(Paul Thurrott)

 Windows XP Service Pack 2(SP2)を導入する場合の懸念について米Microsoftに取材したところ,XP SP2を自分の環境に公開するために必要なすべての情報とツール群が,ようやくMicrosoftのWebサイトで入手できるようになったという,いいニュースを聞いた(最後のリンク集を参照)。

 ただし,残念でちょっと驚いたことに,この情報がこれまではベータの形でさえも公には入手できるようになっていなかったことだ。こういう情報を事前に出さないということは,Microsoftも改善してもらいたいところだ。

600個の追加されたGPOに
ホワイト・ペーパーをリリース

 XP SP2単独で,完全なWindowsのリリースとほぼ同じくらいたくさんの新しいグループ・ポリシー・オブジェクト(GPO)を備えている。Microsoftによれば,オリジナル版Windows XPのリリースが,約800個のGPOを持っているのに加え,609個にも上る新しいGPOを追加している。そして最近まで,その新しいGPOのどれ1つについてさえ詳細なホワイト・ペーパーに完全な記載がなかった。

 しかし,グループ・プロダクト・マネージャのBarry Goffe氏は,私が報じた前述のGPO数はいくらか誇張されていると言った。「その大部分はInternet Explorerの中にあり,ゾーンごとに約50ほどだ(全体では約250)。だから最初にそう見えるのに比べて,実は全然怖くないのだ」という。

 ごく最近になって利用可能になったグループ・ポリシーを使って,XP SP2の特徴を変更する方法を解説しているホワイト・ペーパーが間もなく提供される。Microsoftは,SP2の製品候補版(Release Candidate:RC)の段階で,この変更に少し役に立つAdministrative Template Format(.adm)ファイルを出荷している。現在は,これらの機能を解説したExcelのスプレッド・シートも含まれる最終版を入手できる(該当サイト)。こうした機能を徹底的に勉強して,SP2の公開を実際に修正できるようになるまでは,ちょっと時間が必要だろうが,できるだけ早くご報告するつもりだ。

NX機能で粗悪アプリがクラッシュ
最終的にはシステムだけを有効に

 それまでの間,XP SP2内部の詳しい情報について興味をもたれるかもしれない。Goffe氏は,MicrosoftがSP2の公開の最適なスケジュールを調整するために,OEMパートナや法人顧客と密接に作業を進めているところだと語った。XP SP2は多くの点を変更するため,Microsoftは「The Book of Springboard」と呼ばれる文書を作った。この文書は最終的に「Changes to Functionality in Microsoft Windows XP Service Pack 2」という名前で公開されて定期的にアップデートされている(該当サイト)。最新版は200ページ以上の長さに達している。

 Microsoftが,文書をそんなに頻繁にアップデートしなければいけなかった理由の1つは,時がたつにつれて,XP SP2の内容が微妙に変化したからた。例えば,No execute(NX)機能は,ひどい作り方のアプリケーションではエラーを引き起こすという特定のバッファ・オーバーラン・エラーを防ぐのに役立つ。Goffe氏は「世の中にはひどいコードで書かれたアプリケーションがたくさんあることが分かったよ(残念だが彼は名前を挙げるのは拒んだ)。こういうものの多くは,ひどいポインタの扱いをしている。厳格なハードウエア上でそいつらを走らせると(アプリケーションがクラッシュする)……」と語った。

 さらに「SP2におけるわれわれの最初のアプローチは,OSの至るところでNXを有効にすることで,RC1ではNXを実装したし,NXの対象外のアプリケーションにする“例外リスト”を使うことができた。この機能は,アプリケーションがNXのせいでクラッシュしたときに起動する。それで,ユーザーが使おうと思っているアプリケーションのかなりのものが,クラッシュしていることが分かった。そこでわれわれは,ユーザー・モードのアプリケーション用にはNXを切ることにしたが,システム・コンポーネント用には有効なままにしている。だから,すべてのMicrosoft製品が使うメモリー・ビットは(NXで)保護されるわけで,われわれはそれがすごいことだと考えている。でも,デフォルトではユーザー・モードのアプリケーションに対してはオフになっている」と語る。さらに,Goffe氏はNXが有効な状態でアプリケーションが動くように,ユーザーがアプリケーションごとに選択して起動できることも指摘した。

