(Paul Thurrott)

 米国の読者に,「Windows XP Service Pack 2(XP SP2)」と「Windows SharePoint Services(WSS)」および「SharePoint Portal Server(SPS)」に関する導入・評価した体験談を募集した。その結果,読者から有益なフィードバックをたくさん受け取った。今回はそのご意見を紹介しよう。

XP SP2:なぜ導入を遅らせたのか?
 MicrosoftがXP SP2の配布を開始した当初2カ月ほどは,最も重要な更新にもかかわらず,導入しなかった企業が驚くほど多かった。

 理由の1つは,もちろんほとんどの現場がこのアップデートを慎重にテストする必要があったからである。アップデートが大きな問題を引き起こす可能性があるという懸念から,いつもよりも長く導入を控えていた企業があったが,MicrosoftはXP SP2がどんなに重要なものかを訴えた。結果として,XP SP2をテストしたり導入したりした多数の読者は,移行がスムースに済み,報告された問題もほとんどなかったことに驚いた。以下に読者がXP SP2の導入を遅らせた理由で多かったものをいくつか紹介する。

XP SP2:アプリケーションの互換性の問題
 多数の読者が,XP SP2とアプリケーション(市販と自社開発の両方)との互換性の無さを指摘した。典型的な例はウイルス対策ソフトだ。ある読者は,米Symantecの企業向けウイルス対策ソフト向けのXP SP2互換パッチの提供が遅れて,しかも最新版の製品向けにしか提供されなかったことを指摘した(なお,私の体験では,以前のバージョンはXP SP2でもうまく動く。しかし,管理されていないマシンに関するセキュリティ・センターのしつこい警告を切る必要がある)。

 こうしたアプリケーションの中には,もちろんミッション・クリティカルなものも含まれる。多分その組織にとってそのソフトはXP SP2よりも重要なものだ。いくつかの政府機関の代表から,そうした機関では厳密な理由でXP SP2を導入していないのだと聞いた。彼らはユーザーの作業を邪魔することなく,XP SP2を導入する方法を見つけようとしているが,その作業は時間がかかるし,もっと緊急の関心事を抱えていると思い込んでいるというのだ。

 いくつかの事例では,アプリケーションの互換性の低さによるコスト増が大きな影響を与えている。ある読者は「XP SP2は,われわれの電話システムのデスクトップ・クライアントと互換性がない。もちろん,われわれのデスクトップ・クライアントは後からリリースされたものだから,新しいクライアントを動かすためには電話サーバーをアップグレードする必要がある(1万ドルと見積もられた)。残念なことに,この新しいクライアントはWindows 98では動作しないので,さらに25台のマシンをWindows XPが動くようにアップグレードする必要がある(2万5000ドルと見積もられた)。われわれが“無償の”XP SP2を導入するコストの総額はおよそ3万5000ドルだ」という。

XP SP2:トレーニングの問題
 XP SP2は,いくつかユーザーの操作できる設定を大幅に変更している。例えば,Internet Explorerのポップアップ・ブロック機能,そしてWindowsファイアウオールなどである。Windowsファイアウオールは,常に有効になっていて,分かりにくいネットワーク・アクセス警告を出す。そのため,ヘルプデスクへの問い合わせを最小限に抑えるような導入方法が見つかるまで,導入を待っている会社があると書いてきた読者も多かった。

XP SP2:不安と不確実性と疑い
 センセーショナルに伝えられたニュースやレポートは,XP SP2導入の足を引っ張った。何人かの読者は不安を誘発するニュース記事や,そうでないベンダーからの事例報告で,XP SP2の導入を延期するのが賢明だと思わせたと指摘した。

 複数のコンサルタントからも手紙をもらった。顧客企業がXP SP2を徹底的にテストするまで,XP SP2導入にウンと言おうとしなかったという。それは大変気の毒な話だ。なぜならXP SP2は大抵のユーザーにとって高品質で安定したアップグレードだと複数の証拠が示しているからである。

XP SP2:多くの人は全く問題なし
 多くの読者でXP SP2を導入しているが,全く何も問題にあっていない。カリフォルニア州立大学にいる読者は「130ユーザーに,Systems Management Serverを使ってXP SP2を導入した。XPのファイアウオールを無効にするためにグループ・ポリシーを使った。問題も不満もなく,だれも気づきもしなかった。導入したおかげで,キャンパス内の他の場所を襲った2つのワームを避けられた」と書いてきた。彼は,XP SP2に関するWebセミナーのホストを務めており,そのセミナーでXP SP2の機能と,企業ができるだけ早くXP SP2を導入すべき理由を詳しく話している(Windows IT Pro Events Central Webサイト参照)。

