Paul Thurrott 著

 米国カルフォルニア州アナハイムで10月8~11日に「MEC 2002」が開催された。MECは,Microsoft Exchange Conferenceとして始まって以来進歩を遂げ隆盛を極めたようだ。今回のMEC 2002は,Windows .NET Server 2003,Active Directory(AD)と,Exchange Serverを含む種々の.NET Enterprise Serversに関するトラックを含んでいる。これと同じくMicrosoftのサーバー製品群も拡大の一途をたどり,最近はやや混乱している。

 以前はMicrosoftのサーバー製品群をまとめて語るのは簡単だったものだ。1996年のサーバー製品のオーバービューを思い出してみると,同社はWindows NT Server 4.0,Microsoft Mail(Exchange以前の時代のメッセージングAPIであるMAPIベースのメール・サーバー),SQL Server 6.5,SNA Server(IBMメインフレームに接続するための製品),そしてInternet Information Server(IIS)1.0といった製品を薦めていたときで,それらはすべてBackOffice Server製品群の一部だった。そのときに立ち戻ってみると,BackOfficeが言葉の上では重大な役割を持つもののように見えた。

6分野にまたがるサーバー製品群は徐々に統合へ

 あなたは今後1年間にこれらの製品のいくつかが統合されるのを期待していいが,そのときまで紛らわしいサーバー製品の組み合わせを扱わなければならない。それぞれの製品グループを理解するのを助けるために,私は後述するように,機能性に従ってそれらを分類してみた。

(1)インフラ向けとして,マイクロソフトは「コア・サーバー製品」つまりWindows Server,Exchange Server,SQL Serverを提供している。同時にではないが,これらの製品の将来版は統合され,MicrosoftはSQL Serverベースのデータ・ストアを使うはずである。

(2)企業内のPCや人員そのほかのリソースを管理するために,AD,Systems Management Server(SMS),Microsoft Operations Manager(MOM)を提供する。

(3)WebアプリケーションとWebサービスを管理するために,MicrosoftはApplication CenterとInternet Information Services(IIS)と種々の.NETベースのサポート・サービスを提供する。

(4)旧システムとの互換性のためにはHost Integration ServerがSNA Serversに取って代わり,Windows Services for UNIX(SFU)がUNIX環境の中にWindowsを統合するためのツールを提供する。

(5)文書や時間のような企業内のリソースを管理するために,MicrosoftはMobile Information Server,SharePoint Portal Server,Project Serverを提供する。

(6)eBusinessサーバー製品は,XMLのようなオープン規格を採用するように変化している。BizTalk Server,Commerce Server,Internet Security and Acceleration(ISA)Serverのほか,MEC 2002で正式に出荷開始したContent Management Server 2002がある。

現状では境界が不明瞭,そして高価

 Content Management Serverは実にユニークな製品だ。Content Management Serverは,顧客やパートナ,一緒に作業する同僚と通信するためのビジネス・ツールである。ミッション・クリティカルで豊富なコンテンツを持ったWebサイトを,作成/配置/保守するために,より速く費用対効果が高い方法を提供する。

 しかし,同製品は分かり難く,同社の他のWebサイト構築ソフトと比較してみても,特徴は不明瞭である。例えば,一般に内部使用のみに限定してイントラネットやエクストラネット・ベースのWebサイトを作るためには,SharePoint Portal Serverを使えば,ユーザー同士がWebインターフェースを使ってドキュメントを共有して共同作業ができてしまう。Commerce Serverはe-Commerce用Webサイトの作成を容易にする。もちろん,これらの製品のすべてがIISから作られている。見たところこれらのサーバー製品間の区別は,それらが作るサイトが異なった役割を演じるという点である。しかし,それが紛らわしくて区別が付かないのだ。

 そしてこの組み合わせにBizTalk Serverを加えて,他社製品とXMLで連携すると,高い値札を付けた奇妙なサーバー製品の組み合わせを手にすることになる。貧乏会社が内外にサイトを公開し,ユーザーやパートナのシステムにリンクする必要があると哀れなものである。それにだれがこれらすべての製品を管理する技術を持っているだろうか? Microsoftの管理用サーバー製品群は2003年に統合されるが,Webサイト構築用サーバー製品も統合するべきである。

 Microsoftは,将来の潜在的競争者を妨害しようとするあまり,現在の位置たらしめた成功の公式「単純化」を忘れたようだ。単純化は,同社の現在の企業戦略から全く欠けている。同社の中で単純明快なものはただ1つ,悲しいことにライセンス体系だけである。そしてあなたはそれを「高い!」の一語で言い尽くせる。

 MicrosoftはUNIX式の価格設定モデルを採用したが,それは一般にプロセッサ当たりの価格設定を意味する。例えば,BizTalk Serverの価格はStandard Editionではプロセッサ当たり7000ドル,Enterprise Editionでは2万5000ドルである。そしてこれらの製品の大部分は単独では利用できない。例えば,Content Management Server 2002は,Windows 2000 Serverかそれ以降が必要だし,もう1つSQL Server 2000という役に立つが高価なソフトを必要とする。そして,あなたは従業員がコンテンツを書けるようにクライアント・マシンにOffice XPを導入したくなり,開発者向けにVisual Studio .NETを導入したくなる。そして,Microsoftのサーバー製品は,がちがちに統合化された環境を構成する。

 ちょっと神経質になり過ぎただろうか? もしユーザーがこれらの製品に接する最も明快な方法が,単にそれらを無視することだとなれば,Microsoftは本当に調子の悪いことをしている。そして,同社がまじめに企業に対しエンド・ツー・エンドのソリューションを提供する気があるのなら,サーバー製品を単純化する必要がある。考えられるだけの製品のすきますべてに異なるサーバー製品を提供してはいけない。皮肉にもMicrosoftのマネージメント製品は処理しやすいどころのものではない。こういう状況が変わるのを私は見たいものだ。