マイクロソフトは9月10日,東京都内で「迷惑メール対策技術セミナー」を開催し,マイクロソフトが推進する「Sender ID」や,電子署名を使う「DomainKeys」などの送信者認証技術について啓蒙活動を行った。

 米Microsoftのアラン・パッカー セーフティーテクノロジー&ストラテジー開発部門担当ディレクタ(写真1)は,「迷惑メールの50%以上がFromをなりすましている。送信者を認証する仕組みがあれば,送信者は本人であることを証明できるし,受信者は迷惑メールを受け取らずに済む。双方にメリットがある」と,送信者認証技術の必要性を訴えた。

 Sender IDは,送信者がメール送信時にサーバーのIPアドレスをメールに付けておき,受信側でこのIDをDNS(ドメイン・ネーム・システム)に問い合わせて,ドメイン名がなりすましでないことを確認する。DomainKeysはPKI(公開キー基盤)を使って,メールのヘッダー部分を暗号化して送信し,改ざんやなりすましがないことを確認できる。

 Sender IDは,あらかじめDNSにIPアドレスを登録しておく。メール・サーバー・ソフトがSender IDに対応する必要があるものの,導入が比較的簡単なのが特徴。一方,DomainKeysはPKIの構築やクライアントのメール・ソフトの変更などで手間がかかる。だがSender IDがドメインだけしか認証できないのに対して,DomainKeysは送信者個人を確実に認証できるメリットがある。

 送信者認証はメール・サーバー側で処理され,なりすましでないメールであることが分かると,受信許可リストとの照合に進む。続いてコンテンツ・フィルタでのチェックなどを経て,ユーザーの受信ボックスへメールが届く。現行の迷惑メール対策ソフトは,受信許可リストの設定やコンテンツ・フィルタ機能などを備えているが,迷惑メールは送信元のアドレスをなりすましているため,完全に除去できていない問題があった。

 米SENDMAILのデーブ・アンダーソンCEO(写真2)は,「MSNやYahoo!,大手銀行,大手ネット企業などは,すぐにSender IDを導入するだろう。これだけで米国でやり取りされるメールの40~45%に達する。Sender IDで認証をしたメールは,2004年末までに50%,2005年末までには100%になるだろう」と見通しを示した。

 アンダーソンCEOは,「送信者認証が普及した時代になると,メール送信業者にとって新しい世界に入る」という。「配信業者は,受信者が読みたいと思う質の高い内容だけ送り続けなければならない。1通でも受信者を怒らせるようなメールを送ってしまうと,受信許可リストから外され,無料の広告手段を失ってしまう。再度受信許可リストに入れてもらうためには,大きな努力が必要になるだろう」(同)と述べた。

(坂口 裕一=日経Windowsプロ