(Paul Thurrott)

 私は2005年初めに,ネバダ州ラスベガスで開催中の北米で最大級の技術展示会2005 International Consumer Electronics Show(CES)に参加した。過去数年の傾向を維持しながら,CESはコンピューティング技術とTVとカー・ステレオなど,一般消費者向け家電の両方をカバーするシヨーに発展しつつある。

 その大きな理由は,より広い一般消費者向け家電の世界がコンピュータ産業の中に組み込まれつつあるからだ。そのことは一定の意味をなす。今日の家電製品のほとんどは,コンピュータを内蔵しており,PCの世界は既に相互運用性とネットワーキングのような問題を解決済みだ。そして2005年にわれわれが眼にする可能性が高い技術に期待して,コンピューティングと家電の集合は,さらに続いていくと私は断言できる。CESの主催者が2005年に目にするはずと述べる5つの技術のトレンドを見てみることにしよう。

メディア・サーバー群
 多くの人が既に自分の写真やビデオの記録を,PCのハードディスクに保存している。そういう人たちは今,それらコンテンツとほかのよく似たコンテンツ,例えばデジタル・ミュージックを家中で楽しむためにホーム・ネットワーキング技術を使いたいと思っている。ホームPCはデジタル・コンテンツの入手や操作に優れた手段だが,普通のPCの小さな画面はあまりよい見栄えがしない。代わりに人々は,自宅のより快適な部屋にある大画面のTVやほかのスクリーンを使いたいと思うだろう。

 このシナリオに重要なものはホーム・メディア・サーバーだ。これは大容量のハードディスクを持つPCやその他の装置のはずである。こうした装置はあなたのデジタル・コンテンツを保管し,あなたが持つ他のPCや装置とホーム・ネットワーク経由で接続される。多数のメーカーが専用のメディア・サーバーを発表しているし,われわれは今後もそういったソリューションのいくつかを取り上げるつもりだ。

携帯型のエンターテインメント
 Apple ComputerのiPodは2004年に大流行したが,携帯型エンターテインメントの将来の本命は,スマートフォンである。これは携帯電話の機能に加えてデジタル・カメラ,PDA(個人情報端末),MP3と動画の再生,ビデオ・ゲーム,さらにそのほかの娯楽に対応する機能を備えたものだ。われわれは遠からずMP3プレーヤがカー・ステレオを置き換えるのを目にするだろう。その中にはあなたのホームPCやメディア・サーバーと同期可能なリムーバル・ハードディスクを備えたユニットや,車道から同期できるWi-Fiハードウエアを備えたユニットなども含まれる。

 ビデオに関しては, MicrosoftのPortable Media Centerコンピュータが,現在発展途上にあるデジタル・ビデオの主流になる道を暗示している。2005年中は携帯型DVDプレーヤが携帯型デジタル・ビデオ・プレーヤを大差で引き離しているだろうが,これら2つの装置は徐々に同じ製品に融合するだろう。

スマート・キッチン・アクセサリ
 インターネット時代が幕を開けたときには,みんな「Web接続されたトースター」という冗談を言ったものだが,今は笑えなくなった。スマート・キッチン・アクセサリは,昔からの機能に新しい技術を組み合わせたキッチン用装置である。例えば,米国の家電販売大手のBest Buyでは今日,TVを組み込んだ冷蔵庫を見つけられる。その画面でインターネットにアクセスして食料品店に注文を出せるのをあなたはご存知だったろうか。どうか冷やかさないでほしい。ちょうど20年前には,家庭のどこからでも,さらに地球上のどこからでも電話をかけられるようにするというアイデアは,実現が怪しいものだった。しかし今日,携帯電話は多くの人々にとって必須のものになった。

 それと同じようにばかげて見えるかもしれないが,スマート・キッチンはより浸透する技術へと変わりつつある。言い換えれば,あなたのPCは歴史的には機能性を持った孤島だった。でもベッドにいてタブレットPCやTVからWebにアクセスしているように,なぜ夕食を作っている間にWebにアクセスできないのか。冷蔵庫の前に立っているときに,なぜレシピをGoogleで検索できないのか。われわれが進歩するにつれて,たくさんの古くからある装置がコンピュータの機能の一部と接続性を獲得して,より賢くより役に立つようになっていくだろう。

ビデオ・ゲームとインタラクティブ・エンターテインメント
 1970年代か1980年代初めに成人した私と同世代の人間は,ビデオ・ゲームが一時的なブームではなかったと分かっている。そして,私より若い多くの人々にとっては,ゲームは既に生活の一部だ。

 しかし,ゲーミングはスクリーン上で動き回るピクセルだけのことではない。今日ビデオ・ゲームは洗練されたインタラクティブなエンターテインメントを提供しており,最もよくできたハリウッド映画に匹敵するグラフィックスとサウンドを誇っている。そう,虚飾の町ハリウッドは一歩引き下がったほうがよい。ビデオ・ゲームの販売は,ここ数年切符売り場の収入を上回っている。もっと簡潔に言えば,ビデオ・ゲームはビッグ・ビジネスなのだ。

 ビデオ・ゲームは今どのくらいポピュラになっているだろうか。米国では全世帯の35%以上が,1台かそれ以上のビデオ・ゲーム機やゲームができるパソコンを持っている。ゲーム・メーカーであるElectronic Arts社は最近,NFL(National Football League)との間でこの組織に属するチーム名とロゴ,プレーヤ,記録を自社のMaddenシリーズのビデオ・ゲームで使うために,数百万ドルの独占契約を結んだ。そしてゲーム・ファンは「DOOM 3」や「Halo 2」「Half-Life 2」のようなタイトルを,それらが出た日にプレーするために仕事をさぼった。最後に映画を見るために仕事をさぼったのは,いつの日だったろうか?

 Microsoftとソニーが2005年末までに,次世代ビデオ・ゲーム機を出すかどうかは定かではない。しかし,今日のゲーム機と任天堂のDual Screen(DS)とソニーのPortable PlayStation(PSP)などの携帯型ゲームが,新しい形態で成功が続いているおかげで,2005年もやはりゲーマーにとって話題が非常に多い年になるだろう。

テレマティクスの将来
 携帯電話やキッチン・アクセサリやそのほか何年も使われてきた装置と同じように,自動車や他の乗り物も2005年には新しい形の通信技術を統合して大きく変わるだろう。この技術は,テレマティクス(Telematics)と呼ばれるもので,乗り物が遠隔地にあるサービスと通信できるようにするために,乗り物に組み込まれたあらゆる電子機器のことを指す。この技術の1つの応用は,全地球測位システム(GPS)であり,これは乗り物の運転者が今自分の居場所や,新しい目的地に着くまでの道筋や,近場のサービスを見つける方法を教えてくれるものだ。GPS装置は普通地球上の衛星システムと相互運用する。

 しかし,テレマティクスもありふれたものになる可能性がある。他のテレマティクスの例には,SiriusやXMのような衛星放送システムがある。統合されたハンズフリーの無線電話に,緊急監視システムだ。2005年内にわれわれは,ゲームやビデオやそのほかのコンテンツをいつどこにいてもわれわれの自動車に送信する新しい無線サービスを目にするだろう。