マイクロソフトが主催するWindowsエンジニア向けカンファレンス「Tech・Ed 2005 Yokohama」が8月2日に開催,2日目となる8月3日にマイクロソフトのDarren Huston社長と米MicrosoftのS.Somasegarコーポレート・バイス・プレジデントが基調講演を行った。講演では2005年末から2006年初頭にかけて出荷予定の「SQL Server 2005」「Visual Studio 2005」「Windows Server 2003 R2」の3製品について,デモを交えてアピール。開催中の個別セッションでも,これらの製品を扱ったラインアップが並んでいる。

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Huston社長が日本語版の発表日を明らかに
 基調講演ではまず,Huston社長が「今後10年間の技術の進歩は,過去10年間をはるかに上回るものになる」と述べ,日本の市場動向とマイクロソフトの今後の取り組みの展望を語った。日本のIT関連投資は2000年から2003年まで減少傾向にあったが,その後増加しており,2006年以降も増加する見込み。マイクロソフト製品は順調にシェアを伸ばしており,同社の調査によれば,2004年第2四半期ではJava開発者31%に対して.NET開発者は16%に過ぎなかったのが,2005年第2四半期にはJava開発者が36%,.NET開発者が40%と逆転したことを紹介。同様にWindows環境におけるデータベース製品の市場シェアも2003年には50%を超えていると述べた。

 マイクロソフトの今後の取り組みについては,2005年末から2006年にかけて「Visual Studio 2005」「SQL Server 2005」「BizTalk Server 2006」「Windows Server 2003 R2」「Windows Vista」「Office 12」と新製品を投入していく。さらに,Visual Studioユーザー向けのコミュニティ「Visual Studioユーザーグループ」の設立を支援し(既報),MSDNやTechNetなどによる情報提供も強化していくという。

 最後に,Huston社長はSQL Server 2005,Visual Studio 2005,BizTalk Server 2006の日本語版を11月17日に発表することを明らかにした。ただし,11月17日の時点ではライセンス体系,価格,出荷時期の発表にとどまり,実際に製品を出荷する時期は2005年末から2006年初頭になる見込みだ。

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米MS副社長のSomasegar氏がSQL,VS,R2をプレゼン
 続いて登場したS.Somasegar氏は,通信やプログラム開発手法についての歴史と米Microsoftの取り組みを振り返った後,「生産性」「ビジネス洞察力の向上」「運用性・可用性」――などの面からSQL Server 2005,Visual Studio 2005,Windows Server 2003 R2の新機能を紹介した(関連記事)。同時に日本法人社員によるデモも行った。

 SQL Server 2005のデモでは,SQL Serverのビジネス・インテリジェンス機能や可用性機能がウィザードなど用いて簡単に利用できることを実演した。ミラーリング/フェイル・オーバー機能については,設定を行った後で本稼働系のサーバーを実際に「爆破」(写真)し,自動的に待機系サーバーに切り替わることも示した。加えて,SQL Server 2005では,待機系および監視系のシステムについてSQL Serverのラインセンス料を別途支払う必要がないことも明らかにした。

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 Visual Studio 2005 Team Systemのデモでは,サーバー構成や配置などまで含めた様々なモデリング機能,テストの自動生成機能,プロジェクト管理機能について紹介した。このほかVisual Studio 2005では.NET Frameworkの拡張などもあり,Webアプリケーションやスマート・クライアント用アプリケーションの開発で50~75%ものコードの削減が見込めるという。あわせて,Visual Studio 2005 July Community Technology Preview日本語版を,8月10日にリリースすることも発表した。

 Windows Server 2003 R2のデモでは,R2の主要な新機能の1つであるADFS(Active Directory Federation Service)を利用して,別ドメインにあるWebアプリケーションにシングル・サインオンを行う方法を紹介した。Webアプリケーション側でログオン画面を表示してユーザー認証をするのと比較して,開発,運用の負担が減る,セキュリティ上の弱点となりにくい,といったメリットがある。R2は年内に開発を完了し,2005年末または2006年初頭に出荷を開始する予定としている。

「SQL,VSは安い!」
 Somasegar氏は世界における市場動向についても触れ,マイクロソフト製品の価格的な優位性について強調した。例えば同社のデータベース市場でのシェアは,ライセンス数では第1位であるのに対し,売り上げベースではOracle,IBMに次いで第3位であるという。これは1ライセンス当たりのコストが他社と比較して低いことを意味する。特に,運用性・可用性向上のための機能,ビジネス・インテリジェンス機能などを含めて考えると,これらの機能を標準搭載するSQL Server 2005のほうが,追加投資が必要になるOracle DatabaseやIBM DB2に比べてはるかに低コストでシステムを構築できることになる。今後増加が見込まれるマルチコアCPUシステムについても,SQL Serverのプロセッサ・ライセンスではコアの数に限らず1CPUとみなすため,コアの数に応じたライセンス料が必要になるOracleよりも有利になるという。

 同様に,Visual Studio 2005についても,単体ではEclipseなどの無償ツールと比較してコスト的にかなわないものの,負荷テスト・ツールやプロジェクト管理ツールなどを含めればVisual Studio 2005/同Team Systemのほうがむしろ割安となると主張した。マイクロソフト関係者によれば,同社は3月21日のVisual Studio 2005英語版の価格発表後のユーザーからの声を受けて,ライセンス体系を工夫するなどして低価格で利用できるようにする方法を検討中という。Visual Studio 2005日本語版のライセンス体系と価格については,11月17日よりも前に発表する予定としている。

(山本 哲史=日経Windowsプロ