マイクロソフトは9月30日,同社の企業向けマーケティング活動に関する記者説明会を開催した。ビジネス&マーケティング担当のアダム・テイラー執行役常務が,同社の各ビジネス・グループの現況について触れ,同社の7ビジネス・グループの中でも唯一日本に進出していない「ビジネス・ソリューション」事業について「日本でのビジネス展開を検討し始めている。2005年は日本市場を理解するための準備期間に当てる」と述べた。

 マイクロソフトのビジネス・ソリューション事業は,2002年に同社が米Great Plainsを買収して始まった事業。主な製品に中小企業向けERP(Enterprise Resource Planning)製品である「Great Plains」や「Microsoft Business Solutions-Axapta」,CRM(Customer Relationship Management)製品の「Microsoft CRM」などがある。同事業に従事する社員数は3900人で,25万社のクライアントがあるという。

 日本でも今年3月に「マイクロソフトビジネスソリューション本部」を設立。本部長には保々雅世氏(元ヴィリアネット・ジャパン社長)が就任した。保々氏は独SAPで「SAP R/3」の日本向け開発に携わった経歴を持つという。テイラー執行役常務は「ERPやCRMに関する日本市場の特殊性に考慮し,適切なパートナ,顧客,ビジネス・モデルを見つけられるよう準備にはできるだけ時間をかける」と述べ,日本市場に参入するかどうかについての決断も,2005年以降に決断なると語った。

 テイラー執行役常務はこのほか,Windowsクライアント事業やオフィス(Information Worker)事業,サーバー/開発ツール事業などにも触れた。Windowsクライアントに関しては当面,Windows XP Service Pack 2(SP2)の啓蒙活動や,Windows 9x系からWindows XP Professionalへの移行に注力すると述べている。次世代WindowsクライアントであるLonghorn(開発コード名)に関しては「登場まで2年以上かかる」とし,企業向けの新機能についても「OSの展開やクライアント管理,セキュリティ保護がさらに簡単になるほか,新しいAPI(WinFX)によって,業務用アプリケーションの開発生産性が向上する」と述べるにとどまった。

 オフィス事業に関しては,Office 2003に追加されたカスタマー・フィードバック機能についてアピール。例えばOffice 2003のMicrosoft IMEは,ユーザーが辞書に追加した単語をマイクロソフトに送信する機能などが追加されたため(「カスタマエクスペリエンス向上プログラム」に参加したユーザーだけが対象),「Office Updateサービスで提供しているIME辞書のアップデートは,ユーザーから集めた新しい単語が元になっている」(テイラー執行役常務)と語っている。

 サーバー/開発ツール事業に関しては,来年にリリースする予定のWindows Server 2003 Service Pack 1(SP1)に触れ,Windows XP SP2に搭載されたものをベースとするセキュリティ強化機能が追加されることや,VPN(仮想プライベート・ネットワーク)経由で社内ネットワークにアクセスしようとするクライアントPCについて,接続前にセキュリティ診断などを実施する「検疫機能」が追加されることをアピールした。

(中田 敦=日経Windowsプロ

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