SharePoint:まだメリットが伝わっていない
 SPSとWSSはMicrosoft OfficeユーザーにWindowsサーバー・ベースの協同作業環境を提供する製品だ。

 SharePointに関する質問に答えた読者の大部分は,私と同じぐらいこの技術の集合体について戸惑っていた。この製品のメリットを伝えるために,Microsoftが随分苦労するということを示している。しかし,SharePointユーザーはほとんど全員一致で,この技術を忠実に受け入れており,従業員たちが物理的に離れたところにいるにもかかわらず一緒に作業できるように,その技術がどのようにやり方を変えたかを詳述していた。数人はコストの低さも賞賛した。

SharePoint:ユーザーたちは猛烈に忠実な少数派
 ある読者は「われわれは,異なる部門の人たちと大きなグループを形成して,より大きな問題に一緒に取り組めるようになった。たくさんの人々が同じドキュメントに取り組めるようにする必要がある場合に,一番役に立った。電子メールでドキュメントを送る昔のやり方は,一緒に作業をする人の数が2人以上に増えるととても面倒になった。SharePointはとてもパワフルで,オフィス・ワーカーたちが自分のWebサイトのアクセス権を自分で制御するのを,シンプルなWebフォームから以前よりずっと簡単に実現してくれる。Windows SharePoint Servicesは低コストなので,特に少数の人々(12人程度)を一緒に働かせる場合に,ROI(投下資本利益率)の改善にとても効果的だ」といった。

 SharePointは,通常の電子メールやFTPベースのファイル共有以上に,多くの恩恵を与えてくれる。何人かの読者は共有ドキュメントがなんであれ,常に「最新版」のドキュメントがすぐに入手できるその能力について触れていた。ある読者は「各自が別々の(バージョンの)ドキュメントで作業して,その後にたくさんのドキュメントを1つにまとめようとするようなひどい状況に直面しなくて済む」と書いた。そして,これらの製品の地理的な距離とは無関係に共有できる機能には,しばしば畏敬の念を起こさせるものがある。ある読者は「カリフォルニアで使っているこのシステムは,SharePoint Portal Serverベースだ。このシステムは,何か健康上の緊急事態の間,カリフォルニア州内の代表機関と全58郡との間で(あらゆるタイプの)ドキュメントを共有できるようにする」と書いてきた。

 数人の読者が指摘したようにSharePointは,組織の一員に熱狂的ファンを持つほどの「眠れる」または「隠れた」技術だ。

 ある回答者は「WSSがあれば,一般のオフィス・ユーザーでもファイルやテキストやスケジュールなどを,Office統合機能を経由して,ブラウザから直接Webサイトに投げ込める。もし,サイトを配置換えする必要があれば,そういう人たちもIT担当者を呼び出さずに,自分のライブラリやサブサイトを作れる。私の経験では,短いデモをすれだけで,普通の人がWebサイトをどう管理するかすぐに理解できる。それほどWSSがシンプルだということだ」と書いた。

XP SP2のDEPに対する補足情報
 私は以前にXP SP2で提供する「プログラム実行防止(DEP)」機能について論じ,それがx64ハードウエア・プラットフォーム上で動作しているXP SP2の64ビット版ではどれほど効果的になるかを詳述した。AMD64ベースのプラットフォームもIntel Extended Memory 64 Technology(EM64T)ベースのものも,この防止技術をハードウエアでサポートしており,より障害に強く信頼性が高いものにしているからだ。

 Microsoft Pressの「Inside Windows 2000」と近々登場する「Microsoft Windows Internals, Fourth Edition: Windows Server 2003, Windows XP, and Windows 2000」の共著者であるDavid A.Solomon氏は,32ビット版XP SP2をx64プロセッサ上で稼働した場合も,障害に強いハードウエア/ソフトウエアのDEPソリューションとなることを私に書き送ってくれた。

 彼のいう通りだ。DEP機能をx64プロセッサ上で活用するために,あなたはWindows XP Professional x64 Editionを入手しなくても,32ビット版のままXP SP2にアップグレードするだけでいいのだ。

 また,これまでの32ビット・プロセッサは,ハードウエアによるDEPソリューションをサポートしなかった。しかし,Intelはつい最近,ハードウエア・ベースのDEP保護機能を備えた新しい32ビットPentium 4チップを発表した。早晩,DEPを備えていない32ビット・システムは,時代遅れになるだろう。