米Microsoftは5月24~28日(米国時間),米サンディエゴで第12回となるIT技術者向けのカンファレンス「Tech・Ed 2004」を開催している。初日(5月24日)にMicrosoft CEOのSteve Ballmer氏による基調講演が行われた。

 午前9時の開演予定であったが,既に7時過ぎには続々と参加者が会場に詰め掛け,8時過ぎには会場となっているホール扉の前に人が並び始めた。開演20分ほど前になってようやくホールに入場できた。開演まで少々時間があるが,それまでの間は目前の巨大スクリーンにクイズなどが映し出され,待ちくたびれることはなかった(クイズの内容は下記を参照)。

Visual Studioにチーム開発機能を追加
 さて,開演時刻の9時。Steve Ballmer氏の名前がコールされると,会場から一斉に拍手が沸きあがり,Steve Ballmer氏が登壇した。最初に,現在Microsoftが掲げている「Do More With Less」をテーマに,重要なのはTCO(総所有コスト)であり,生産性であることを強調した。同氏は,「現在,それを脅かすのがセキュリティだ。セキュリティはTCOの増大原因になっており,生産性を下げる。Microsoftが今最も優先度を高くしているのがセキュリティ対策である。なぜなら,これらの問題を解決することが,ユーザーの生産性を高め,TCO削減につながるからだ」とした。

 新しい製品の発表もあった。2005年に出荷予定の開発ツール次期版「Visual Studio 2005」(開発コード名Whidbey)にチーム開発のための機能を実装することが,この場で発表された。Windowsサーバー製品やOffice製品と同様,開発ツールのシステムを「Visual Studio 2005 Team System」と呼び,ソフトウエア開発に携わるすべてのユーザーを対象とした機能を提供する。

 現在のVisual Studio .NETが備えているコーディングやデバッグの機能に加えて,次のような機能がVisual Studioに実装される。アーキテクトに向けたアプリケーション全体を視覚的に設計するツール。開発者(プログラマ)向けのプロファイリング/カバレッジ・ツール。テスターを対象とした単体テスト,手動テスト,パフォーマンス検証のための負荷テストなどの機能。そしてアプリケーション全体を統括するマネージャのためのプロジェクト管理ツールである。これらの機能が1つの統合開発環境内で利用できる。さらにソース・コード管理機能も備える予定だ。

 なお会場内のエキジビション・ホールでは,Visual Studio 2005の新しいCommunity Technology Preview版(2004年5月版)が配られている。このバージョンもまだベータ以前ではあるものの,テストなど新しい機能の一部が実装されている。MSDN会員にも,まもなくMSDN会員向けWebサイト「MSDNサブスクライバ・ダウンロード」から入手できるようになるはずだ。

XML Webサービスをより安全に
 現在のVisual Studio .NET 2003と.NET Framework 1.1で,よりセキュリティを強化したXML Webサービスを利用するアプリケーションを開発するために「Web Services Enhancements 2.0」も発表された。Visual Studio .NETのアド・インとして提供される。まもなく,MicrosoftのWebサイトからダウンロードできるようになるはずだ。加えて,これをBizTalk Serverで利用するための「BizTalk Server Adapter for Web Services Enhancements 2.0」のテクノロジ・プレビュー版も提供される。

 Ballmer氏は基調講演の中で,UNIXなどのシステムとの相互接続性を強調した。相互接続性のための旧来の手法は,個別のシステムに合わせて,それらを接続するプログラムを書くことだった。だが現在は,それがXML Webサービスに取って代わられようとしている。Web Services Enhancements 2.0によって,より安全に相互接続できるようになる。

 さらに,Office 2003をスマート・クライアントとして使うための拡張キット「Office Information Bridge Framework(IBF)」のテクニカル・ベータも発表した。IBFもVisual Studio .NETのアド・インとして提供される。これによって,ゼロからアプリケーションを開発せずに,既にあるOfficeをXML Webサービスのフロント・エンドとして使うことができるようになる。

 なお,このイベントに参加して感心させられたのは,障害者向けの配慮がなされていることだ。最前列中央部分は障害者向けに確保されており,その目前には小さな30~40インチ程度と思われるディスプレイと椅子が置かれている。このディスプレイには,講演の映像と同時に字幕が表示されるのである。そしてそのディスプレイの隣の席は,手話の通訳のためのものだ。びっくりしたのは,耳が不自由な参加者に付きっきりで,その後の各セッションでも手話通訳をしていたことだ。

基調講演前に出されていたクイズ
 最後に,基調講演が始まる前に出されていたクイズの一部を紹介しよう。皆さんはどれくらい答えらるだろうか。

(1)飛行機のブラック・ボックス(データ・レコーダ)は,実際には何色?
(A)オレンジ
(B)薄い青
(C)黒

(2)本当かうそか――1984年,インターネット上のホストの数は5000だった。

(3)UNIXサーバーがクラッシュしたときに表示されるメッセージは次のうちどれか
(A)Kernel Panic
(B)Kernel Failure
(C)General Kernel Fault
(D)General Kernel Protection Fault

(4)Apple Computerが発売した最初のPC向けハードディスクについて正しいのは?
(A)1981年に発売された
(B)容量は5Mバイトだった
(C)価格は3500ドルだった
(D)上記のすべてが正しい

(5)どちらの発売が早かったか?
(A)HP DeskJet(インクジェット・プリンタ)
(B)Microsoft Office 1.0

(6)最初のコンピュータ・ウイルス「Brain」がPCに感染したのは?
(A)1979年
(B)1983年
(C)1986年

(7)1983年に発売されたApple ComputerのLisaの小売価格はいくらだったか?
(A)1万ドル
(B)1万2500ドル
(C)1万5000ドル

(8)どちらの発売が早かったか?
(A)Intel Pentium II
(B)Nintendo 64

(9)Compaq Computerが発売した最初の「持ち運び可能」PCの重さは?
(A)18ポンド(8.2kg)
(B)22ポンド(10.0kg)
(C)28ポンド(12.7kg)

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(山口 哲弘=日経Windowsプロ