(Mark Minasi)

 私は最近,MCSE(Microsoft Certified Professional Systems Engineer)トレーニングの参加者が資格を取得するまでの2週間のうちに,彼らと話す機会があった。その経験はとんでもない真実に対して,目を開かせてくれた。

もっと役立つ資格認定にしたらどうか
 MCSE資格はしっかり普及している。この10年にわたり,Microsoftの認定プログラムに関する私の記事を読んだ人ならだれでも,1ベンダーにコントロールされた認定資格という役に立たないものに,私が煩わされていることはご存知だろう。

 しかし,人というものは自分の名前に資格を後付けするのが大好きであり,人事(HR)部門はその人の持つ経験で人を評価する時間が取れず,その代わり,資格で人をフィルタする傾向があることは見当がつく。だから私のほうが降参だ。

 そこで問題を提起したい。MCSEや「CCNA(Cisco Certified Network Associate)」や似たような資格を取るつもりなら,そういう資格をもっと役立つものにすべきではないか?なぜ人々に実際に必要で使えることを教えないのだろうか?

 そのほとんどは,使われることがないにもかかわらず,Microsoftのありとあらゆる技術を見せつける手段として,Microsoftの認定テストが使われている――そういう主張に沿っていくつかの考えを並べてみる。

「ほとんどだれも使わない技術をスキップする」
 MCSEのサーバー・テストにあるみたいに,いったい「NTBackup」についてあんなにたくさんの質問をする必要が本当にあるのか?

 確かに私はこのツールを使っているが,それがタダで私はケチだからなので,大部分の人はサード・パーティ製のバックアップ・ツールを使っている。SNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル),IAS(インターネット認証サービス),RRAS(ルーティングとリモート・アクセス・サービス),PPTP(ポイント・ツー・ポイント・トンネリング・プロトコル),Microsoft Certificate Serverについても同じだ。

 別に私はRADIUS(リモート認証ダイヤルイン・ユーザー・サービス),IPルーティング,さらにはVPN(仮想プライベート・ネットワーク)の実装が悪いと言いたいわけじゃない。しかし,自分の経験では,ほとんどの人がそれらについてMicrosoft以外のベンダーの製品を使っているのだ。

 インフラ・テストにあるように,Windowsサーバーをバックボーン用のIPルーターとして使っている会社で,マルチサイトのネットワークを構築するという描写は奇妙だ。Cisco SystemsやCheck Point Software Technologiesやそのほかあまたのベンダーが存在しないような虚構の世界で,ネットワークを設計しろというのは土台無理である。

 もしも,新しくMCSEの資格を取った人が,本当に全部Microsoft製品のソリューションを推奨して,それを実装させようとしたら,どうなるかを考えてみるがいい。なかなか冷や汗ものだろう。

「使う気になる製品と技術に絞り込むこと」
 Webサーバー上ではどのサービスを安全に無効にできるだろうか。Windows Server 2003の魅力的な新機能の1つである「VSS(ボリューム・シャドウ・コピー・サービス)」を使って,あなたはどう設定すれば共有データをバックアップ/リストアできるのだろうか。

 MCSE資格には,最新のバージョンかあるいはWindows NT Workstationの2つに関するテストが必ず含まれる。私が知る限り,今のところはWindows XP Professionalか,Windows 2000 Professionalのテストを受ければ,MCSEを取得できるはずだ。

 しかし,現実世界では,いまだにWindows 9xを使っているのだ(多分今後も長い間使われるだろう)。私はWindows XPを使っているしこれが好きだが,自分のお客に対してはそれを使うよう強制しない。もし,あるお客さんがWindows 98を使いたいのなら,私はそれをサポートできなければいけないし,Windows 98のテストは,MCSEを取得したい人にとってXPや2000のテストの代わりとして通用するものにすべきだ。

「MS製品の限界に関する質問も含めるべきだ」
 例えば,あるユーザーに対して,フォルダ内でファイルを削除できないようにしたままで,ファイルを作ったり,変更したりする権限をどうやってユーザーに与えられるだろうか?

