米Microsoftはこのほど「Exchange 12」または「E12」と社内的に呼ばれる製品の計画を明らかにした。これは,2003年末に登場したExchange Server 2003の次期版で,多くの機能が強化される。Exchange 12は,OutlookとWindows Mobileそれぞれのバージョンアップに合わせて2006年に登場する見込みである。

 MicrosoftでExchange Serverグループを担当するDavid Thompson副社長は,「E12ではシステム担当者,セキュリティ,現場のインフォメーション・ワーカーそれぞれに向けた機能強化を施す。メールはミッション・クリティカルなシステムである。われわれはシステムのコストと複雑さを制御したい。また,セキュリティの高い環境を提供することで,規則とポリシーの順守によってシステム管理者が会社の資産を守れるようにする。さらに,エンドユーザーが社内だろうと社外だろうとより簡単にメールを扱えるようにしたい」と語った。

 E12は,Exchange 2003よりも多くの改善点がある。Windows Server2003と同様に,E12は簡単に設定できるロールベースのアーキテクチャを採用する予定。例えばメッセージング・サーバー,メールボックス・サーバー,パブリック・フォルダ・サーバーなど特定用途向けのサーバーを設定できる。また,ボイス・メール,TCP/IPによる電話機能であるVoIP,ファクシミリもExchangeに統合される。シンプルに改善された管理コンソールも搭載する。連続的なバックアップやWebサービス経由でのサービスの公開も可能である。E12の各Editionは,32ビットと64ビットの両方のバージョンで利用可能とThompson副社長はいう。

 セキュリティ関連では,Exchange 2003のインテリジェント・メッセージ・フィルタ(IMF)と改良されたアンチウイルス・インターフェースの機能,2005年終わりに出るExchange 2003 Service Pack 2のSender IDフレームワーク機能を受け継ぐ。スパム・メールなどを除去する機能も盛り込まれる。

 エンドユーザーのためにE12は,Outlookの次期バージョン「Outlook12(開発コード名)」と,Pocket PCやスマートフォン向けのプラットフォームWindows Mobileの次期バージョンと連携して開発される。これらの製品は,2006年に同時,またはほとんど同時に,すべて出荷される見込みだ。またExchange 2003とともにOutlook Web Access(OWA)も大幅にアップデートするだろう。そして,E12は統合メッセージング・システムとしてのニーズを単体で満たすものになる。

 一方でE12は,現在の基盤であるJetデータベース・エンジンを使用し続け,以前にKodiak(訳注:Exchange Server次期版の開発コードだったが,既にリリース中止を発表している)で採用されるとされた新しいデータベース技術は使わない予定である。

 Thompson副社長は,この決定の詳細をあまり説明したがらなかったが,WinFS(Windows Future Storage)という新しいストレージ・システムの開発遅れが原因と感じた。しかしながら,E12はユーザーのニーズに合わせた製品で,ユーザーが現在の製品で持っている苦情と問題の多くを解消しそうだ。

 E12が2006年に出荷される前に,MicrosoftはExchange 2003 SP2により,モバイル用とスパム・メール対策用の各種機能拡張やパブリック・フォルダ用の改良された管理インターフェースを提供する。

 またMicrosoftは,Exchange 2003出荷の後にWebサイトでBest Practices Analyzerなどの多くのツールを提供している。これらのツールも,E12に盛り込まれるだろう。

(Paul Thurrott)

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