ニッセンでは2002年の春から,Windows Server 2003(当時の名称はWindows .NET Server)ベータ版の提供を受け,テストやActive Directoryの設計を行ってきた。RC(製品候補)版になってからのテスト環境では実際に各拠点にいくつかのテスト・サーバーを設置して,Windows NT 4.0ドメインからActive Directoryへの移行テストが実施された。完成したWindows Server 2003のActive Directoryは基本的にシングル・ドメインで,例外的に関連会社との間は,外部委託のActive Directoryドメインを経由して,信頼関係を結んでいる(図3)。また,コール・センターや物流センターなど離れた事業所などは,サイトを分けて配置している(図4)。NTドメインでは,セキュリティの境界はドメイン分割のみであったが,Active Directoryではシングル・ドメインの状態で子会社ごと,部門ごとに設定できるようになった。
導入の苦労について,横手氏は「われわれの技術者ほとんどがWindows NT 4.0に慣れていてActive Directoryについてもほとんど知識がなかった。Windows Server 2003の管理ツールなどの新しいインターフェースや操作・管理体系に慣れるのに時間を要した。そういった敷居の高さがある」。また,Active Directoryへ移行してKerberos認証が導入されると,クライアントはNTLMからKerberos認証に変わる。従って,混在状態が続くと認証のパフォーマンスが悪くなる懸念がある。これも横手氏らにとっては気がかりだ。 すでに,ニッセンではWindows Server 2003製品版を用いた最終段階のテストが終わっている。Active Directoryの設計はマイクロソフトの協力の下で完了しており,本番環境への導入ももうすぐに開始される。実際の導入は情報システムセンターのWindows NT 4.0 PDC(プライマリ・ドメイン・コントローラ),BDC(バックアップ・ドメイン・コントローラ)から開始され問題がないことを注視しながら,コール・センターのうちの1拠点のBDCを移行して問題がなければ全拠点の移行を同時に進める。さらに将来は,無線LANを情報インフラに取り込む予定がある。そのときにWindows Server 2003における802.1xを用いた無線LANセキュリティの強化に期待している。 2004年にはアプリケーション・サーバーも移行へ まだ,本番環境の移行が緒に付いたところである。これが完了次第,順次ファイル・サーバー,データベース・サーバー,アプリケーション・サーバーの大部分もWindows Server 2003へと移行する予定だ。最後にアプリケーション・サーバーが移行するのは,2004年になる。これらの一連の導入に並行するように,グループウエアとして利用しているExchange 5.5をExchange 2000へ移行する予定だ。Exchangeに関しては社内業務の依存度が高く,「止まると社内でパニックになる」という。新しくリリースされるExchange Server 2003を待つよりは,安全性を見てExchange 2000 Serverにしたという。 ニッセンのWindows Server 2003によるActive Directoryの導入決定は,その特色ある情報システムに対する考え方と,それを受け入れることにより結果を出してきた会社組織との信頼関係の上に成り立っている。同社の導入事例においては,Windows Server 2003ならではの新機能を使いこなすわけではない。あくまでActive Directoryをしっかり入れることが,スピーディでダイナミックな企業を支えているのである。 <会社概要> 会社名:ニッセン 本 社:京都府京都市南区吉祥院西ノ茶屋町79番地 社 長:片山利雄 設 立:1970年4月10日 資本金:76億6551万円 (2002年12月20日) 従業員数:840名(2002年12月20日) URL :http://www.nissen.co.jp/ |
ニッセン p2
限界に近付きつつあったNTドメイン
2003 ADドメイン移行で運用管理を軽減
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