第3にMicrosoftは,その統合アプローチを推進し続けるべきである。それは競争する上で実に大きな利点だ。「Windows Small Business Server(SBS)2003」のようなターンキー製品と業界が作った素晴らしい関連サービス群は,オープン・ソースの世界にはないものだ。しばらくこのままの状態が続くだろう。製品対製品の比較をするのは面白いのだが(例えばWindows Server 2003対Red Hat Enterprise Linuxとか…),ほとんどの顧客は,そんな細かい考え方をしない。企業はソリューションを求めているのだ。そして,これこそMicrosoftが頂点に立てるエリアだと私は思う。

 第4にMicrosoftは,結局のところコストの戦いに勝ったと思う。Linuxのソリューションはだれと話をするかによって,Windowsベースのソリューションに比べて高くも安くもなる。そんな比較は,既にWindowsに慣れていて,このプラットフォームを捨てるとしたら,機能と互換性をきちんと約束できないIT管理者たちには,あまり深い共感を呼ばない。いくつかのWindowsソリューションは,Linuxベースの代替品に比べて少しばかり高い。しかし,Windowsの恩恵は,そういう本質的にささいな値段の違いを,長い時間がたつにつれて十分補ってくれることが多い。

 読者のみなさんは,どう思うだろうか? Linuxは次の主役になるのか,それともMicrosoftと過去に競合した者たちのほとんどと同じく,2~3の重要なニッチ・マーケットを押さえるだけになるのだろうか。