(Michael Otey)

 データベース分野でいまだかつてこれほど競争が激しくなったことはないだろう。2000年のことを覚えているだろうか?クリントン大統領がホワイトハウスにいて,技術産業を中心に経済が盛り上がっていて,米Microsoftは「SQL Server 2000」をリリースしたばかりだった。

 出たばかりのSQL Serverは,部門レベルから企業レベルへ,データベースの壁を突破した。それがクラスタを使った「Transaction Processing Performance Council (TPC) TPC-C」のトップになったので,米TPCは納得がいくようベンチマークをクラスタ構成と非クラスタ構成というカテゴリに分けたほどだ。

時は流れて
 しかし,それ以後SQL Serverの主なライバルたちは企業向けの新しいリリースを始めた。その見事なデビューから4年が過ぎた今,SQL Server 2000はクラスタ構成のTPC-Cスコアからは消えている。そのスコアでは米Oracleの新しい「Oracle 10g」データベースが1位になっている。そして,SQL Serverは非クラスタ構成カテゴリの3番目に座っており,米IBMの「DB2」が非クラスタ構成でのベスト・スコアを保持している。

 Microsoftは,スケーラビリティのためのクラスタリングで先んじて素早くリードした。しかし,ライバルたちはじっとしていなかった。Oracleはシェアード・ストレージ型アーキテクチャを採用したため,スケーラビリティに制限があった。それでも,10gクラスタリング・ソリューションを,中規模のビジネスで簡単に採用できる技術として押し出した。

 SQL Serverのシェアード・ナッシング型のクラスタリング・アーキテクチャは,高いスケーラビリティを持っていたが,導入作業が複雑で,特に中小規模の組織にとっては面倒だった。SQL Server 2000のクラスタリングを機能させるには,クラスタ内の個別のサーバーにデータベースをどう振り分けるかをうまく決めなければならない。そして,クラスタ環境で動くようにデータベースのスキーマを変更する必要があるが,すべてのサード・パーティのアプリケーション・プロバイダが熱心なわけではない。

馬力アップが簡単なOracle 10g
 業界が認識したことは,Oracle 10gのソリューションは複雑ではなく,馬力を上げるにはそのクラスタに別のシステムを追加するだけでよい,ということだった。現実はもっと難しかったが,多くのケースでは4CPUの追加システムを買うほうが,システム全体を置き換えるような,もっと高い8CPUや12CPUのシステムを買うよりも,簡単に受け入れられた。残念なことに,開発コード名「Yukon」と呼ばれた「SQL Server 2005」におけるスケーラビリティ向上のためのクラスタリングは,SQL Server 2000のものとそれほど変わっていない。

.NETを取り込むDB2
 さらにIBMが先頃出荷した「Universal Database for DB2」,開発コード名「Stinger」は,顧客がストアド・プロシージャとして.NETの部品を組み込めるようにすることで,YukonのCLR(共通言語ランタイム)のアイデアを先取りしつつある。Yukonと同じくStingerは,Visual Studio .NETにテンプレートとオブジェクト・ライブラリを追加して,あなたが.NETデータベース・オブジェクトを作れるようにする。Stingerは.NETのストアド・プロシージャもサポートする予定だ。しかし,まだ今の時点では,トリガーやユーザー定義関数やアグリゲートはサポートしないようだ。そして,Stingerの.NETインテグレーション機能は,同一プロセス外での実装になるので,Yukonの実装と同じような性能は発揮しないだろう。しかし,Stingerのリリースは多分Yukonより6カ月は早い。

「Yukonは今夜こられないが,明日には必ずくる」
 Yukonの遅れは,既存のSQL Serverユーザーに痛い思いをさせるわけではないが,しつこく繰り返される延期(2度目のプライベートなベータ・リリースは2004年7月末だった)は,市場におけるSQL Serverの競争上の位置を揺らがせている。

 何人かのSQL Serverのプロたちは,「CLRと拡張XMLの統合機能」や「よりパワフルな管理や開発環境」を追加するのに時間をかけて,それに匹敵する価値があるのかどうか,疑問を呈してきた。しかし,SQL Serverがデータベース競争を勝ち抜いていくためには,現在のデータベースに対するニーズだけでなく,将来の要件も考慮する必要がある。Yukonは,データベース市場にたくさんの新しい火力をもたらすことを約束する。だから,リリースはすぐというわけにはいかないのである。