/gsフラグ付きでXP SP2をコンパイル
将来はWindows 2003 SP1も

 また,開発者は「/gs」のフラグつきで,XP SP2をコンパイルした。これはプログラマ以外の人には興味がないかもしれないが,新しいシステムを使うすべての人に直接影響がある。というのは,これによりリアルタイムなメモリー・スキャン処理のためにランタイムの監視レイヤーが追加されるからである。普通はこうした活動をさせるとオーバーヘッドになったり性能を低下させるものだ。しかし,Goffe氏によると,この特徴は強く必要とされたので,性能への影響をなるべく小さくするよう,Windowsチームががんばったという。

 その結果は非常に良好だったので,実際にMicrosoftはWindows Server 2003 SP1も「/gs」フラグを有効にして再コンパイルするつもりだ。「サーバーには,/gsフラグはとてつもない影響がある。だから,Windows 2003 SP1でそれをやるのは来年の話だ。テストではIIS(Internet Information Services)への影響はほとんどない。そういった高度にチューンされたアプリケーションではその影響は大きい。特にそれから得られる利益と比べた場合はね」と彼は語った。

 これまでのところ,このサービス・パックの企業向けダウンロードは例を見ないほど速く,ほとんどサポートの電話はなかった。しかし夜はまだ長い。Goffe氏によると,XP SP2の272Mバイトのフル・ネットワーク・インストール・バージョンが,3日間で百万回以上ダウンロードされ,Microsoftは12日の木曜日の時点で,およそ200Tバイトのデータを顧客に送っていたという。「みんながそのことにすごく興奮している。顧客はこれがSP2をXPに入れる最初のユーザーになると言っている。セキュリティは格段に重要視されるナンバー1の問題だ。われわれはまさに顧客たちに対してそれを実行しようとしている。それは顧客の権利だし,彼らが必要性を求めていたことだ」と彼は語る。

 なお,64ビット用のWindows XP SP2の最終版を待っているユーザーは,今年末まで待たなければならないだろう。MicrosoftはItanium用と64-bit Extended Systems用の両方のXP用バージョンをリリースするだろう。

EULAが変更に
 最後に,陰謀のうわさが好きな連中は,次のことに注目している。MicrosoftがXP SP2で「エンドユーザー・ライセンス契約(End User License Agreement:EULA)」の一部を変えた。けれども今回の効果は圧倒的にポジティブだ。従来のサービス・パックのEULAは,各管理者がそれらのリリースのCD-ROM版を配ったり,またはそれをコピーすることを禁じていた。その制約が,SP2ではなくなっている。つまり,Microsoftは可能な限り多くのXPベースのマシンに,可能な限り速くこの更新が広く適用されることを望んでいる。

関連情報サイト
●Changes to Functionality in Microsoft Windows XP Service Pack 2
●Deploying Windows Firewall Settings for Microsoft Windows XP with Service Pack 2
●Group Policy Collection
●Group Policy Settings Reference for .adm files included with Windows XP Professional Service Pack 2
●Managing Windows XP Service Pack 2 Features Using Group Policy
●Manually Configuring Windows Firewall in Windows XP Service Pack 2
●Programs that may behave differently in Windows XP Service Pack 2
●Temporarily Disabling Delivery of Windows XP Service Pack 2 Through Windows Update and Automatic Updates
●Windows XP Express Installer
●Windows XP Full Network Install
●米MS,自動更新やWindows UpdateによるXP SP2のダウンロードを制御するツールを公開