米Microsoftの知的財産担当コーポレート・バイス・プレジデントであるMarshall Phelps氏は5月21日,東京都内で記者会見を開き,同社の知的財産戦略に関して説明した。同社は2003年12月以来,知的財産を積極的に他社にライセンスする方針を打ち出しており,既にファイル・システムのFATや,ディスプレイに文字をきれいに表示するClearType技術,Office 2003のXMLスキーマなどを有償または無償で提供し始めている。今回の会見でPhelps氏は,同社が今後もライセンス・プログラムの数を増やすとともに,日本企業を含む競合他社とのクロス・ライセンス契約を増やしていくと述べた。

 Phelps氏はかつて米IBMの知的財産/ライセンス部門担当バイス・プレジデントだった人物で,1980年代にIBMと富士通が争ったコンピュータの基本特許に関する紛争も担当したという。Microsoftには2003年6月に入社し,Microsoftが保有する3500件を超える米国特許や,6500件の出願中の特許,これらに関する国外特許,その他1万1000件以上の登録商標などの知的財産に関するポートフォリオの管理を担当している。

 従来Microsoftは,パソコン・メーカー(WindowsのOEM供給を受けるメーカー)と「NAP(Non-Assertion of Patents,特許権非主張条項)」と呼ばれる条項を含むライセンス契約を結ぶことがあった。NAPには「各メーカーはWindowsが自社の特許を侵害していることを理由にマイクロソフトと訴訟しない」という内容を含むなど,ライセンスのポリシーに関しては批判も多かった。Phelps氏によれば「Microsoftが結ぶクロス・ライセンスの契約数は,業界の標準契約数を下回っていた」という。しかし,現在のMicrosoftは「クロス・ライセンス契約を重視し,パートナと新しい協業モデルを構築することで,Win-Winの関係を目指している」(Phelps氏)という。

 既に米Cisco SystemsやIBM,米Hewlett-Packard,米Silicon Graphics(SGI),米Xerox,独SAP,独Siemensといった企業とクロス・ライセンス契約を結んでいるほか,NAPを含むライセンス契約を結んでいた多くの日本メーカーとも,クロス・ライセンス契約を交渉中であるとしている。また,他社に対してライセンスを提供するライセンス・プログラムの数も増やす方針だ。FATやClearType以外にも「今後2カ月で,4~5件の発表があるだろう」(Phelps氏)と述べた。

(中田 敦=日経Windowsプロ