米Microsoftは6月24日(米国時間),Windowsの次期版「Longhorn」(開発コード名)と,今年後半にリリースするWebブラウザの次期バージョン「Internet Explorer 7.0」でRSS(Really Simple Syndication)テクノロジをサポートすると発表した。RSSは,ユーザーによるWebベースのコンテンツ購読を支援する技術で,同じサイトを何度も手動でブラウズする手間を省く。

 MicrosoftのWindowsディビジョンのストラテジック・プロダクト・マネジメント担当であるGary Schareディレクタは「検索技術と同様に,RSSはWebブラウジングの革命となる。もっとも,Webブラウジングを置き換えるようなものではない。RSSの機能が最も充実するのは(IE 7ではなく)Longhornになる。LonghornではRSSテクノロジがOSと一体化する」と語っている。

 Longhornには,3つの分野のRSSテクノロジが搭載される。1つ目は,Longhornに搭載されるIE 7.0 Webブラウザで,RSSフィードを見つけるのがより簡単になる(RSSフィードとは,WebサイトがRSSによって配信しているコンテンツのことである)。また,IE 7.0でRSSフィードを閲覧できる。

 2つ目は,LonghornがRSS関連のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を備えるということである。開発者は,このAPIを利用することで,自分のアプリケーションに簡単にRSS機能を実装できるようになる。

 3つ目は,MicrosoftがRSSに独自の拡張を加えるということである。これは「Simple List Extensions」と呼ばれており,Webサイトが「ミュージック・プレイリスト」や「トップ10リスト」のようなRSSフィードのリストを配信するのを容易にする技術である。

 IE 7.0に搭載されるRSS機能は,米Apple Computerが4月にリリースしたMac OS X TigerのWebブラウザ「Safari」に実装されたRSS機能によく似ている。RSSフィードを含むWebサイトを開くと,RSSフィードがあることを示すアイコンがツールバーで点灯する。このアイコンをクリックすると,RSSフィードがブラウザの「Pretty Views」という部分に表示される。これらの作業で,購読対象のRSSフィードが「Common Feed List」というRSSフィード専用のリストに追加される。Common Feed ListはIEの「お気に入り」に似ているが,全く別の機能となる。

 また,Longhornには,RSSコンテンツを任意のアプリケーションで表示できるAPIが搭載される。Microsoftは,Office OutlookとRSSフィードを連動させる簡単なアプリケーションのデモを実施している。これは,Outlookの「予定表」のアイテムをRSSによって継続的に更新するものである。このデモはあたかもOutlookの次期バージョンのデモであるかのように見えた。そこで筆者は,来年「Office 12」の一部としてリリースされるOutlookの次期バージョンにおいて,このような機能が標準で搭載されるのではないかと思ったが,Schare氏は筆者のそのような予測を否定している。

 MicrosoftによるRSSの拡張は,既存のRSS標準仕様と同様に,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づいて,無料でリリースされる予定だ。Microsoftは,RSSは設計上,時刻ベースのデータしかサポートしていないので,このような拡張が必要なのだと説明している。Simple List Extensionsがあれば,RSSを別のシナリオで使えるようになるという。それは例えば,情報を任意のリストとして表示するようなものであるという。

 クリエイティブ・コモンズの発案者であるスタンフォード大学ロー・スクールのLawrence Lessig教授は「われわれは,MicrosoftがSimple List Extensionsをクリエイティブ・コモンズにのっとってライセンスすることに敬意を表す。クリエイティブ・コモンズは,クリエータに対して,彼らの仕事を守るとともに,その仕事が幅広く利用されるようにする手段を提供する。Microsoftが彼らの知的財産をフレキシブルに利用可能にすることは,コンテンツ・パブリッシャやRSSコミュニティなど幅広い層に対して,ポジティブなインパクトを与えるだろう」と語っている。

 Schare氏によれば,IE 7.0は今年中にWindows Server 2003とWindows XPのユーザーに対して提供される予定で,RSSの発見・閲覧・購読に関する機能が提供される。ただし,開発者がRSSベースの機能を使えるようになるAPIは提供されない。

 IE 7.0のベータ版のリリース予定時期は,依然として「今年の夏」のままである。また,当初のパブリック・ベータ版は,ブラウザにとって本当に必要な「ほんの基本的な」機能しか提供されないという。IE 7.0ベータ1は,開発者向けのものであって,エンドユーザーにとっては全く魅力的ではないという。しかし,2005年の後半にリリースされるベータ2は,多くの消費者にとってもう少し興味深いものになるだろう。

(Paul Thurrott)

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