 答え:実用的にはできない。

 なぜなら,多くのファイル単位で動くアプリケーションは次のような動きをするからだ。ファイルを修正して保存するとき,[ファイル]-[保存]をクリックする。そのコマンドはまずメモリー内にある現在のドキュメントを,新しいファイルとして保存する。それからそのアプリケーションは古いファイルを削除して,新しいファイルの名前を古いファイルの名前に書き換える。このように必ず削除を伴うからだ。

 別な例を挙げてみよう。多分この問題は,Novell製品のシステム管理者だった人から私が受ける一番多い質問だ。私はいくつかのフォルダを含む共有フォルダを作った。異なるユーザー・グループに違うアクセス・レベルを与えるように,それらのフォルダにNTFSアクセス許可を設定した。どうすれば,あるユーザーたちがアクセスできないようなフォルダを,Windowsが見せないようにできるか?

 答え:できない。

 ユーザーがあるExchange Server上に1つ以上のメールボックスを持っている場合に,そのExchange Serverへのリモート・プロシージャ・コール(RPC)接続をサポートするOffice Outlook 2003のユーザー用コピーをどう構成すればいいか?

 答え:できない。

 どうすれば,1つのドメイン内の複数のグループに対して,異なるパスワード条件を設定できるか?

 答えは,またまた「できない」だ。こういった質問があることは,将来のMicrosoft製品の専門家が,現実の世界でサポートできるようにする準備になるだろう。

「サード・パーティ製ソフトも取り上げること」
 RIS(リモート・インストール・サービス)は素晴らしい機能だが,それを使ってデスクトップを配備しているユーザーにはめったに出会ったことがない。ほとんどの管理者は,RISに無関心ではないが,彼らはSymantecの「Norton Ghost」や類似の製品を使っている。Windows XPのテストの中で,「Sysprep」とGhostの使い方に関する細かい質問を入れた方がいいのではないだろうか。

 さらにバックアップに関する質問も入れるべきだ。いくつかの種類のバックアップ・ツールを使えることを念押しするのはよい考えだが,NTBackupを理解する必要があると押し付けるのは悪い考えだ。そのテストでは,バックアップに関する3つの質問に答えるのを要求するのではなく,NTBackupか,VERITAS Softwareの「Backup Exec」か,UltraBac Softwareの「UltraBac」か,またはほかのメジャーなバックアップ・ソフトウエアに関してどれかを選んで答えさせればいいではないか。

「記憶力を試す質問を出さないこと」
 また,Windows NT 3.5のTCP/IPのテストで,ホストのNetBIOS名をそのIPアドレスを与えてダンプするコマンドは何か――と問う質問があったことを覚えている。

 そのコマンドが「Nbtstat」だということは覚えていたし,そのオプションは「-A」か「-a」のどちらかだったのだが,私はどっちか思い出せなかった。「-A」はIPアドレスで,「-a」はNetBIOS名で,ホストを指定する。なぜ,このコマンドがどちらかのパラメータを指定しないと処理できないくらい間抜けなのかは分からない。「Ping」や「Nslookup」やそのほか数ダースものIP関連ユーティリティは,どちらでも処理できる。

 この質問には怒りを覚えた。私にパラメータを覚えていろというなら,「/?」コマンドは何のためにあるのだ?

 同じようにWindows 2000のテストでは,アクセシビリティ・ツールに関することをいくつか聞かれる。私が3クリックで簡単に答えられた質問というのは,Windows 2000デスクトップにアクセスさせるもので,それはGUIの問題そのものだ。

 想像してご覧なさい。もし,こうしたテストが役立つ知識を試すものなら,認定は本当に価値があるものだ。もちろん,その認定が独立した非営利の第三者組織によって運営されていれば,もっとよい。しかし,何でも思い通りというわけにはいかないものだ。