マイクロソフト日本法人並びに米Microsoftの基礎研究所であるMicrosoft Researchは6月28日,日本における産学連携の推進組織「マイクロソフト産学連携研究機構(Microsoft Institute for Japanese Academic Research Collaboration,IJARC)」を7月1日に設立すると発表した。マイクロソフトは既に,東京大学並びに早稲田大学との間で学術交流や研究支援の提携をしているが,今後はIJARCを通じて産学連携の取り組みをより強化するという。

 MicrosoftのBill Gates会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトは,IJARC設立の記者会見で,産学連携に関する同社の取り組みを説明した。

 同氏は産学連携の意義について,「現在のソフトウエアは,『将来のあるべき姿』と比べると,単純なものだ。音声認識,視覚認識,学習システム,人工知能などは,まだまだ夢でしかない。これらを発明して,ソフトウエアをよりよいものにできれば,人々の生産性を伸ばすことができる。しかし,Microsoftだけでソフトウエアの技術革新が成し遂げられるとは思わない。ソフトウエアにおけるほとんどの進歩は,トップの大学で起きている。われわれの優れているところと,大学の優れているところを組み合わせることが欠かせない」と語った。

 また今後は,大学にとってもMicrosoftによる支援がより重要になるという。「今日の科学では,コンピュータ科学に限らないあらゆる分野で,ソフトウエアが利用されている。経済学では大量のデータ分析が欠かせないし,ゲノムや遺伝子情報の解析を進めている生命科学の分野でもそうだ。すべての科学で,ソフトウエアを活用する能力が重要になっている。Microsoftが最新のソフトウエアを提供することで,科学研究の進歩を助けることができる」(Gates会長)。

 7月1日に設立されるIJARCは,Microsoftが支援する研究テーマの選定などを行う組織である。既に,東京大学における画像検索(グラフィックス・サーチ)の研究(東京大学大学院新領域創成科学研究科相澤清晴教授),ユーザー・インターフェースの研究(東京大学大学院情報理工学系研究科五十嵐健夫講師),自然言語処理の研究(東京大学大学院理工学系研究科辻井潤一教授)が内定しているほか,今後は,プロジェクトの公募を予定している。

(中田 敦=日経Windowsプロ


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