(Paul Thurrott)

 米Microsoftは6月14日(米国時間),Virtual Server 2005の製品候補版(RC)を発表した。同社のサーバー向け仮想マシン・ソフトのプレビュー版となる。この製品はVMwareのサーバー向けソリューションと真っ向から対決するため,その市場で短期間にシェアを伸ばすことはないと思われる。しかし,サポート切れを間近に迎えているWindows NT 4.0サーバーがまだ現場で多数稼働していることを考えると,Virtual Server 2005はMicrosoftの製品統合戦略に潜む大きな穴を埋める製品になるだろう。さらに重要な点は,NT 4.0でまだやりくりしている大企業や中規模の企業にとって,Virtual Server 2005は検討する価値があるということだ。

 Microsoft Office Live Meeting 2003を使った最近のバーチャル・ミーティングで,Virtual Serverグループ・プロダクト・マネージャのEric Berg氏と,Virtual Serverプロダクト・マネージャのWard Ralston氏は,Virtual Server 2005の製品概要を説明してくれた。RC版も入手したので,今後数週間,筆者はそれを詳しく調べていくことになるだろう。これまでに発見したことだけでも面白そうだ。MicrosoftがVMwareに勝てる製品に仕上げているかどうかは分からないが,Virtual Serverは明らかに十分な競争力を備えており,バージョン1.0の製品にしては出来が良い。

Connectix買収から1年で姿を現す
狙いはサーバー移行

 Microsoftの過去の企業買収について詳しくない人のために言うと,2003年,Microsoftが米Connectixの事業資産のほとんどを買い取った理由は,まさにVirtual Serverを手に入れたいがためだった。Microsoftはこの取引の一環として,Windows PCとMacintoshの両方で動くクライアント用ソリューションの「Virtual PC」も買い取った。Microsoftが2003年初めにConnectixに接近したとき,Virtual Serverはまだラフ・スケッチのような状態だった。

 「その当時はアルファの段階だった」とBerg氏は言うが,明らかに将来性があった。それはスクリプティングに対応したユニークなCOMインターフェースを備えていたからである。その後,数カ月でMicrosoftはConnectixチームを自社に移し,Virtual Serverを設計し直して,その製品をセキュリティ評価にかけた。このチームは最初のVirtual Serverのベータ版を2003年11月に出し,ちょうど6月14日にRC1を出荷した。Berg氏は,2004年末に同製品をリリースする予定だと語った。

 まだバージョン1.0の製品なので,Microsoftはいくつか主要な利用形態だけに重点を置いて開発している。その利用形態を,サーバー向け仮想マシン市場を開拓したVMware GSX ServerやVMware ESX Server,VMware VirtualCenterなどの競合製品と比べると面白い。Virtual Server 2005は,(1)ソフトウエアのテスト,(2)レガシー・アプリケーションの移植作業,(3)サーバー統合――といった仮想マシン市場で恐らく最重要な3つの分野をターゲットにしている。NT 4.0からの移行シナリオについても,かなり強調しているように感じられる。

 「Microsoftは最も規模の大きいシナリオ(だけ)を狙っている」とBerg氏は語る。「VMwareは当社とは違うことにアプローチしている。彼らは仮想マシンの会社であり,それがVMwareの唯一の製品だからだろう。Microsoftのアプローチはやや異なっていて,問題を正面から解決するのに適した技術をベースにしている」。

 Virtual Serverは,「Virtual Server Administration Webサイト」から管理される。このWebサイトは「Windows SharePoint Services(WSS)」や「Windows Rights Management Services(RMS)」で見かけるツールによく似ている。MicrosoftはVirtual Serverを他の管理ツールとも統合しようとしている。Active Directory(AD)や「Microsoft Operations Management(MOM)2005」(新しい管理パックのアドオン経由),「Systems Management Server(SMS)2003 Service Pack 1(SP1)」,「Automated Deployment Services」(ADS,Virtual Serverマイグレーション・キット経由)――などのツールである。そうすることで,管理者が日常使っているツールからVirtual Serverにアクセスする手段を提供する。

Virtual Serverが切り捨てたもの
 一方,Virtual ServerにはVMwareが提供しているようないくつかの優れた特徴が欠けている。例えば,最近普及しているUSBキーチェーン・デバイスの接続に不可欠な互換性がない。そして,Virtual Serverはしばらく64ビット・プラットフォームをサポートせず,VMwareが将来サポートする32ビット・システム上での64ビット仮想マシン(VM)はサポートしない可能性がある。さらに,Virtual ServerはWindows Server 2003上でしか動作しない。ただし,開発用に限定して購入すればWindows XP上でも稼働できる。そして最後に,Virtual ServerはMicrosoft以外のOS(Linuxなど)を直接はサポートしない。その大きな理由は,Microsoftがこの製品をNT 4.0の移行用のソリューションと見なしているからである。

 アーキテクチャからみると,1仮想マシン(VM)当たり最大3.6Gバイトまでのメモリーと,各VM専用に1つのCPUを割り当てられるなど,Virtual ServerはVMwareが提供しているものとよく似ているように見える。Virtual Server Standard Editionは4ウエイのサーバーをサポートし,Enterprise Editionは最大64GバイトのRAMを搭載する32ウエイのサーバーまでスケールアップする。このシステムはかなりローエンドのハードウエアでもうまく動作するようだ。筆者が見たデモ・システムは1Gバイトのメモリーを搭載した動作周波数1GHzのPentium IIIマシンで,3つのVMをほとんど無理なく動かしていた。筆者は性能を評価するために,この製品を自分のサーバーでテストしてみるつもりだ。

 実際のところ,MicrosoftとVMwareの製品のどちらが優れているかを明らかにするには,Virtual Serverを試す時間が必要であり,両社に将来の話をインタビューする必要もある。だが,Microsoftの統合管理のアプローチのほうが,Microsoft好きの現場から良い点を取れるように思われる。一方,VMware固有の機能やMicrosoft以外のプラットフォームをサポートすることにより,VMwareが他の部分では点を稼ぐだろう。こうした形の競争は両社にとってより良い製品を生み出す原動力になるはずだ。Virtual Server RC1をテストしてみたいのなら,MicrosoftのWebサイトから無料でダウンロードできる。