(Brian Moran)

 Microsoftは,何年もかかって単一で統合されたストレージ・エンジンを作ろうとがんばっているが,そのゴールはもう2,3年先に延ばされた。Microsoftは次世代Windows「Longhorn」(開発コード名)から,「Windows File System(WinFS)」を削除することを発表した。理由は,さらなる延期をしないためである。

数年前からあった「SQL FS」が「WinFS」へ構想拡大
 私は数年前のTechEdで,「SQL Server File System(SQL FS)」のスニーク・プレビューを見た。MicrosoftはそもそもSQL FSを,SQL Server 2000の一部としてリリースする計画を立てていたのだ。もちろん,そうはならなかったが。

 SQL FSのコンセプトは,進化してより雄大で包括的なものになり,OSの核の一部になる構想に広がった。それが今,WinFSと呼ばれているわけだ。WinFSは,それ自体ではSQL Serverにはならないが,SQL Serverの製品系列全体の基礎技術の一部を成す。実際に,WinFSの背後にある概念は,そもそも「Cairo」と呼ばれたリッチなオブジェクト指向ファイル・システムによく似ている。だがその点を考えると,リッチなファイル・システムはWindows NTを出した当初から,Microsoftの目標の1つだったのだ。

ファイル・システムをデータベースが管理
 WinFSは素晴らしいアイデアである。考えてみると,ファイル・システムがデータそのものなのだ。ファイル・システムは多くの概念と技法を,データがソートされたり,組み合わされたり,検索されたりといったデータベースの技法から借りている。

 企業内にある全データを横断する検索が(検索対象のデータが,構造化されたデータベースにあるのか,構造化されていないファイル・システムにあるのかに関係なく),単一のインターフェース(Windowsのインターフェースみたいなものか,SQL Serverのインターフェースみたいなものかはともかく)から実行できるとしたら,非常に役立つだろう。ああ,われわれはもう何年か待たなくては。

統合データ・ストアはExchangeも統合する
 われわれは今,単一の統合されたデータ・ストアについて話しているが,あなたの電子メールはどうなるだろう?Microsoftは,Exchangeのコアであるメッセージ・ストア・エンジンもSQL Serverに移す計画を立てている。データがどこに隠されているかに関係なく,構造化されたデータも構造化されていないデータも,検索は単純になる。

 ほんの数年前のTechEdやPDCで発表された製品出荷計画を見てみると,ExchangeとSQL Serverの緊密な統合化は,もう間近だった。Microsoftは,SQL Server 2005のリリース後に,ExchangeをSQL Serverベースのものにするといっていたのだ。しかし,Microsoftは公式には,Exchangeの次のメジャー・バージョンをSQL Serverベースにするとは発表していない。だから,ExchangeがSQL Serverベースのデータ・ストアを使っているのを見たら,私はびっくりするだろう。

性急な詰め込みより,ここは亀に徹する
 単一の統合されたデータ・ストアの背後にある野心的なビジョンが,再び延期されたことに私はがっかりしている。しかし,それは正しい決定だった。後から思うに,Microsoftが多過ぎるくらいの革命的な機能を,SQL Server 2005(開発コード名Yukon)に詰め込もうとしたのは間違いだったのだ。

 SQL Server 2005が2005年にリリースされるまで,われわれはSQL Serverのメジャー・アップグレードなしに,5年という長い時間を過ごしてしまうことになる。革命的な変化は素晴らしいものだし,時々は必要なものだが,亀が学んだように,ゆっくりと着実に進むことが競争に勝つのだ。私はこう信じる。風車に立ち向かい,Longhornのリリースが遥か彼方になってしまうのを見るよりも,WinFSはなくとも,亀のようにLonghornを出荷することがMicrosoftにとって最大の利益になるのだと。Longhornのクライアント版は2006年,サーバー版は2007年出荷の予定である。WinFSはどちらのリリースからも抜き取られた。Microsoftはいつか統一されたストレージを提供するだろう。しかし,そういう変化を急がせるMicrosoftにとって,その変化はあまりに重大に過ぎて急には実現できない。

編集部注:クライアント版には簡易検索機能が付き,サーバー版が出るころに,WinFSはアドオンとして提供される(既報)。