(Paul Thurrott)

 Windows XP Service Pack 2(SP2)については,今年もう既にたくさん書いてきた。XP SP2は非常に重要で,きっとWindows XPそのものが登場したときと同じくらいビジネス上で重要なWindows関連のリリースになるだろう。私は過去数カ月の間に,XP SP2のセキュリティ重視の更新が,OSとアプリケーションにどんな影響を与えるかを調べるために,様々なマシン上で試用してみた。XP SP2を適用しても,私のアプリケーションとハードウエアは,今までのところすべて非常にうまく動いている。ただ1つ例外があるとすれば,XP SP2を適用したクライアントからのアクセスに,Netgearのネットワーク接続プリント・サーバーが応答しないというトラブルがあったくらいだ。

 Windows XPユーザーの中でも特にTablet PCユーザーは,このアップグレードに感動するだろう。全Windows XPユーザーを対象としたバグ修正とセキュリティ強化機能に加えて,Tablet PCユーザーは,OSが「Windows XP Tablet PC Edition 2004」と呼ばれる新しいTablet PC OSにアップグレードされたのが実感できるだろう。「Lonestar」という開発コード名で呼ばれているこの新Tablet PC OSは,私がこれまで評価したWindowsの中でも完成度の高かった現バージョンに比べ,さらに劇的に拡張されている。

XP SP2に合流させられた
XP Tablet PC Edition 2004

 Microsoftは元々,XP Tablet PC Edition 2004をXP SP2とは別に提供する計画を立てていた。2003年末に提供されたMedia Center PC向けのアップデートの「Windows Media Center Edition(MCE)2004」(開発コード名は「Harmony」)とほぼ同時に開発が完了していた。

 だが,XP SP2によるセキュリティ強化に当たって,Microsoftはこれらのリリースを一緒に提供するほうがよいと考えた。そこで,同社はHarmonyアップグレードの提供を見合わせるようPCメーカーに依頼した上で,XP MCE 2004とXP Tablet PC Edition 2004の両方を,XP SP2に統合した。この影響で,XP SP2はすべてのWindows XPユーザー向けだが,中でもMedia Center PCとTabletPCのユーザーは,他にはない大幅な機能拡張を特別に手に入れられることになる。

 ここではMedia Centerに関しては長く語らない。XP MCE 2004での機能拡張を知りたい場合は,SuperSite for Windowsサイトにあるレビュー(該当サイト)をチェックしてほしい。今回の話とは別だが,XP MCE 2004にはいくつか大きな改良も加えられている。

インプレースで手書き入力が便利
 オリジナルのXP Tablet PC Editionは入力パネルのウインドウを持ち,通常これは画面の最下部に組み込まれている。このパネルは,ペンを使うユーザーがテキスト・ボックスなどのユーザー・インターフェースにテキストを入力できるようにするものだ。しかし,Tablet PCを意識して設計していないアプリケーションだった。入力パネルはおしゃれで,Tablet PCが従来のノートPCを超えると,Microsoftに言わせるだけのものだったが,このツールを使うのはちょっと厄介だ。

 単純なWebフォームについて,入力し終わるまでに必要な手順を考えてみよう。スタイラス(ペン)で最初のフォーム・フィールドを選択してから,入力パネルをクリックし,それから入力したい値を書き込むことになる。ここで手書き認識ソフトウエアが書いたものを正確に理解してくれたら,次のフィールドをクリックするわけだが,そうでなければ入力された値をハイライトさせて修正しなければならない。この操作をそれぞれの入力フィールドで繰り返すわけだ。

 XP Tablet PC Edition 2004はもっと簡単にデータを入力できるようにする。画面の最下部にある改良版の入力パネルも依然として使えるのだが,このバージョンからはフォームのフィールド上で直接編集するインプレース機能を備えている。フィールドをスタイラスでクリックすると小さな入力パネルが右側に現れるため,フィールドと画面の一番下とを行ったりきたりする必要はない。

 このインプレース編集の機能も便利だが,入力パネルはさらに改善されている。テキストを入力するときには,フォームに入力したテキストが正しいことをまず確認した上で,いつでもどこでもそれを編集できるようになる。なんと素晴らしいことか。

開発も楽,リコンパイルせずに機能追加
 開発者向けにも,XP Tablet PC Edition 2004は新しい能力を提供する。新しいソフトウエア開発キット(SDK)を使うと,開発者は自分たちのアプリケーションに,この新しいフォーム・フィールドの内容に合わせて動作する能力を,リコンパイルせずに追加できる。リコンパイルの代わりに,そのSDKは開発者が自分のアプリケーションが導入されたフォルダにコピーすればよい,シンプルなXMLファイルを生成する。

 この動作は次のようになる。特定の値(例えば状態を示す名前や数)しか含まないフォーム・フィールドを作れば,Tablet PCの認識エンジンを制限して,認識をより正確に動作させられる。つまり,あるフィールドには数字しか入力されないことを,Tablet PCが認識していれば,ユーザーがきちきちと引っかいた内容を,文字集合全体ではなく,数値にしかマッチさせないようにする。

出来の良さに
普及に自信を持つMS

 Microsoftは手書き認識とTablet PCに関する壮大な実験を実施してきた。しかし,多くの実りを結んだかどうかを疑っている人もいるかもしれない。結局,PCメーカーは2003年の締めを迎えるまで,売れ行きの不振を嘆いていた。

 だがMicrosoftは楽観的である。Tablet PCを特に広い範囲のソリューションで使うヘルスケア,販売,製造,教育などの重要な業種別市場では,Tablet PCは成長力のある市場のすき間を確保したように思える。そして,同社は最終的にはTablet PCのソフトウエアをすべてのノートPC上で稼働させるというビジョンを持っている。PCメーカーは2003年われわれが眼にした製品ラインアップよりもさらに劇的に広げる,幅広いTablet PCのハードウエア製品を発売してそのビジョンにこたえている。

 当初のTablet PCデバイスは,性能の低いPentium IIIプロセッサとバッテリの寿命の短さに苦しめられた。しかし,2004バージョンは強力で消費電力を抑えたPentium Mプロセッサの登場で恩恵を受けている。PCメーカーはその一方で,様々なサイズや形でTablet PCを出荷しており,いくつかの会社(特にGateway)はちょっとの追加料金だけで,既存のノート型のTablet PC版さえ提供している。こうしたマシンはTablet PCの将来を表すもので,メインストリームでの成功が間違いないことを示しているのではないかと私は思う。私はいずれいくつか最新のTablet PC製品をレビューするつもりだが,そのときにこの仮説も検証してみたい。

 XP Tablet PC Edition 2004はXP SP2の一部として2004年6月ころに出荷されるだろう。既存のTablet PCユーザーには無償のアップグレードとして提供され,MicrosoftのWebサイトからダウンロードできるようになる予定だ。

編集部注:「Windows XP Tablet PC Edition 2004」は,2004年4月末に「同2005」に名称を変えました。